客室露天風呂で雪の渓谷美を独占①
客室にある露天風呂から雪化粧した大川の渓谷を一望
モノクロ映画のような風趣
綿雪が落ち始めた。漆黒の渓谷にふわふわと舞い、湯煙が一緒にたわむれている。BGMは湯口からかけ流しに注がれる源泉の湯音と、姿の見えない大川の流れの音。モノクロ映画のワンシーンを見ているかのよう。源泉の温もりが湯の表面を伝わって、身を沈めたあごの辺りをチクチクとさす。少しかき混ぜて熱を散らすと、湯煙が一段とスクリーンをにぎわせ始めた。
ここは、客室にある露天風呂。全49室から渓谷を見渡せる和風旅館「丸峰別館 川音(かわね)」の一室である。湯船はヒノキ造りで、大人2人がのびのびと足を伸ばしてつかれる。
「例年3月上旬まで、静かな雪見の季節です。一面を白銀に染めてお客様を迎えます。その後はボタ雪となり、春が近いことを感じられます」と営業企画課の門脇誠さんが教えてくれた。
好きな時に好きなだけ
雪景色を楽しむ最高の場所は、客室の露天風呂だという。2018年7月にリニューアルオープンした24室に露天風呂があり、稼働率が8割を超える人気だ。和室、洋室、和洋室の3タイプある。
客室に露天風呂があると、何をするわけでもなし、ついつい湯を求めてしまう。館内にも大浴場や露天風呂はあるが、客室で満足。足腰の弱い高齢者であれば、なおさらであろう。露天風呂付き客室を増やしたのも、そんな高齢者への配慮もあるそうだ。
15時にチェックインして18時からの夕食まで、すでに客室の露天風呂へ3回も入った。刻々と闇が迫るにつれ、繊細な色調の変化を見せる夕暮れの空と峡谷は見飽きることがない。つかりっぱなしでは湯あたりするため、出たり入ったりを繰り返す。そんな気ままが許されるのも、客室に露天風呂があるからだ。
文/松田秀雄
<施設データ>
丸峰別館 川音
TEL0242-92-2121
https://www.marumine.co.jp/marumine/
(出典「旅行読売」2020年2月号)
(ウェブ掲載 2020年2月4日)