進化するフェリーで、北海道へ行ってみた!
フェリー船室のバルコニーから、コーヒーを手に大海原を眺める
大洗(茨城)~苫小牧(北海道)の「さんふらわあ さっぽろ」乗船記
ここ数年で新造船の就航が相次ぐ長距離フェリー。快適な個室、展望風呂においしい食事と、洋上のホテルさながらの体験が楽しめる。昨今は「密を避けた旅」としても注目されている。茨城・大洗港から北海道・苫小牧港を目指す「さんふらわあ」で新時代のフェリー旅の魅力を探ってみた。
見直されるフェリー旅
「雑魚寝でプライバシーがない」「騒々しくて眠れない」……。爽快なイメージの一方で、ややもすればそんな不安も聞こえてくるフェリーの旅。だがそれは完全に過去のもの。居住性、デザイン性、サービスなど、どれをとってもかつての船旅とは天と地ほどの差があるのが令和のフェリー事情だ。
現在は太平洋側6航路、日本海側4航路、瀬戸内海5航路と9社15航路がある国内長距離フェリー。2010年代後半からは新造船ラッシュが進行中。旅の移動手段としてはもちろん、環境に配慮したモーダルシフト(※)や、災害時対応など海上輸送システムそのものが見直されているのだ。船旅にチャレンジするなら今、そんな時代が到来している。
今回は夕暮れどきの大洗港で「さんふらわあ さっぽろ」に乗船。苫小牧港まで太平洋を754キロ、約18時間の船旅に挑戦してみた。
※モーダルシフトとは、トラックなどの自動車による貨物輸送を、環境負荷の小さい鉄道や船の利用へと転換すること。
定員のおよそ半数が個室
乗客定員は590人。船室は細かく分けて全9タイプで、213人分と最も多いスーペリアを筆頭に約半数が個室となる。今回利用したプレミアムは専用バルコニー付き。プライバシーを重視した、まさにイマドキのフェリーである。
大洗港フェリーターミナルに着いたら、まずは乗船手続きとなる。といってもルームキーを兼ねたチケットを受け取るのみとスムーズ。イマドキといえば徹底した感染症予防対策も挙げられる。商船三井フェリーでは日本旅客船協会のガイドラインに加えて独自の基準も設定。例えば船内の空気を医療機関レベルの清浄度に保つなど、徹底した取り組みを実施している。
大型トラック・乗用車合わせて約300台が載る大型船だけに、マイカー利用者が多いことに気付く。港まで車で来て、船内は個室に滞在となれば「密」とは無縁。コロナ禍で船旅を選ぶ人が増えているというのも納得である。
快適性を重視した船旅
乗下船口となる4階からエスカレーターで5階へ上がると、まず目に飛び込んでくるのがプロムナード。大胆な2層吹き抜け空間で、天井まで大きな窓を配した開放的なデザインだ。5階には案内所や大浴場、6階にはレストランがあり、7階はプレミアムとスイートの船室のみを配置。
動線が分けられているので5・6階でも船室前の廊下はホテルのような静けさが満ちている。各フロア船尾側が広々とした展望デッキになっていて、24時間いつでもサッと外に出られるのもいい。
船内探検に夢中になっているといよいよ出航である。アナウンスによればこの日の波高は約1メートル。船の大きさもあって下船するまで揺れを感じることはなかった。
太平洋に出た船は一路北へと進む。夕食と入浴を済ませたら快適な船室でのんびりと休んでいこう。
大海原を染める朝日に感激
この航路の大きな楽しみが水平線に昇る朝日だろう。目覚めてすぐ船室のバルコニーに出ると、白み始めた空の下を多くの海鳥が飛び交っている。その先には陸中海岸の断崖と緑の山々。ところどころに真っ白い霧が立ち込めている。
展望デッキで右舷側に出ると今まさに太陽が顔を出すところ。海と雲を朱色に染めながら、力強く昇ってくる太陽に誰もがじっと見入っていたのが印象的だった。
ここからは大浴場で朝風呂を楽しんだり、レストランでビュッフェの朝食タイムにしたり。どこにいても青い海が広がり、北東北の変化に富んだ海岸を目に船は進む。苫小牧港に着くのは昼過ぎの予定だ。それまでたっぷりと時間があるのも船旅のよいところ。〝洋上のホテル〟はホテル以上に心に残る旅を演出してくれる、そんな感覚を得た船旅だった。
文/佐藤史子 写真/依田佳子
(出典:「旅行読売」2022年8月号)
(WEB掲載:2022年8月23日)
「さんふらわあ」大洗~苫小牧
■運航ダイヤ
夕方便
大洗 19時45分発 → 苫小牧 翌13時30分着
苫小牧 18時45分発 → 大洗 翌14時着
深夜便
大洗 1時45分発 → 苫小牧 19時45分着
苫小牧 1時30分発 → 大洗 19時30分着
■夕方便旅客運賃
[大洗発]B期間(6/1〜7/14、8/21〜9/15、9/19〜30)
◉スイート 4万8700円
◉プレミアム 2万5300円
◉スーペリアオーシャンビュー 2万1600円
◉スーペリアインサイド 1万9500円
◉コンフォート 1万3300円
◉ツーリスト 1万300円
※そのほかの期間の運賃や乗用車運賃、深夜便運賃などについてはホームページをご確認ください。
※大人1人分の料金。個室等級は別途、不足人数の貸切料金がかかります。
※例えばB期間に大人2人+乗用車(5㍍未満)でプレミアム利用で乗船した場合、旅客運賃2万5300円+乗用車運賃3万1800円+運転者差額1万5000円となります。
■大洗フェリーターミナルへのアクセス
列車+バス :品川・東京・上野駅から特急1時間10分または東京駅から高速バス2時間の水戸駅下車後、那珂湊行きバス30分、大洗フェリーターミナル下車
車:北関東道・東水戸道路水戸大洗ICから国道51号、県道2号経由約5㌔
■問い合わせ
商船三井フェリー TEL:0120-48-9850