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平和を思い、霞ヶ浦南岸サイクリング 美浦村、阿見町、土浦市 

場所
> 美浦村、阿見町、土浦市 
平和を思い、霞ヶ浦南岸サイクリング 美浦村、阿見町、土浦市 

1938年に発足された鹿島海軍航空隊の本庁舎跡

 

美浦村の鹿島海軍航空隊跡を訪ねて

茨城県の南東部に位置する霞ヶ浦は、西浦、北浦、鰐川、常陸利根川で構成された湖。日本の湖沼では琵琶湖に次ぐ第2の面積を誇る。湖面に浮かぶ船や水辺のヨシ、優雅に泳ぐ水鳥など、風光明媚な水郷景観が広がり、詩歌や小説、絵画などで描かれてきた。

霞ヶ浦南岸エリアには大正時代に東洋一の飛行場地といわれた、霞ヶ浦海軍航空隊が設置されていたことから、戦争の足跡を物語る希少な施設が点在する。霞ヶ浦西浦の南岸に位置する美浦(みほ)村には、若きパイロットが水上飛行機を訓練するために発足された鹿島海軍航空隊があった。終戦後は旧制東京医科歯科大学予科や、東京医科歯科大学霞ヶ浦分院として使われたが、1997年の閉院後は長らく放置されてきたという。そのため建物は老朽化が進み、戦争史跡の存続が危ぶまれたことから同県笠間市にある「プロジェクト茨城」が指定管理者となり、クラウドファンディングによって整備してきた。ようやく受け入れ態勢が整い、2023年7月から「鹿島海軍航空隊跡(大山湖畔公園)」として一般公開している。

園内には水上飛行機を運んだ自動車庫や、司令室が残る本庁舎の建物、士官が暮らした宿舎の基礎、汽缶場(ボイラー室)などが残り、当時の面影をたどることができる。10時と14時に園内のガイドツアーを開催している(参加自由)。手つかずのまま残された戦争史跡群は全国でも珍しく、数多くの映画のドラマのロケ地としても使用され、2022年公開の映画『ラーゲリより愛をこめて』や、最近では『ゴジラ-1.0』の撮影が行われている。

鹿島海軍航空隊跡に残る汽缶場の跡。煙突が印象的だ

「プロジェクト茨城」の金澤大介代表は、「現代の若者にとって戦争は仮想的で、現実感を伴って伝えるのは難しい。ですが、ここには宿舎跡や当時使用された本庁舎などが残っています。軍人が実際にいた形跡などから戦争をより身近に感じてもらい、平和学習の場になればと思います。地域とともに史跡を保存し、継承していきたい。今後は、教育旅行の誘致にも注力したい」と話す。

昭和の少年たちの姿を通して、平和を考える

美浦村に隣接する阿見町には、予科練平和記念館がある。海軍は第1次世界大戦後、航空機の発展と拡充を図るため、陸上機と水上機の両方の訓練をする場所として阿見町(当時は村)を選定し1922年、阿見原に「霞ヶ浦海軍航空隊」、霞ヶ浦湖畔には「霞ヶ浦海軍航空隊水上班」を開設した。若者を熟練した航空機搭乗員に養成するため、「海軍飛行予科練習生」制度を設け、横須賀に14歳半から17歳までの少年を試験で選抜した「横須賀海軍航空隊予科練習部」を設置。その後、予科練習生の増員により霞ヶ浦海軍航空隊に移転して、「霞ケ浦海軍航空隊飛行予科練習部」がつくられた。

記念館は予科練を歌った軍歌『若鷲の歌』の歌詞に出てくる“7つボタン”に掛けて、「入隊」「訓練」「心情」「飛翔」「交流」「窮迫」「特攻」をテーマにした7つの展示室がある。エントランスには搭乗員に憧れて入隊した予科練習生の姿が巨大写真パネルで掲出される。そこから各展示室をまわるうちに、太平洋戦争の当時の様子や、不利な戦況から特攻作戦に従事することとなる少年たちの想いが様々な形で展示され、胸が締め付けられる。

