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世界遺産登録! 奄美大島の原生林散策とマングローブカヌーツアー

場所
> 奄美市
世界遺産登録! 奄美大島の原生林散策とマングローブカヌーツアー

希少な動植物の宝庫を認定ガイドと行く

日本政府がユネスコに推薦していた「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表(いりおもて)島」が、世界自然遺産として登録された。国際自然保護連合(IUCN)が勧告し、ユネスコの世界遺産委員会が2021年7月に正式決定した。


「東洋のガラパゴス」とも呼ばれ、希少な生物が多く生息する奄美大島(鹿児島県)。世界自然遺産の候補地となっている理由や魅力を体感すべく、手付かずの自然が残る金作原(きんさくばる)原生林を歩き、マングローブ原生林をカヌーで散策するツアーに参加した。

奄美は年間を通して日照時間が少ないが、この日は上々の天候。参加者を乗せたバンは集落やサトウキビ畑を通り抜け、砂利道をガタガタと山の中へ。途中、認定エコツアーガイドさんからビニールハウスで育つパッションフルーツや亜熱帯の鮮やかな花についての説明を聞いた。

金作原原生林は希少な動植物の宝庫。散策コースで見られる植物は約190種、原生林全体では約340種〜350種ほどあり、世界自然遺産の推薦地となっている。認定ガイドの同行が義務付けられていて、今回のツアーでは特別保護区の入り口から約800㍍先にあるポイントまでを約1時間半かけてのんびり散策した。

「いい匂いがする!」。マスク越しでも分かる、ブナ科の植物オキナワジイの独特な甘い香りに迎えられうっとりしていると、奄美の固有種で国の天然記念物のルリカケスが瑠璃(るり)色とオレンジ色の鮮やかな体でギャーッと鳴いた。ピークラララ……と美声を披露するのは絶滅危惧種のアカヒゲだ。

湧水が染み出た水辺にいたのは、腹部のオレンジ色が美しい準絶滅危惧種のアマミシリケンイモリ。皮膚に弱い毒があるとの解説が。奄美で毒と言えば、注意すべきは猛毒を持つハブ。茂みに近付かないようにと声かけがあった。

神聖な空気が漂うパワースポットのオキナワウラジロガシ

金作原原生林の見どころの一つが、ジュラ紀から存在するという巨大なシダ植物ヒカゲヘゴの群生地。表面にある鱗うろこのような模様が特徴的で、高さ7㍍~8㍍ほどのヘゴを見上げると、美しく並ぶ葉からこぼれる木漏れ日がいかにも南国の雰囲気だ。さらに進み41段の急な階段を下りると、推定樹齢約170年の「オキナワウラジロガシ」が現れた。根が地面から出て板状になった板ば ん根こ んがどっしりとしていて神秘的だ。
鳥の鳴き声や水の音、風に揺れる木々のざわめきや漂う花の香り。ダイナミックな自然の中で多様な生物が共存する姿を、五感で感じることができる。

島の食材を使った鶏飯は、お茶漬けのようにサラサラ食べられる

ランチは奄美の郷土料理「鶏飯(けいはん)」。ホカホカご飯の上に錦糸卵や鶏肉などの具材とパパイヤの漬物などの薬味を盛り付け、鶏の出汁(だし)がよく効いた黄金スープを注いで食べる。島の素材が調和した優しい味わいに、ほっと一息ついた。

マングローブのトンネルの中は、風や波もなくのんびりとカヌーを楽しめる

気分はインディ・ジョーンズ!

昼食後は住用(すみよ う)マングローブ林へ移動。約71㌶と日本で2番目に広いマングローブ原生林をカヌーに乗って進む。圧巻はマングローブ林の枝が左右から伸びてトンネル状になった水路。秘境をクルーズする高揚感は、まるで冒険映画シリーズ「インディ・ジョーンズ」の世界に入り込んだかのようだ。
そもそもマングローブとは、淡水と海水が混ざる汽水域に広がる生態系の総称。認定ガイドさんからは「マングローブという名の植物はないんですよ」と教わった。この特異な環境には、泥塚の巣を作るオキナワアナジャコやシオマネキなど希少な生物が生息するという。
「根っこの下の方が黒くなっているでしょう。あそこまで潮が満ちてきます」と城さん。訪れた時間は満潮時刻に近かったが、干潮時には約2㍍も水位が引いて、ずいぶん景色が変わるそうだ。
「奄美の豊かな自然を肌で感じていただきたい」と城さん。水面に心地よく揺れるカヌー。眼前にはマングローブ特有の背の低い木々や山が広がり、水面近くには海を渡る蝶(ちょう)・アサギマダラが優雅に舞う。奄美の森や川に抱かれて深呼吸すると、澄んだ空気が体いっぱいに広がった。

■金作原原生林とは

世界自然遺産の推薦地の一つ奄美大島の中部にある、亜熱帯広葉樹が広がる原生林。高さ10㍍にも成長するシダ科の「ヒカゲヘゴ」などが茂り、ルリカケスやキノボリトカゲなどの希少生物を見ることができる。
(参加したのは、アイランドサービスの「1dayAコース:金作原原生林散策&マングローブカヌーツーリング」。通年開催で、所要時間は約8時間~8時間30分。参加費用は2021年5月末現在で、大人1万1000円、3歳~12歳8800円。問い合わせは、TEL:0997-62-3889)

(旅行読売2021年7月号掲載記事を再編集)

(WEB掲載:2021年6月30日)

Writer

たびよみ編集部 さん

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