多島美が迎える三連吊橋で海上散歩
青い空と海に白い橋が映える、開放感あふれる来島海峡大橋の自転車歩行者道
展望館で学習してから出発
広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「しまなみ海道」は風光明媚なサイクリングロードとして人気だが、徒歩でも渡れる。約70㌔を踏破するのは大変だが、南端に架かる全長4105㍍の来島海峡大橋の往復なら、日帰り旅にぴったり。爽やかな潮風が迎える海の上を歩く旅を楽しむことにした。
起点は予讃線今治駅からバスで向かった糸山公園。展望台から来島海峡大橋を見下ろし、隣接する来島海峡展望館で架橋技術などについて学んでから歩き始めた。
島々が点在する絶景を一望
県道161号から自転車歩行者道に入ってループ橋を歩く。橋止浜港に並ぶ造船を眺めながら歩くと、三連吊橋の一つ目、来島海峡第三大橋へ接続する。中央を車道が走り、北側は自転車歩行者道、南側は125ccまでの二輪車道。白い主塔が連なる迫力と美しさは、橋の上を歩いてこそ。1999年に完成した世界初の三連吊橋の大きさを存分に実感した。
高さ約184㍍の一つ目の基柱を通り抜けると、橋の下一面が来島海峡。日本三大急潮の一つに数えられ、運良く白い波しぶきを上げて渦巻く様子を眺められた。
視線を遠くへ送ると多島美で名高く穏やかな瀬戸内海。最高所で海面から約65㍍もあり、島々の間を船が行き交う景観にも癒やされる。
さらに歩くと、主塔上部からアーチ状に下がるケーブルを間近で見られるようになり、その太さに驚く。これも橋を歩く旅ならではの醍醐(だいご)味。すれ違うサイクリストと「こんにちは」とあいさつを交わし合いながら、第二大橋、第一大橋を渡って、対岸の大島へ辿り着いた。橋の途中に2か所、休憩スペースがあり、ベンチに座ってひと休みしながら歩き、海景に癒やされたせいか、所要1時間30分があっという間に感じられた。
橋を眺めながらバーベキュー
橋の自転車歩行者道を下りて県道49号を歩くと、下田水魚港沿いに道の駅よしうみいきいき館があった。バーベキューが人気と聞き、ランチをとることに。1人150円を払って七輪を借りて、具材は施設内で自由に買うスタイル。
「いけすには、地元の漁師さんから仕入れた新鮮な魚貝20種以上を用意していますよ」と副支配人の矢野嘉久さん。カラフルなヒオウギ貝や車エビなどを選び、旬のタイの刺し身も注文し、橋を眺めながら味わった。
週末などには隣接する「来島きっちん」で、漁業組合婦人部による島じゃこ天の実演販売もあり、また急流体験を楽しむ観潮船に乗るのもおすすめだ。
小島に寄り道し渡船で帰る
帰路、第二大橋と第三大橋の間にある馬島へ寄り道。20分も歩けば島内を巡れる島で、橋上からアンカレイジと呼ばれる橋台に設置されたエレベーターで上陸した。
小さな馬島港沿いを歩いて南端の馬島神社に参拝し、ウズ鼻灯台を見てから海岸へ。こぢんまりとした砂浜と岩場は、観光客がいなかったのでプライベートビーチのよう。港から渡船に乗り、来島海峡大橋を仰ぎ見ながら、糸山公園の南西にある波止浜港へ戻ることにした。
露天風呂から瀬戸内海を一望
来島海峡大橋は7月まで朝霧の発生率が高く、その姿は“天空の橋”として人気。日の出前をピークに10時頃まで見られることが多いため、1泊して楽しむのもいい。おすすめの温泉宿「休暇村瀬戸内東予(とうよ)」は今治駅からバス30分ほどにあり、瀬戸内海を一望する露天風呂や新鮮な魚介料理でひとり旅を歓迎してくれる。
文/児島奈美 写真/宮川透
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