予科練平和記念館に展示される写真パネル。写真家・土門拳が練習生に密着取材して撮影したという秘話も

霞ヶ浦湖畔の海軍関係者たちが足しげく通ったのが土浦市にある料亭「霞月楼」だ。1889年創業。客室は坪庭を見渡す全8室の個室で、元帥海軍大将・東郷平八郎の書や日本画家・伊東深水の
絵画などが掛けられている部屋も。霞ヶ浦をはじめ地元の食材を使った会席料理は、四季折々に彩られ和食の粋を感じることができる。館内の資料コーナーでは、海軍臨時航空術講習部の教官を務めた英海軍のセンピル大佐夫妻をはじめ、二代目の店主夫妻と懇意にしていた元帥海軍大将の山本五十六の手紙、米国の飛行家・リンドバーグ夫妻などの写真を展示、自由に閲覧できる。

四季折々の旬の味覚を使った霞月楼の料理。写真は昼の会席メニュー「冬彩月」
霞月楼の資料コーナー。歴史と格式を誇る料亭には著名人も数多く訪れた

鹿島海軍航空隊跡、予科練平和記念館、霞月楼の3施設を巡るサイクリングルート

霞ヶ浦湖畔は国土交通省によるナショナルサイクルルート「つくば霞ヶ浦りんりんロード」に指定されている。旧筑波鉄道の廃線敷と霞ヶ浦を周回する湖岸道路を合わせ、全長約180キロ。水郷地域や筑波山地域など豊かな自然や風景、旧跡や歴史遺産も点在し、魅力あふれるルートだ。

筑波山を眺めながら湖岸道路を爽快にサイクリング!
自転車を降りて、湖畔沿い霞ヶ浦総合公園の風車の前でちょっと一息

今回、同ルート上の土浦市、阿見町、美浦村が連携し、鹿島海軍航空隊跡、予科練平和記念館、霞月楼の3施設を巡るコースを選定した。片道20キロ強の道のり。起伏が少ない湖岸道路を心地よく走行できるので、サイクリング初心者にもおすすめだ。雄大な筑波山と豊かに水をたたえる霞ヶ浦の絶景を楽しみながら走ろう自転車は土浦駅に直結したサイクリング拠点施設「りんりんスクエア土浦」でレンタル(事前にウェブで要予約)ができ、本格的なクロスバイクから、電動アシスト付き自転車も用意。また地下にはシャワールームやコインロッカーが併設され、手ぶらでサイクリングできる。景勝を巡り、戦争の歴史や平和について学ぶ霞ヶ浦南岸の旅へ出かけてみたい。

こちらもおすすめ!立ち寄りグルメ

自家製ダレでじっくり焼き上げたとみた家の「うな重バーガー」

ワンコインで味わえる「うな重バーガー」  
美浦村の住宅街にあるとみた家は、創業46年のつくだ煮店。ワカサギやシラウオなど霞ヶ浦の恵みを、家伝の味で丁寧に炊き上げたつくだ煮が好評。だが、なんといっても大人気なのがウナギのかば焼きをライスバーガーで挟んだ「うな重バーガー」480円だ。上品な味わいのかば焼きが、もっちりとした米の食感と相性抜群。


【施設データ】

鹿島海軍航空隊跡(大山湖畔公園)
茨城県美浦村大山2014-8
9時~15時(受付)/土・日曜のみ公開/800円/TEL:029-875-7221
常磐道桜土浦ICから24キロ

予科練平和記念館
茨城県阿見町廻戸5-1
9時~17時(最終入館16時30分)/月曜休(祝日の場合、翌日休※2023年12月20日~22日は臨時休)、12月29日~1月3日休/500円/TEL:029-891-3344
常磐線土浦駅からバス15分、阿見坂下下車徒歩3分。常磐道桜土浦ICから7キロ

霞月楼
茨城県土浦市中央1-5-7
11時~14時、17時~21時/火曜休/TEL:029-822-2516
常磐線土浦駅から徒歩10分。常磐道桜土浦ICから6キロ

りんりんスクエア土浦
茨城土浦市有明町1-30
常磐線土浦駅直結。常磐道桜土浦ICから国道354号経由7キロ/TEL:029・835・3000(アトレ※自転車については「ル・サイク土浦」TEL:029-846-3192へ)/受付10時~18時/無休(臨時休業あり)

とみた家
茨城県美浦村馬掛496
常磐道桜土浦ICから国道125号、県道120号経由21キロ/8時~17時30分/第2・4日曜休/TEL:029-886-0220


(Web掲載:2023年12月12日)

(記事更新:2024年1月17日


Writer

旅行読売出版社 メディアプロモーション部 さん

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