船で瀬戸内海の絶景めぐり(2)
船上で風を感じながら
大小さまざまな島々が点在する瀬戸内海。船上からしか眺められない絶景を求めて、船を乗り継いで島々を巡る旅へやって来た。
三原港を出航し、因島に立ち寄って観光とランチを終えて再び船で移動。土生港から高速船に乗るのだが、せっかくなら海風を感じたくて、屋外席のある船が1便おきに運航していることを調べておいた。
弓削(ゆげ)島、岩城島、伯方(はかた)島などに寄港しながら、大島の友浦港へ。赤穂根島や津波(つば)島の脇を通り、明神島や梶島の島影を遠望。形も大きさも異なる島々を見ているだけで大らかな気分になる。こちらが移動しているのに、島が動いているようにさえ思えてくる。
女性のような優美な橋をくぐると…
生名島と佐島に架かる橋長515㍍の生名橋をくぐる瞬間もすごかった。橋の下へ来た時に、急に船のエンジンと波しぶきの音が高まった気がした。海面までの桁下高が24・5㍍と、先ほどの生口橋より低いため反響音が大きかったのかもしれない。色白のコンクリートが打ちっぱなしで、歩道を含めて道幅は7・5㍍しかない。この橋に性別があるとすれば、女性であろうか。
そんなことを考えながらカメラのシャッターを切っていると、おばあちゃんが「あの鵜島の裏に村上海賊で有名な能島があるのよ。潮流が速く、天然の要塞として最適だったんだね」と教えてくれた。
夕焼けに浮かぶ“天空の橋”
友浦港からバスで向かった今治市村上水軍博物館から、その能島を正面に望めた。海賊と聞くと無法者のイメージが強いが、村上海賊は水先案内、警固、海上運輸などでも活躍。館内ではゆかりの品々を約200点展示している。
港へ戻り夕暮れの海を一路、今治港へ。最高24ノット(時速約45㌔)で高速船は快走する。逆光に浮かぶ島影を、三つのつり橋が結んでいた。総延長約4・1㌔の来島海峡大橋で、視線と同じ高さに横たわって見える。雲海のような朝霧に浮かぶ姿が〝天空の橋〟として話題になったが、残念ながら濃霧の時は船は欠航する。船上からの眺めは、夕暮れ時が一番美しいかもしれない。
文/松田秀雄
(出典 「旅行読売」2019年6月号)
(ウェブ掲載 2019年10月1日)