ベルギーと日本の絆が生んだ銘酒
「北光正宗大吟醸“マグノリア”リミテッドエディション」
雪国の酒蔵が新しい酒を
長野県飯山市にある酒蔵「角口酒造店」では、このほど新しい日本酒「北光正宗大吟醸“マグノリア”リミテッドエディション」を発売した。
同酒蔵は1869(明治2)年創業で、新潟県との境、冬になると積雪3㍍を超える豪雪地にある。日本有数のブナ林が広がる鍋倉山より湧く雪解け水を生かし、地元産の酒造好適米「金紋錦」「美山錦」「ひとごこち」などを使った酒造りにこだわっている。代表銘柄は「北光正宗」で、これに新しく加わったのが今回の「北光正宗大吟醸“マグノリア”リミテッドエディション」だ。
ベルギーの画家からラブコール
この酒の一番の注目は、ラベルの絵柄をベルギーの画家、ミヒャエル・ボレマンス氏が描いたこと。同氏はベラスケスやマネなどが描く西洋絵画の伝統的技法やテーマに関心を寄せながら、不穏さや危うさなどを画題に表現する独特の世界観を持っている。これまで日本では、原美術館やギャラリー小柳、横浜トリエンナーレ、金沢21世紀美術館などで作品を出展し評されている。
今回、日本の酒蔵とベルギーの画家との出合いは、ボレマンス氏から声をかけたのが始まり。以前、同氏は日本を訪れた際に日本酒のおいしさに魅せられ、日本酒のとりこになった。数ある日本酒の中でも、角口酒造店の銘酒「北光正宗」の大吟醸が特に好きだった。
二人の思いが一致した逸品
2023年5月と6月、長野県観光機構が長野県の日本酒の魅力を紹介するイベント「NAGANO SAKE RORD SHOW」をベルギーで開催。その直前にボレマンス氏から「北光正宗を造った人が来るなら、ぜひ会いたい」とアプロ―チ。杜氏の村松裕也氏はイベントへ参加予定であり、会うことを快諾したことから二人の関係が始まった。
村松氏は1984(昭和59)年生まれで、2009年に25歳で杜氏の道へ。当時、長野県で最年少の杜氏であった。2014年には日本酒造杜氏組合連合会認定「日本酒造杜氏」を取得したのも、当時は日本最年少であった。
そんな村松氏の酒造りへの思いやこだわりに、二人はすぐに意気投合。ボレマンス氏が「このうまい大吟醸のラベルに、ぜひ自分の絵を提供したい」と申し出があった。そうした経緯を経て誕生したのが、「北光正宗大吟醸“マグノリア”リミテッドエディション」である。国も世代も超え、言葉も通じない二人が心を通わせた絆から生まれた逸品だ。
ラベルに描かれているのは「マグノリア」の木。和名「モクレン」で、4・5月に花を咲かせる。白、赤、ピンク、黄色など品種は数多く、それらを総称したのがマグノリアだ。ボレマンス氏の邸宅の庭には大きなマグノリアが花開き、おそらくこの木をモデルにしてラベルを描いたであろうと想像される。
1000本限定で販売
「北光正宗大吟醸“マグノリア”リミテッドエディション」は2024年11月1日から販売が始まる。1.8ℓ(2万7500円)、720㎖(1万3200円)をあわせて、世界1000本限定だ。日本での店頭販売は、角口酒造店のほか、銀座にある長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」の2か所のみの予定。銀座NAGANOは10月26日にリニューアルオープンすることでも話題だ。
ラベルはもちろん、酒の質へのこだわりも高い。県内木島平村産の酒造好適米「金紋錦」を、精米歩合39%まで磨き上げたている。長期低温発酵による温度管理も徹底している。秋の夜長を楽しみながら、二人の思いから生まれた銘酒をゆったりした気分で味わってみたいものだ。
<問い合わせ>
長野県観光機構:TEL026-219-5276
(WEB掲載:2024年10月16日)