【私の初めてのひとり旅】宮尾俊太郎さん カンヌ、マドリード、北海道(2)

納沙布岬で記念撮影
みやお・しゅんたろう[バレエダンサー]
1984年北海道根室市生まれ。2004年にKバレエカンパニー入団。15年にはプリンシパル(最高位ダンサー)となり、20年よりゲスト・アーティスト。現在はダンサー・振付家、俳優としても活躍。NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」に田沼意次のおい、田沼意致(おきむね)役で出演中。今年はK-BALLET TOKYO(バレエ・トウキョウ)の9月初演新作「パリの炎」にて自身初の全幕演出・振り付けを担当する。
バイクで北海道ひとり旅生まれ育った大地を巡る
【私の初めてのひとり旅】宮尾俊太郎さん カンヌ、マドリード、北海道(1)から続く
数年前から金沢、長野、箱根など国内をひとり旅しています。23年7月まで1年間出演した「ハリー・ポッターと呪いの子」の舞台が終わった時は、一度リセットするためにも約2週間休みを取り、バイクで北海道をツーリングしました。
東京で暮らしていると、周りの環境や社会に影響され過ぎて、フラットな自分の感覚がどこにあるのか分からなくなることがあります。すでに両親は他界していましたが、自分が生まれ育った故郷を見に行こうと思ったんです。
茨城の大洗からフェリーに乗って苫小牧(とまこまい)に着き、そこから日本最北端の宗谷岬、最東端の納沙布岬(のさっぷみさき)を回って5日間で北海道を半周し、札幌に滞在する旅程でした。根室では子どもの頃に母と行った「ニューモンブラン」という喫茶店で、ご当地グルメの「エスカロップ」を食べようとしたら、店が定休日!ポークカツライスにドミグラスソースをかけたB級グルメですが、どうしても食べたくて、翌年改めて訪れました(笑)。
アイヌ文化に興味があったので、阿寒湖アイヌコタンに寄って、さらに平取(びらとり)町にある二風谷(にぶたに)コタンも訪れました。両親の墓参りで真駒内(まこまない)滝野霊園へも行きました。モアイ像が立ち並ぶユニークな墓地です。
愛車のBMW のM1000R。旭川のライダーズハウスで
根室も札幌も、当時暮らしていた家には他人が住んでいましたが、突然訪ねたのに自分のことを知ってくれていて、快く中を見せていただきました。幼少の頃の空気感に触れてリセットされたような感じがしました。
10代の頃にヨーロッパで生活したことで、型にはまらない考え方が身に付いたのはよかったです。日本を俯瞰(ふかん)で見ることができ、日本の良さを再認識しました。いつかまた北海道にも戻りたいと思っています。
話/宮尾俊太郎 聞き手/田辺英彦
(出典:「旅行読売」2025年4月号)
(Web掲載:2025年7月1日)