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能登の里山里海、癒やし旅(1)

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> 輪島市 珠洲市
能登の里山里海、癒やし旅(1)

斜面一面に広がる白米千枚田。今年は9月22日に稲刈りを終えた(写真/輪島市観光課)

何も変わっていない原風景

何も、変わっていない……真っ青な海と空、それに一面の棚田。水田一枚一枚は狭いものの、海岸まで50段以上に重なる様子は圧巻。訪れるのは十数年ぶりだが、一度見れば忘れられるものではない。懐かしさを覚え、変わらぬ景観に安堵の胸をなで下ろす自分がいた。輪島市街から車で15分ほどにある白米千枚田。市内に104か所ある棚田の中でも代表的な場所である。

訪れた8月下旬、早稲品種「能登ひかり」の収穫をしている田もあれば、まだ青々とした田もあった。等高線のように曲がりくねったあぜに沿って稲穂が続き、それが段々に計1004枚も並んでいる。

「約400枚はオーナー制度の会員のもので、その管理を愛耕会でしています。千枚田の景観は私が子どもの頃と変わっていません」と、愛耕会の一人、垣内文子さん。日焼けした笑顔は可愛らしく、21人もひ孫がいる元気なおばあちゃんだ。

「いつ見ても、いいね」と、作業の手を休め千枚田を眺める垣内文子さん
「いつ見ても、いいね」と、作業の手を休め千枚田を眺める垣内文子さん

2万5000個のLEDに彩られ

ただ、一年を通じて農作業は大変。日本古来の農法「苗代田」にこだわり、種籾から苗を育成して稲作を行っている田もある。1枚平均18平方㍍と狭小のため農耕機を使えず、すべて手作業だ。

稲束を干す稲架の準備をしていた個人農家の小本隆信さんは、「子どもの頃、雨の日の稲作の手伝いは嫌だったね。今思えば罰当たりで、雨は田んぼの神様からの贈り物です」と話す。稲は正直で、冬を越した土を掘り起こし細かく砕いたり、崩れたあぜを直して水漏れを防ぐなど、土台準備が大切とも教えてくれた。

そんな苦労が実り、白米千枚田の美しい景観を楽しみに年間60万人以上の観光客が訪れる。1周約750㍍の散策路が巡り、隣接する道の駅千枚田ポケットパークでは収穫したコシヒカリも販売。10月17日~2021年3月14日には、2万5000個のLEDで千枚田を彩るイベント「あぜのきらめき」も行われる。

イルミネーション「あぜのきらめき」の様子(写真/輪島市観光課)
イルミネーション「あぜのきらめき」の様子(写真/輪島市観光課)

伝統的な塩作りを継承

白米千枚田をはじめ、能登の風土や伝統は「能登の里山里海」として国連食糧農業機関「世界農業遺産」に認定されている。揚げ浜式製塩もその一つで、白米千枚田から車で約15分にある仁江海岸で今も受け継がれている。

国内で唯一、江戸時代からその技術を継承する角花家。4代目・菊太郎さんから、息子の豊さんと製塩会社「珠洲塩田村」の浜士・登谷良一さんの二人に受け継がれた。浜士とは揚げ浜式製塩の親方の呼び名で、奥能登塩田村では塩作りを見学でき、塩の資料館や塩関連の土産がそろっている道の駅すず塩田村も併設している。

道の駅すず塩田村では、揚げ浜式の塩を使ったソフトクリームがおすすめ
道の駅すず塩田村では、揚げ浜式の塩を使ったソフトクリームがおすすめ

能登のとと楽、加賀のかか楽

揚げ浜式製塩は、浜辺の塩田に海水をまき、太陽と風で自然乾燥させ、釜で長時間煮詰めて塩を作る技法。4月下旬~10月中旬の晴天時にのみ行われ、1回あたり海水約650㍑から約100㌔の塩がとれるという。

「潮くみ3年、潮まき10年と言われます。良質に仕上げるには、いかに均等に潮を塩田にまくかが肝心」と登谷さん。煮炊きは夜を徹して付きっきりのため、親の死に目に会えない職業と言われてきたそうだ。

それでも全盛の昭和33年頃は、一帯106軒で塩を作っていた。「能登の女性は働き者で、塩作りも女性が中心。『能登のとと楽、加賀のかか楽』という言葉があるほどです」と登谷さん。現在、二人の弟子がその伝統を継承すべく、昼夜を問わず苦労を共にしている。

登谷良一さんが「ザザッ、ザザッ」とリズムよく海水を砂にまく音に熟練の技を感じる
登谷良一さんが「ザザッ、ザザッ」とリズムよく海水を砂にまく音に熟練の技を感じる

<問い合わせ>

白米千枚田

TEL:0768-23-1146(輪島市観光課)

道の駅千枚田ポケットパーク 

TEL:0768-34-1004

奥能登塩田村

TEL:0768-87-2040

 

能登の里山里海、癒やし旅(2)へつづく

 

(出典「旅行読売」2020年11月号)

(ウェブ掲載2020年10月5日)

 

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Writer

松田秀雄 さん

全国を取材で巡ること約30年。得意なテーマは「温泉」で、北海道・稚内温泉から沖縄・西表島温泉まで500湯・2000軒以上は訪れている。特に泉質は硫黄泉が好きで、湯上りに体を拭かず自然乾燥させるのがモットー。帰宅後、体に付着した硫黄成分が湯船に染み出して白濁する様子を見るのが好き。最近は飲泉への興味が強く、「焼酎割に適した温泉は?」を掲げて最高の一杯を探し中。旅行読売出版社・編集部に所属。