【中井精也の ゆる鉄写真館】えちぜん鉄道
えちぜん鉄道を優しく包む白い虹
列車が来るまであと数分だというのに、
あたり一面、濃い霧の中。
あきらめかけていたとき、
頬を撫(な)でるようなひんやりした風が吹き、
突然頭上に青空が開けました。
そしてえちぜん鉄道の列車が現れると、
濃い霧のヴェールの奥から顔を出した太陽が、
霧のスクリーンに白い虹を描きました。
「白虹(はっこう)」もしくは「霧虹(きりにじ)」と呼ばれるこの現象は、
凶兆を表すと言われることもありますが、
僕にとってはまさに吉兆!
神々しい白い架け橋が、
素敵な瞬間を届けてくれたようで、
お気に入りの作品になりました。
文・写真/中井精也
1967年、東京生まれ。鉄道写真家。独自の視点で鉄道を撮影し、『ゆる鉄』など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。甘党。著書・写真集に「1日1鉄!」(インプレス)など。2015年講談社出版文化賞・写真賞受賞。
(出典:「旅行読売」2023年10月号)
(Web掲載:2024年5月6日)