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世界遺産登録!――三内丸山遺跡で5000年前に思いを馳せる

場所
> 青森市
世界遺産登録!――三内丸山遺跡で5000年前に思いを馳せる

大型掘立柱建物(写真/JOMON ARCHIVES)

ガイドツアーに参加して縄文時代へタイムスリップ

日本政府がユネスコに推薦していた「北海道・北東北の縄文遺跡群」(北海道、青森県、岩手県、秋田県の計17遺跡)が世界文化遺産に登録された。諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)が登録を勧告し、2021年7月に開かれた世界遺産委員会の審査を経て登録が決まった。


本州最北の青森とはいえ初夏の日差しは強い。しかし、風は心地良く、汗が噴き出すような暑さはない。JR新青森駅からバスで約15分の三内丸山遺跡(世界遺産候補の遺跡群の一つ)に向かい、約5000年前の縄文人が住んでいたという遺跡を訪ねてみることにした。

三内丸山遺跡は1992年からの発掘調査で見つかった日本最大規模の縄文遺跡。2000年には国指定の特別史跡となった。東京ドーム約9個分(42㌶)の広さに、竪穴(たてあな)建物跡や墓場などが見つかり、出土した土偶は2000点以上。現在は「縄文時 遊館(じゆうかん)」と呼ばれるミュージアムなどの施設と、発掘現場周辺に復元(立体表示)した竪穴建物や保存状態にある発掘現場などを見学できる「縄文のムラ」に分かれている。無料のボランティアガイドがあり、「縄文のムラ」内を約50分かけて巡ることができる。

この日ガイドをしてくれた方は青森生まれ青森育ちで、退職を機に以前から興味があったボランティアガイドに応募したのだという。興味を持った理由をこう振り返る。「子どもの頃、畑や森などを掘って土器や土偶のようなものを見つけては、友達同士で自慢し合ったもの。身近に感じていた縄文が、いまや世界遺産を目指そうとしている。地元民として関わってみたいと思いました」。ボランティアガイドは現在、100人近くが在籍し、日替わりでガイドを担当している。縄文を身近に感じてきた地元住民ならではのガイドも楽しんでみたい。

南盛土。間を通ることはできないが、発掘現場の雰囲気は十分に感じられる

最初に到着した「南盛土(みなみもりど) 」は、炭や土器、土偶などが土と一緒に捨てられていた場所で、施設は半地下になっている。発掘時の様子を断面で見ることができ、堆積した土の色の違いや土からはみ出ている土器などのかけらを観賞すれば、ちょっとした発掘気分が味わえる。地上へ出てみると、そこには立体表示された竪穴建物や掘立(ほったて)柱建物が並び、まるでタイムスリップしたような感覚にとらわれる。竪穴建物は中に入ることができるため、さらに時間旅行の気分が高まる。中は電気などが通っていないため、昼にもかかわらず真っ暗だ。涼むには居心地の良い場所で、もしかすると縄文人も夏はこんなふうに暑さをしのいでいたのかもしれない。

竪穴建物の中は思ったより広い

三内丸山遺跡のメインとも言える大型掘立柱建物は立体表示されたもので、何のための建物だったのかは現在のところ分かっていない。さまざまな説があるため復元していないので、屋根がないのだという。その柱穴跡は隣接するドームの中にある。ぽっかりと空いた柱穴は六つ。直径、深さともに約2㍍、穴の間隔はすべて4.2㍍で、長方形状に均等に配置されている。多くの穴にはクリの柱が残っていて(現物は縄文時遊館で展示)、縄文人がどのような思いを込めて作ったのかを想像し、神秘性すら感じてしまう。ガイドさんは「宗教的な施設や見張り台など、さまざまな見解があるが、いまだに謎。一番多く受ける質問ですが、答えようがない」と笑顔で話す。

三内丸山遺跡では現在も発掘調査が続けられている。そんな話を聞きながら戻ってきた縄文時遊館で、重要文化財などの出土品が展示されている「さんまるミュージアム」でさらに縄文の魅力を知ることができた。土偶一つとっても人なのか、はたまた人以外の何かなのか、実際のところまだ解明されているわけではないのだ。その見た目はそれぞれ違い、自分好みの土偶を見つけるだけでも面白い。当時の生活を再現したという人形の様子もまた正解ではないのかもしれない。そんなことを思いながら、昨今の縄文ブームは謎が多いことも含めて魅力になっているのだろうと実感した。かつて暮らしていた縄文人の暮らしを想像するだけでロマンを感じるのは私だけではないのだろう。

(参加したのは、「三内丸山応援隊のボランティアガイド」で、参加費は無料。所要時間は約50分。問い合わせは、主催者の三内丸山応援隊 TEL:017-766-8282)

(旅行読売2021年7月号掲載の記事を再編集)

(WEB掲載:2021年6月30日)

Writer

たびよみ編集部 さん

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