東北デスティネーションキャンペーンいわて三陸の春を訪ねて
久慈駅から盛駅まで163キロをつなぐ三陸鉄道。変化に富んだ車窓風景が魅力。釡石駅~平田駅間にて
〜震災から10年を迎えた岩手県沿岸部の旅〜
豊かな海に抱かれ、食の魅力も多い岩手三陸エリア。東日本大震災復興10年の節目を迎えた地域を訪ね、現状と将来への展望を知り、地元の味に舌鼓を打つ。
前を向き街の魅力を作り出す
さまざまな出来事があっても季節は巡り、春は再びやってくる。津波で大きな被害を受けた岩手県沿岸部にも春が訪れ、旅に出掛けやすい季節になってきた。
三陸の入り組んだ海岸線は魚介の宝庫だ。背後の豊かな森がきれいな水と栄養をもたらし、美味しい魚介を育む。そうした海の幸がそれぞれの町に建てられた復興食堂街で味わえる。
「牡蠣ひとつ取っても、育つ湾が違うだけで味が変わるんです」。教えてくれたのは大槌駅前の「三陸屋台村おおつち○○横丁」内に「おかめ食堂」を構える小向祥子さん。おすすめは、大槌町で売り出し中の養殖サーモンを使った「おおちゃんサーモン丼」(以下写真)。身は鮮やかな橙色で脂がのり、ふわりと柔らかい。
隣の釜石市にある魚河岸テラスでは、港町ならではの三陸産の魚介を使った食事処が並ぶ。市内の酒蔵や茶舗などとコラボしたジェラートも誕生し、注目を集めている。
今でも更地が多いのは中小の入り江に共通するが、復興は一歩ずつ進んでいる。震災を後世に伝えていくための施設も整備されている。
陸前高田市の「いわてTSUNAMI(つなみ)メモリアル」は、被災した消防車の実物など、津波災害の事実と教訓を伝える多様な展示で構成されている。展示された発災後の年表は、敢えて5年目で終わりにしてある。「その後の町の復興していく姿は、訪れた皆さんが見て確かめてほしいと思います」と解説員の千田房代さんは語る。
釜石市の鵜住居駅前にある「うのすまい・トモス」も、震災の記憶や教訓を伝える施設だ。「いのちをつなぐ未来館」では過去の教訓を生かして高台に逃れた小・中学生の避難経路を詳しく展示している。
ヒト、コト、モノをつなぐ発酵パーク
「いわてTSUNAMIメモリアル」の近くの高台に誕生した発酵食品の店が連なる「CAMOCY(カモシ―)」は、陸前高田の現在の賑わいを伝える場所だ。
老舗醤油蔵・八木澤商店の社長、河野通洋さんが同志を募って建てたという。「CAMOCY」の名は、施設のある同市今泉地区が江戸期から醸造で栄えた地であり、酒や醤油を「醸す」に由来する。「発酵」をテーマに店舗が入り、もろみを使った和定食、パンやチョコレート、クラフトビールを味わえる。
エネルギッシュな河野さん曰く、ここではみんな仲がよく、地元の人も毎日来るし、ここに集まり打ち合わせをし「じゃあ、やってみよう!」でイベント企画が動くそうだ。
「見た目はまだまだ更地が多いけど、ここに来て地元の人とゆっくりと話せば、きっと印象が変わるはずですよ」
三陸屋台村おおつち○○横丁
大槌町本町1-13 /時間・休みは店舗により異なる(おかめ食堂はTEL:0193-27-5288、11時~14時、月曜休)
魚河岸テラス
釡石市魚河岸3-3 /TEL:0193-27-5566 /魚河岸ジェラート部は14時~16時、月曜休/入館無料
東日本大震災津波伝承館 いわてTSUNAMIメモリアル
陸前高田市気仙町字土手影180/TEL:0192-47-4455 /9時~17時(最終入館16時30分)、臨時休あり/無料
うのすまい・トモス
釡石市鵜住居町4-901-2/TEL:0193-27-5666/9時〜18時、水曜休/無料
陸前高田発酵パーク CAMOCY
陸前高田市気仙町字町15/TEL:080-2345-5162(発酵食堂やぎさわ)/時間は店舗により異なる。発酵食堂やぎさわは11時〜19時(18時30分LO)。全館火曜休
三陸(釜石市周辺)エリアへのアクセス
列車=東北新幹線盛岡駅から釡石駅までは、東北線・釡石線で約2時間30分
車=東北道花巻南ICから釡石道、国道283号経由約87キロ
岩手県の観光に関する問い合わせ
岩手県観光協会 TEL:019-651-0626
詳しくは「いわての旅」をご確認ください。
東北デスティネーションキャンペーン いわての伝統芸能&祭りに触れる の記事へ
(出典「旅行読売」2021年5月号)
(ウェブ掲載 2021年4月6日)