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【お得きっぷで夏旅へ】「週末パス」で南東北の新作駅弁めぐり(1)

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【お得きっぷで夏旅へ】「週末パス」で南東北の新作駅弁めぐり(1)

福豆屋の新作駅弁「海苔のり弁887」1200円は、だし巻き玉子、焼き鮭、煮物などおかずも大満足

 

福島から奥羽線普通列車で米沢へ

分厚い時刻表を繰り返しめくって、ローカル線の乗り継ぎに苦心しながら行程を考えるのは鉄道旅行の醍醐味だ。ご無沙汰していた駅弁三昧(ざんまい)の旅にも出てみたい。

そんな時、強い味方となるきっぷが「週末パス」だ。関東甲信越と南東北のJR線に加え、一部私鉄の普通車自由席が乗り降り自由。東京―福島駅、あるいは東京―長岡駅を往復するだけでも元が取れる。土曜、休日のうち連続する2日間有効なので、南東北経由で新潟へ。定番駅弁と新作駅弁を味わい尽くす1泊2日の旅を考えた。

1日目は福島駅まで東北線を北上し、奥羽線に乗り継いで米沢駅へ向かう。途中、宇都宮駅までは普通列車でのんびりと。諸説あるが宇都宮駅は駅弁発祥の地とされ、1885年に白木屋(旅館)がゴマ塩おにぎり2個の弁当を販売したのが始まりという。その弁当を、2002年に松廼家(まつのや)現代風にアレンジし「滊車辨當(きしゃべんとう)」として発売。現在は3日前までに電話予約が必要だが、駅構内の売店で受け取れる。旅のスタートは、駅弁の原点からとしゃれこんだ。

松廼家の「氣車辨當」(880円)は素朴な味わい

ヒット作「海苔のりべん」に続く「海苔のり弁887」

宇都宮駅からは東北新幹線を利用。次の駅弁は、福島県郡山市にある福豆屋の新作「海苔のり弁887(はちはちなな)」だ。2010年に発売した「海苔のりべん」が駅弁ファンの心をつかみ一躍脚光を浴びた福豆屋が、昨年4月に発売。本来なら地元の郡山駅で購入したいが、福島駅構内でも販売している。

名称の「887」は、郡山産の高級ブランド米「ASAKAMAI887」とのコラボに由来。この米は郡山産コシヒカリ「あさか舞」の中でも、88の手間がかかるという米作りに厳格な七つの基準を設けて生産した特別な米という。大きな海苔が載ったご飯には塩昆布が混ぜられていて、ご飯をよりおいしく味わえるように「海苔のりべん」をグレードアップした駅弁だ。

「生産者が苦労して作り上げた米を駅弁に使うにあたり、私たちも気を抜くことは許されません。心を込めて全力で開発しました」と、福豆屋の小林文紀(ふみき)専務。海苔の下で白く輝くご飯は冷めても弾力があり、手間をかけ均等にまぶされた塩昆布に福豆屋の矜持が感じられた。

このご時勢、列車内で駅弁を食べるのがためらわれるなら、福島駅西口駅前広場がおすすめだ。木陰やベンチがあり、ひと休みにちょうどいい。

あの「牛肉どまん中」が煎餅に!

福島から米沢駅へは、急坂を上って峠を越える奥羽線の旅。ローカル線風情を感じるなら普通列車がいいが、福島から2駅先の庭坂駅まで、昼間の普通列車は代行バスを利用する。2023来3月(予定)まで続く福島駅の改良工事に伴う措置だ。

庭坂駅で普通列車に乗り継ぐと車窓は次第に山深くなる。板谷 、峠、大沢と、巨大なスノーシェッドに守られた駅が続き、よほどの豪雪地帯であることが想像できる。やがて平野が開けてくると、上杉家の城下町・米沢は近い。

米沢駅はもとより東北を代表する駅弁といえば、新杵屋(しんきねや)が作る「牛肉どまん中」が挙げられる。一時期は催事も含めて年間60万食、1日当たり1600食を売り上げ、多くの駅弁ファンを魅了してきた駅弁だ。しかし「長引くコロナ禍に苦しめられ、先日は地震の影響で新幹線が運休に……」と苦渋の表情で話すのは、新杵屋代表取締役の舩山百栄(ももえ)さん。

それでも負けてはいられない。2021年4月には知恵を絞って「揚げ煎餅 牛肉どまん中」を発売。山形県産米とどまん中米を煎餅にし、牛肉を煮るための秘伝のタレと、牛肉を煮た風味ある煮汁をブレンドして揚げた煎餅だ。駅弁を思い出す味付けと軽い食感が、想以上の人気を博している。

「揚げ煎餅 牛肉どまん中」は1袋350円。牛肉の煮汁の風味が香ばしい

マンガファンも味方にした「米沢牛 牛肉どまん中」

同時期に、マンガ「花の慶次 ―雲のかなたに―」のイラストをパッケージに用いた「米沢牛 牛肉どまん中」も発売。牛肉煮には米沢牛を使っているため2000円と値が張るが、専用端末とイヤホンを装着して慶次による案内を聞きながら米沢の街を歩くサウンドアトラクション(1980円)が300円引きになるクーポン付きだ。

「マンガファンにも好評です。今年は山形新幹線が開業して30周年です。『牛肉どまん中』もほぼ同じ頃に発売し、新幹線に育てられたという思いとともに頑張ります」と、舩山さんは力を込めて話してくれた。

1日目の新作駅弁めぐりはここまで。鉄印ファンなら、山形鉄道フラワー長井線に乗って長井市内のビジネスホテルに宿泊。山形の名湯の一つ、赤湯温泉でくつろぐのもいい。

 

文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝

「週末パス」で南東北の新作駅弁めぐり(2)へ続く


週末パス

関東甲信越と南東北のJR線と一部私鉄の普通列車(快速を含む)の普通車自由席が乗り降り自由。利用は2023年3月26日までの土曜、休日のうち連続する2日間(8月10日〜19日、12月28日〜1月6日は利用不可)。別に特急券を買えば、新幹線・特急列車も利用できる。発売は利用開始日1か月前から前日まで。駅レンタカーも特別料金で利用できる。8800円

TEL:050-2016-1600(JR東日本お問い合わせセンター )

※きっぷの内容や本文中の駅弁の料金は掲載時のものです。最新のデータはホームページなど最新のデータをご確認ください。

松廼家 TEL:028-634-2426

福豆家 TEL:028-943-0528

新杵屋 TEL:0238-22-1311

 

(出典:「旅行読売」2022年7月号)

(WEB掲載:2022年8月●日)

 


Writer

渡辺貴由 さん

栃木県栃木市生まれ。旅行情報誌制作に30年近く携わり、全国各地を取材。現在、月刊「旅行読売」編集部副編集長。プライベートではスケジュールに従った「旅行」より、行き当たりばったりの「旅」が好き。温泉が好きだが、硫黄泉が苦手なのが玉に瑕(きず)。自宅では愛犬チワワに癒やされる日々。

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