東北デスティネーションキャンペーン
いわての旅 悠久の平泉
世界遺産の構成資産・中尊寺。覆堂に収められた金色堂は創建当時の姿のまま。8時30分~17時(11月4日〜2月末日は~16時30分)、無休/金色堂・讃衡蔵(さんこうぞう)・経蔵・旧覆堂拝観800円(境内は無料)/TEL:0191-46-2211/平泉駅から徒歩25分
世界遺産登録10周年を迎えた「平安の地」
平泉は「平泉 ― 仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」として、2011年6月に世界遺産に登録された。当時は東日本大震災からわずか3か月。まだ大きな爪痕が残る東北に、ひとつの希望をもたらした。そして今年はあれから10年の節目。
奥州藤原氏の初代清衡(きよひら)が造営した中尊寺は、小高い山の中にたたずむ。杉並木に抱かれた急な月見坂を上ると、道はやがて緩やかに尾根を伝うようになる。県道300号の坂下から本堂や金色堂のあたりまでは歩いて15分ほど。緑の森をゆっくり歩くうちに、自然と気持ちも穏やかになる。
覆堂(おおいどう)の中にある金色堂は、屋根から縁側まですべてが金箔に覆われている。螺鈿細工や漆の蒔絵などが施され、まさに堂全体が美術品というべき趣だ。
ここ平泉をひと言で表せば、世の平安を願う地。一 帯の大規模な造営を最初に手掛けた清衡は、11世紀後半の前九年・後三年の役と続く戦乱期を敗将の遺児として辛々生き延びた。だからこそ平和への切実な思いを抱き、中尊寺の堂塔を建立し、極楽浄土を具現化したかったのだろう。
本堂で僧侶の破石晋照(はせき しんしょう)さんが出迎えてくれた。昨今の不確かな時代に我々旅人がここを訪ねるとしたら、その意味とは何でしょう? そう尋ねると、 「境内の空気や風、そして空、森に包まれて、皆さんの悩みが少しでも和らげばと思います。その感覚は昔も今も同じで、かつてここを訪れた西行法師や源義経も同じ安らぎを感じたはずです」。
※編集部注(2021年6月10日現在)秘佛「一字金輪佛頂尊」の御開帳は、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当面、延期となります。
中尊寺では、東北DC特別企画として 、6月26日~11月7日、秘佛「一字金輪佛頂尊」を御開帳(500円 ※金色堂などの共通拝観券1200円)。 三代秀衡(ひでひら)の念持佛と伝わる平安時代作の秘佛「一字金輪佛頂尊」が5年ぶりに開帳される。穏やかで慈悲深い姿を拝みたい。
往時をしのぶ浄土庭園へ
浄土思想に基づく理想郷を創り上げようとしたした清衡の志は、後の世代に受け継がれてゆく。 二代基衡(もとひら)が着手し、三代秀衡が完成させた毛越寺(もうつうじ)も、見逃せない構成資産だ。清らかな水をたたえる大泉が池を望めば、彼らが願った浄土への思いがすっと心に染み入るよう。全盛期には40以上の堂塔と500を超える僧坊を擁したそうだが、その大半は遺構となって、今は静かに歴史を伝えている。
隣接する観自在王院跡、さらには秀衡が宇治平等院・鳳凰堂を模して建立し浄土庭園の最高傑作とも評される無量光院跡、金鶏山にも足を運んで、悠久の歴史に思いを馳せたい。
ちょっと立ち寄り 平泉の味どころ
芭蕉館
県道300号沿いにある老舗で、盛り出し式の平泉わんこそばが人気。風味豊かなそばがたくさんの椀に小分けされ、一口ずつ薬味を変えて味わえる。写真は天ぷらとミニデザートも付く「盛り出し式わんこそば(特)」2500円。10時~15時、無休(12~3月は木曜休 ※臨時休あり)/TEL: 0191-46-5155/平泉駅から徒歩3分
平泉までのアクセス
列車=東北新幹線一ノ関駅から東北線7分の平泉駅下車。車=東北道一関ICから8キロ
平泉とあわせて訪ねたい、岩手の世界遺産
橋野鉄鉱山【釜石市】
近代製鉄の父・大島高任の指導で建てられ、後に盛岡藩が経営した鉄鉱山。3基の高炉跡などがあり、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産として世界遺産に登録された。見学自由/TEL:0193-54-5250(橋野鉄鉱山インフォメーションセンター)/列車=三陸鉄道リアス線鵜住居駅からタクシー30分。車=三陸道釜石北ICから23キロ