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旅よみ 俳壇 旅行読売2024年7月号

場所
旅よみ 俳壇 旅行読売2024年7月号

JR福井駅前に出現した3体の恐竜モニュメント(写真/宮川透)

【特選】

恐竜の街の恐竜風光る
 ◉東京都新島村 曽根新五郎
<評>多くの恐竜化石が発掘された福井県勝山市。福井駅前にも多くの恐竜のオブジェが立ち、その逞(たくま)しさにあやかって、能登半島地震からの復興を強く望む作者の思いが「風光る」である。

【入賞】

レインボーブリッジ仰ぐ涼み舟
 ◉世田谷区 倉持温子
<評>「涼み舟」とはいえ、実際はカッコイイ東京湾クルージング。レインボー(虹)という字を見ただけで涼しくなるから不思議。

担ぎ手の烏帽子(えぼし)傾(かし)ぐや帆手(ほて)祭
 ◉仙台市 平山北舟
<評>帆手祭は毎年3月10日に宮城県鹽竈(しおがま)神社で行われる神事。中でも荒神輿(あらみこし)が有名。神聖なる烏帽子でさえ傾ぐという熱気が目に浮かぶ。

泥雪を付けて散らして路線バス
 ◉埼玉県吉見町 青木雄二
<評>街に珍しく積もった雪。往来の激しさから、すぐに泥の雪と化す。付けて散らしてゆく路線バスに、この街に住む人の忙しさも重なる。

Tシャツはティラノサウルス蝶(ちょう)を追ふ
 ◉杉並区 森 秀子
<評>小学生ぐらいの子どもか、大好きな恐竜がプリントしてあるTシャツを着て小さな蝶を追う。その対比が面白く、巧みである。

【入選】

馬追の荒しき声や斑雪(はだれ)散る
 ◉新宿区 居林まさを
貝合せも軸も源氏絵春日差(はるひざし)
 ◉伊賀市 箱林允子
天女舞ふ敦煌(とんこう)空港空高し
 ◉所沢市 木下富美子
断崖の夕日に染むる涅槃(ねはん)像
 ◉ひたちなか市 川上修一
南風(はえ)吹くや丸太造りの小学校
 ◉神奈川県中井町 笹尾雅美
北窓を開けて旅行誌ひらきをり
 ◉さいたま市 竹内白熊
あづまなる防人(さきもり)歌碑や梅真白
 ◉横浜市 茅房克一
円窓の雪の景色や写経部屋
 ◉佐倉市 廣康よしあき
雪柳なだれる飛鳥の宮の跡
 ◉市川市 井田千明
天女かなバス待つ人の春ショール
 ◉仙台市 星 良子

【佳作】

春の陽のまなざし眩(まぶ)し道祖神
 ◉岡崎市 鈴木欣子
新緑や芦毛が走る競馬場
 ◉つくば市 有阪貴男
鷹鳩(たかはと)と化して宇治橋渡りけり
 ◉中央区 豊澤佳弘
水牛の足を濡して春の潮
 ◉横浜市 相沢恵美子
故郷の桜を想(おも)う上野駅
 ◉大田区 豊島仁
小さき歩の友と歩合わせ花遍路
 ◉足立区 太田君江
裏から見る葉脈が好き柿若葉
 ◉神奈川県中井町 竹和世
夏の海あと1キロとナビの声
 ◉鈴鹿市 松井政典
春潮や弘法の水湧く港
 ◉伊予市 福井恒博
奥秩父縁側に干す餅霰
 ◉久喜市 梅田ひろし


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<選者>「墨BOKU」代表 津髙里永子(つたか りえこ)
兵庫県出身。「小熊座」同人。よみうりカルチャー講師。句集に『地球の日』『寸法直し』、著書に『俳句の気持』など。

津髙里永子先生の総評
いつか行ってみたいなと思わせる旅の句が多くて楽しいひとときを味わえました。どれも魅力的だったのですが、季語が入っていない句もありました。季節とその関わりとを感じながら詠むのが俳句なので、季語が入っていないと採り上げにくいということをご理解くださいね。それから、今、旅に出られない人でも、以前に行かれたことを句にしてかまいません。過去形でなく、現在形でそのときの自分に戻って作ってみてください。

津髙里永子先生のワンポイント俳句講座
「俳句の魅力とは」
私は初心のときから今でも、こんな句を作ってわかってもらえるのだろうかと悩み、自分の思いが素直に伝わらなくて、いつも恥ずかしい思いをしてきました。ある日、俳句などよりずっと悔しく悲しいことが実生活であって打ちのめされていたとき、俳句の先輩が「俳句でカタキを打てばいいよ」と助言してくれました。その夜、身のまわりのものから無理やり、俳句の五七五にしていきました。いつもは出来ない、出来ないと悩んでいた私ですが、集中しているうちに句も出来てきて心もすっきりしてきました。私の場合、悔しさや情けなさ等々、とにかく、心が動かなくては句にならないということがわかり、それ以来、俳句の魅力に取りつかれています。


【応募方法】
旅で詠んだ俳句、風景や名所を詠んだ俳句をお送りください。特選句には選者の直筆色紙と図書カード、入賞句には図書カードを進呈します。応募には「月刊旅行読売」に添付の「投句券」が必要です。「月刊旅行読売」は全国の書店またはこちらの当社直販サイトで送料無料でお求めいただけます。

(出典:旅行読売2024年7月号)
(Web掲載:2024年5月28日)

※連載「旅よみ俳壇」トップページはこちら

Writer

たびよみ編集部 さん

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