【心の旅 寺社にふれる】 長命寺
1516年の戦火で伽藍の大半を焼失。本堂は1524年、三重塔は1597年の再建(重要文化財)
琵琶湖の畔から本堂まで、808の石段が続いている。現在は途中まで車道があるが、健康長寿のためと己に言い聞かせ、上りきった。
近江八幡市北部にある長命寺。その開創は謎に包まれている。300年以上生き、5代もの天皇に仕えたという伝説上の忠臣・武内宿禰(たけのうちのすくね)が、当地の柳の木に「寿命長遠諸願成就」と彫り、長寿を祈願した。時は下り、聖徳太子が宿禰が字を彫った木を見つけ、その柳で十一面観音を彫り安置。宿禰の長寿にあやかり、長命寺と名付けたとされる。
長命寺がある山は、かつて島だった。現在は西側だけが湖に面しているが、東側が干拓されるまでは、ぐるりと湖水に囲まれていた。当寺は西国三十三所観音霊場の31番札所。その昔、巡礼者は琵琶湖に浮かぶ30番札所の竹生島・宝厳寺から舟で長命寺に向かった。
本尊は千手観音、十一面観音、聖観音の三体。いずれも秘仏だ。安土城への水路の入り口でもあった長命寺。織田信長も舟に乗って参詣し、手を合わせたのだろうか。