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涼風吹く釧路湿原を走る くしろ湿原ノロッコ号(1)

場所
> 釧路市
涼風吹く釧路湿原を走る くしろ湿原ノロッコ号(1)

小さな河川や池塘が無数にある釧路湿原の中をのんびり進むノロッコ号(写真提供/JR北海道)

ディーゼル機関車が引く4両のトロッコ列車

旅は車派。でも今回ばかりは、どうしても列車に揺られてみたかった。地図で見る釧路湿原はそこだけぽっかりと国道や道道がなく、代わりに一本の鉄路が釧路川に寄り添うように続いている。その一部区間では春から秋まで、くしろ湿原ノロッコ号という観光列車を運行する。ハンドルを握っていては見られない湿原の内側の世界を、この列車はきっと見せてくれるに違いないと思ったからだ。

釧路駅到着は発車30分前。ちょうど列車が入線するところだった。車内でくつろごうと早めに改札をくぐったが、これが大正解。写真を撮ったり車両を見て回ったり、逆に忙しいくらいだった。

終点の塘路(とうろ)駅へ向かう先頭はディーゼル機関車で、いかにもよく働きそうな剛健なたたずまい。その後ろに自由席の1号車、指定席の2〜4号車が連なる(※2020年夏の運行では指定席販売を見合わせ)。指定席車両は展望のいいトロッコタイプ。テーブルを挟んで3人掛けシートが向き合う席と、2人掛けのベンチシートがあり、どちらも木製で温かみがある。天井の傘付きライトもしゃれた雰囲気だ。

自由席は普通車両なので、観光気分を味わうなら指定席を取りたい。今年(※2019年掲載時)はこの観光列車が運行を開始してから30周年。ヘッドマークも特別仕様を掲げている。北海道の鉄道は利用者の減少から、廃線や廃駅の検討、決断が後を絶たない。しかし近年は地域の特色を打ち出したラッピングトレインや、新たな観光列車の運行が企画されていると聞きうれしい。

ノロッコ外観
釧路駅で発車を待つノロッコ号。ヘッドマークは昨年の30周年時の特別仕様
ノロッコ外観
開放型の車窓に現れた釧路川の対岸は動植物の特別保護地区。立ち入りできない場所の景色が見られる

観光アナウンスで釧路湿原の地形や歴史を知る

2号車の売店で車内限定グッズや予約していたランチボックスを買い求めてから座席に着くと、ピィーッという警笛とともに列車が動き出した。3人席の向かいに同席したのは、東京から来たご夫婦。私の後ろの席に座る女性とともに、ご近所さん同士3人での旅行だという。

「昨日は阿寒湖。明日は花咲線に乗って根室まで行くの。今日はノロッコ号に3回乗るのよ」

奥様によると、始発に乗って折り返し、途中下車して展望台に上った後、復路に再乗車するという。時刻表に合わせて計画するのは列車旅の醍醐味のひとつだ。

釧路川を渡り、市街地をのんびりと進んでいく。開放型の窓から入る風が気持ちいい。東釧路駅を過ぎてしばらくすると住宅が減り、一気に緑が濃くなった。左に特徴的な岩保木(いわぼっき)水門が見えてくる。

と、車内アナウンスがその歴史を教えてくれた。釧路川の洪水から街を守るため、河川改修が行われた際に造られた水門だという。要所でそんな案内が入り、景色のいい場所や野生動物が現れた時は走行速度を落としてくれる。やがて辺りはヨシやスゲ、ハンノキなどが生えた湿地になり、列車は自然のただ中をガタゴトと走る。

文/春日明子 写真/永井泰史

涼風吹く釧路湿原を走る くしろ湿原ノロッコ号(2)へ続く

(出典「旅行読売」2019年8月号)

(ウェブ掲載 2020年6月18日)

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ノロッコ車内2
車内の所々にある野生動物のボードは記念撮影にぴったり
ノロッコ売店
2号車の販売カウンターではマスキングテープやチョロQなど関連グッズを販売
ノロッコランチ
乗車3日前までの予約で車内で受け取れる「ランチBOX」(2020年は販売していない)

Writer

春日明子 さん

1979年生まれ、神奈川県出身。会社員時代に釣りに目覚め、いつの間にか釣り新聞の編集者となる。編集プロダクションにて旅行雑誌やコーヒー専門誌、機内誌を中心に編集・執筆活動を続けたのち、鮭釣りに訪れた北海道で人生の伴侶を釣り上げ、2016年に別海町へ移住。酪農地帯の真ん中で原稿を書く。

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