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【東北の春を見つけに】あの日から今へ時と向き合う旅 ホープツーリズム

場所
> 浪江町、双葉町
【東北の春を見つけに】あの日から今へ時と向き合う旅 ホープツーリズム

児童らが避難した大平山の高台には、慰霊碑が建てられ多くの人が訪れる

「福島のありのままの今」を見てもらうため旅

福島県は東日本大震災で地震と津波に加え、原子力災害とそれに伴う風評被害という複合災害を経験した。県は「福島のありのままの今」を見てもらうためのホープツーリズムを2016年から推進している。浪江町と双葉町のツアーに参加し、津波遺構や復興に向けた取り組みなどを見て回った。

最初に訪れたのは、福島第一原発の約7キロ北にある浪江町の請戸(うけど)小学校。津波に襲われながら、校内にいた児童と教職員全員が無事に避難した。「これは単なる奇跡ではありません」。ホープツーリズムの案内役を務めるフィールドパートナーの小泉良空(みく)さんはそう話す。地域住民からの呼びかけに加え、教職員が事前に避難経路を確認していたこともあり、地震発生から10分も経たないうちに避難を開始した。校舎内には止まったままの時計や崩れた天井などが残されている。

請戸小学校の児童と教員が避難したのが、約2キロ離れた大平山(おおひらやま)だ。付近の標高は10メートルちょっと。丘に立つと、学校から思いのほか遠いことと、想像以上に低いことに驚かされる。「実際に来てみないと分からないですよね。この丘の高さは命の境目だったんです」と小泉さん。大平山には震災で犠牲となった人々の慰霊碑も建てられている。

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津波の被害がそのまま残る請戸小学校の校舎を見学

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津波は校舎2階の床上まで達した。その水位を示す青い看板が掲げられている

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「地域の思いを知ってほしい」と案内してくれた小泉良空さん

双葉町にある東日本大震災・原子力災害伝承館は20年に開館。原発事故が発生した経緯や現在までの関係機関の対応が、資料・映像・証言を通して体系的に展示されている。「過去の出来事」として終わらせず、今なお続く課題として向き合うための場となっている。「災害が続く日本で、自分のこととして見てほしい」とスタッフの室井恒大(つねひろ)さんは語る。

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伝承館の館内には、震災当時の貴重な資料が多数展示されている

伝承館の近くには、23年に竣工した浅野撚糸(ねんし)双葉工場がある。高吸水タオル「エアーかおる」で知られるこのメーカーは、双葉町への進出を復興支援ではなく、未来への投資として位置付ける。最新設備を備えた工場は、双葉町が「被災地」から「ものづくりの現場」へと歩みを進めていることを象徴している。

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浅野撚糸双葉工場には、ショップやカフェも併設されている

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双葉町とコラボした浅野撚糸のタオル「ダキシメテフタバ」サイズ3種・2200円〜

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双葉駅の隣の大野駅前は復興へ向け整備が進む

ホープツーリズムは、複合災害の重みとともに、未来を創造し続ける人々の覚悟と希望を静かに語りかけてくれる旅だ。

ここにも立ち寄りたい

道の駅なみえ

復興のシンボルである道の駅は20年にオープン。請戸漁港の鮮魚や地酒など、浪江の魅力が凝縮されている。「なみえ焼そば」は町のソウルフード。極太麺に濃厚なソースが絡む力強い味わいは満足感も十分だ。「道の駅なみえ」のフードテラスほか町内各所で提供されている。
■10時〜18時、最終水曜休(大堀相馬焼コーナーは火・水曜休)/常磐線浪江駅から徒歩15分/浪江町幾世橋(きよはし)知命寺60/TEL:0240-23-7121

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多くの人でにぎわう「道の駅なみえ」は地域の交流拠点

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ボリュームたっぷりの「なみえ焼そば並盛」880円

文・写真/阪口 克


|ツアー情報|

ホープツーリズム

福島の「ありのままの今」を象徴する場所を巡り、復興に取り組む人々との対話から学ぶ旅。福島県浜通り地方(沿岸部)を中心に多彩なコースを設定し、旅行会社が企画している。
■TEL:024-525-4060(福島県観光物産交流協会)

👉福島県など東北旅行・ツアーはこちら

※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2026年3月号)
(Web掲載:2026年2月15日)


Writer

阪口 克 さん

奈良県出身。航空会社機内誌や、多くのアウトドア雑誌で取材と撮影を担当する。オーストラリア大陸1万2000キロを自転車で一周し、帰国後フリーランスに。自宅は家族・友人とDIYで建築。旅と自然の中の暮らしをテーマに活動。著書に「家をセルフでビルドしたい」(草思社文庫)「冒険食堂」(ヤマケイ新書)「焚き火のすべて」(草思社)など。

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