吉永小百合さんが歩いた大室古墳群
吉永小百合さんが出演したJR東日本「大人の休日倶楽部」のCMで話題になった前二子古墳の石室
CMで見た古墳を訪ねて
「ここは、どこだろう?」。テレビに、女優・吉永小百合さんが登場するCMが流れた。巨大な前方後円墳の空撮をはじめ、石室の中や埴輪が並ぶ古墳を歩く様子が映っていた。
後日、群馬県にある古墳であることを知った。古墳といえば近畿地方というイメージが強かったが、かつて群馬県には1万3000基以上の古墳があったという。まさに古墳大国だ。
そのCMに魅せられた。スケールを直に感じたくて、ひとり気分任せに、舞台となった古墳を日帰りで訪ねることにした。
美しい墳丘の姿にビックリ
吉永さんがCMで訪れた大室古墳群は、大室公園として整備されていた。両毛線前橋駅からバスで約50分にある。
「普段は、地元の人が犬と散歩するような静かな公園です。それが放送後の週末、約500台の駐車場が埋まるほどでした」と、前橋市文化財保護課の前原豊さんが教えてくれた。
園内には、前二子、中二子、後二子、小二子の4基を始め、10基の古墳が点在している。一番大きな中二子で墳丘長は110㍍。日本一大きな大阪の仁徳天皇陵古墳(大仙陵古墳、同486㍍)と比べると3割規模にも届かないが、フタコブラクダの背のようなラインは美しく、かわいらしく思える。
イメージより広い石室
4基とも前方後円墳で、前二子と後二子は石室の中を見学できる。吉永さんが入った横穴式の石室は、前二子古墳だ。
最奥まで13・8㍍と長く、172㌢の自分が普通に立てるほど中が広いことに驚いた。
「盗掘はなかったようで、出土した副葬品は市内の総社歴史資料館などに保管しています」と前原さん。室内の石材がベンガラで赤く塗られているのも印象的で、当時、赤色は“魔よけ”“再生”といった意味があったそうだ。
高さ14㍍の前二子の墳丘に上がると、赤城の山々を見渡せた。整備の際に新たに盛り土をしたわけではなく、6世紀初頭に造られた姿のまま。墳丘の周囲に巡る堀は古墳を造るために土を掘り出した跡で、きれいに原形を留めている220本の埴輪が再現して並ぶ中二子の中堤も見えた。吉永さんが埴輪を見ながら歩くシーンはこの堤だ。
出土した埴輪の一部は、園内にある大室はにわ館に展示している。古墳紹介ビデオが流れ、3Dメガネをかけて見るのだが、飛び出すような埴輪の映像は大人でも夢中で見入ってしまった。
文/松田秀雄
<施設データ>
大室公園
TEL027-280-6511(前橋市文化財保護課)
https://www.city.maebashi.gunma.jp/bunka_sports_kanko/kanko/3/13835.html
(出典 「旅行読売」2020年5月号)
(ウェブ掲載 2020年5月18日)