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和船におでんに八幡宮 やっぱり下町はいいね

場所
> 江東区 墨田区
和船におでんに八幡宮 やっぱり下町はいいね

路地に迷うことが楽しい深川

江戸の頃、武家屋敷や商家が集まる江戸城界隈に対して、一般庶民が暮らす地域は「下町」として親しまれてきた。テレビなどで時代劇を見ても、軒先で将棋を打っていたり、隣近所へ味噌やしょうゆを借りに行ったり。ほのぼのとした人と人とのコミュニケーションが、日常に見られるイメージが強い。

昭和になってもその雰囲気は変わらず、一歩そこへ入り込むと、不思議とほっとする。そんな温もりあふれる下町が好きである。

特に深川は大好きで、よく訪れる。路地に迷っても、大通りに出ればバス停を見つけやすい。迷うことを楽しむ自分がいて、それを良しとしてくれるのが深川である。

どこで長居するかも気分次第。富岡八幡宮は資料館が面白くて、1時間以上も居たことがある。江戸時代の錦絵や竹久夢二の木版画、戦前の深川八幡祭りの写真なども興味深い。


深川不動堂前に延びる人情深川ご利益通り

コーヒーの街として注目される倉庫群

境内を出て深川不動堂を過ぎると、辰巳新道という通りがある。50㍍ほどの路地に居酒屋やスナックが肩を寄せ合い、どこか昭和の面影を感じる。20代の頃に夜な夜な通ったことを思い出す。

高架をくぐり仙台堀川を渡ると清澄庭園が見えてくる。この辺りは近年、空き店舗や倉庫を利用した「コーヒーの街」として注目されている。天井の高い木材倉庫が多く、排煙ダクトが必要な焙煎機を置くカフェの経営に適していたようだ。

中でもhane-cafeはおすすめの一軒で、オーナーの守屋明さんは元ルフトハンザドイツ航空の客室乗務員だった。集めた航空グッズを飾る空間を作りたかったそうだ。

「万人に喜ばれるコーヒーを作るのは難しいです。飛行機に囲まれた空間で、のんびりコーヒーを飲んで旅の計画でも立ててもらえたらうれしい」と笑顔で話してくれた。


どこか郷愁を感じる辰巳新道
hane-cafeの店内には、守屋さんが幼少期から集めたエアラインのコレクションが展示されている

船頭気分で櫓を漕いで

hane-cafeの脇が深川資料館通りの入り口だ。ここから東西約800㍍に、佃煮、焼き鳥、ウナギなどの店々が並ぶ。おでん専門の美好で、アツアツのおでんを買って食べ歩くのもよし。カップ酒でも買って、焼き鳥専門の鳥満の前のテーブルで焼き鳥を肴に過ごすのもよし。つい時間が経つのを忘れてしまう。

後ろ髪をひかれる思いで商店街を抜け、道なりに向かった先は横十間川親水公園。ここでは、今では珍しい和船体験を楽しめる。

「水路が巡っていた頃の文化継承が目的。気軽に和船の魅力に触れてほしい」と話すのは、事務局の鈴木惣之助さん。自身も船頭を務め、計67人のボランティア会員が和船を操っている。乗船は約800㍍、20分で、希望すれば櫓漕ぎ体験もできる。見るのと操るのとは大違いで、つい櫓が気になるが、「船の先を見て、方向を確認しながら手をかえして」と鈴木さんから声がかかる。川面を渡る風や川辺の柳に情緒を感じる余裕はなかった。


深川資料館通り

銭湯で東京スカイツリーを眺めて

陸に上がり川沿いに歩くと、東京スカイツリーが姿を見せ始めた。猿江恩賜公園を抜けると錦糸町の繁華な雰囲気が色濃くなり、総武線の高架をくぐるとさらに東京スカイツリーが大きく映った。

散策の締めに、大黒湯でひと風呂。昭和を感じる富士山のペンキ絵が迎えてくれた。露天風呂もあり、メタケイ酸が豊富な天然温泉が注がれている。ウッドデッキから見上げる先に東京スカイツリー。裸のままで東京スカイツリーを眺められる場所なんて、そうそうないだろう。


文/松田秀雄             

広大な猿江恩賜公園から眺める東京スカイツリー

(出典 「旅行読売」2019年臨時増刊「昭和の東京さんぽ」)


(ウェブ掲載 20191023日)



Writer

松田秀雄 さん

全国を取材で巡ること約30年。得意なテーマは「温泉」で、北海道・稚内温泉から沖縄・西表島温泉まで500湯・2000軒以上は訪れている。特に泉質は硫黄泉が好きで、湯上りに体を拭かず自然乾燥させるのがモットー。帰宅後、体に付着した硫黄成分が湯船に染み出して白濁する様子を見るのが好き。最近は飲泉への興味が強く、「焼酎割に適した温泉は?」を掲げて最高の一杯を探し中。旅行読売出版社・編集部に所属。