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【天下取りの城へ】豊臣軍の水攻めに耐えた 難攻不落の浮き城 忍城

場所
> 行田市
【天下取りの城へ】豊臣軍の水攻めに耐えた 難攻不落の浮き城 忍城

忍城(おしじょう)御三階櫓の内部は行田市郷土博物館展示室。最上階からは、遠く上州の山並みまで一望できる

水に浮かぶように佇む本丸「忍の浮き城」

豊臣軍の水攻めによる激しい戦いを描いた小説『のぼうの城』の映画化で、一躍全国的に名を知られるようになった忍城。利根川と荒川に挟まれた低湿地にあり、周囲の湖沼に蓄えられた豊富な水を防御に取り入れ、難攻不落を誇った。武州と上州の国境に位置し、幾度となく戦火に見舞われてきたこの城は、1590(天正18)年、最大の試練を迎える。

豊臣秀吉の関東平定に際し、総大将・石田三成率いる2万超の大軍が城を包囲した。小田原城の北条氏直を支援するため出陣した忍城主・成田氏長の城代を務めた成田泰季(やすすえ)をはじめ、わずか3000の兵と村人が籠城戦に臨んだ。

周囲に張り巡らされた小川や沼を生かした守りに加え、高い土塁も威力を発揮し、豊臣軍は攻めあぐねた。「水攻めを指示する秀吉の書状が残っています」と行田(ぎょうだ)市郷土博物館館長の鈴木紀三雄(きみお)さんは語る。秀吉の命を受けた三成は、長大な堤防を築き、城全体を水没させるという大胆な作戦に出た。ところが、もともと湿地の上に築かれた忍城はそう簡単には沈まない。水に浮かぶように佇(たたず)む本丸の姿が、「忍の浮き城」という異名を生んだ。

「秀吉が現地を見ずに作戦を立てたことが、うまくいかなかった理由でしょう」と鈴木さんは指摘する。攻防が続くなか、成田軍の城兵が夜陰に紛れて堤防を破壊すると、逆流した水が豊臣軍の陣を飲み込んで大きな損害を与えたとの説もある。そのまま小田原城が落ちるまで1か月にわたって持ちこたえ、関東で唯一陥落しなかった城として、忍城は歴史に名を刻むこととなった。

三成が築いた全長約28キロとも言われる「石田堤」は、一部が現存している。城を守った湖沼の面影を残す水城(すいじょう)公園を散策しながら南東へ約3キロ。さきたま古墳公園内にその遺構を見ることができる。堤のそばには、三成が本陣を置いた丸墓山(まるはかやま)古墳がそびえ、頂上からは忍城を正面に望める。三成がじりじりしながら戦況を見守ったのと同じ景色を、時を超えて追体験できる場所だ。

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かつて激しい攻防の舞台となった湖沼は、今は市民が憩う静かな公園に

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丸墓山古墳へ続く小高い道が「石田堤」の跡。奥に三成の本陣跡である古墳が見える。さきたま古墳公園は入園自由

現在の忍城御三階櫓は1988年に再建され、行田市郷土博物館の展示室として公開されている。市街地の中心に位置し、多くの歴史ファンや観光客が訪れる。豊臣の大軍に屈しなかった難攻不落の誇りは、今も静かにこの地に息づいている。

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行田の歴史を紹介する博物館の展示室。戦国武将が交わした貴重な書状も並ぶ

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「十万石の城下町にぜひお越しください」と話す館長の鈴木さん

ここにも立ち寄りたい


お休み処 かねつき堂

忍城のすぐ近くにあり、昼どきは地元客でにぎわう人気店。敷地内には忍城にかつてあった鐘楼が立つ。名物は行田を代表するB級グルメ「ゼリーフライ」(2個300円)。おからに刻んだ野菜を混ぜて揚げたもので、軽やかな味わいで何個でも食べられる。「子どもの頃から親しんだ思い出の味です」と店員の大澤加奈枝さん。
■11時~17時/月曜、第3火曜休/秩父鉄道行田市駅から徒歩15分/行田市本丸13-13/TEL:048-556-7811

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店の横に立つのが忍城の鐘楼を移築した建物。鐘は博物館に展示されている

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揚げたてのゼリーフライは、散策のおともにぴったり

🏯お城豆知識

「秀吉が攻めあぐね、家康が愛した城なんです」と行田市郷土博物館館長の鈴木さん。江戸幕府を開いた徳川家康はこの堅城を重んじ、四男の松平忠吉を城主に据え、自身も9度訪れている。「鷹狩りのため駿府から訪れて長逗留(とうりゅう)したようです」と鈴木さんが説明してくれた。

文・写真/阪口 克


<忍城> 続100名城

■御城印:あり(300円)
■入城:公園は入園無料(無休)、博物館は9時~16時/月曜(祝日の場合翌日)、第4金曜休、26年1月3日まで臨時休/200円
■交通:秩父鉄道行田市駅から徒歩15分
■住所:行田市本丸17-23
■問い合わせ:TEL048-554-5911(行田市郷土博物館)

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※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2026年2月号)
(Web掲載:2026年2月16日)


Writer

阪口 克 さん

奈良県出身。航空会社機内誌や、多くのアウトドア雑誌で取材と撮影を担当する。オーストラリア大陸1万2000キロを自転車で一周し、帰国後フリーランスに。自宅は家族・友人とDIYで建築。旅と自然の中の暮らしをテーマに活動。著書に「家をセルフでビルドしたい」(草思社文庫)「冒険食堂」(ヤマケイ新書)「焚き火のすべて」(草思社)など。

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