富山の食や工芸品の魅力を知る限定ツアー
富山県が「食」に恵まれていることをご存じだろうか。標高3000メートル級の立山連峰から水深1000メートルの富山湾まで、高低差4000メートルに及ぶ複雑な地形が狭いエリアに凝縮していることで、さまざまな農産物や海産物に恵まれている。その豊かな素材を生かすべく、熱い思いを持った生産者がいるのだ。
富山県の食材や加工品、伝統の技に触れ、生産者や製造者の方に話を聞いて見学や体験ができる人数限定のツアー「おいしい富山を訪ねる旅」が2022年10月に行われた。
富山駅を出発したバスは一路、北西に向かう。主塔の高さ127メートルは県内一という新湊大橋を渡ると、眼下に大型帆船「海王丸」が見えた。
さらに北西に進むと、JR氷見線と並走する区間がある。この辺りは雨晴(あまはらし)海岸と呼ばれ、富山湾越しに望む立山連峰が有名な絶景スポット。この日はあいにく雲に霞んで、山並みは見えなかった。近くにある勝興寺は本堂などが国宝に指定されることになり、県内では二つ目の国宝となる。
富山駅から1時間ほどで氷見市に到着した。柿太水産は無添加の干物を作っているほか、木樽でイワシやサバを発酵・熟成させた「こんか漬け」が名物。
「こんか」とは小糠がなまったもの。「今年は例年と違う味わいになり、ウォッシュチーズのようなねっとりとした旨口です」と、社長の柿谷政希子さんの説明に参加者が耳を傾ける。「お酒にも合いそう」と参加者からひと言。
そしてお楽しみのランチ。氷見イワシを使った料理はほかに、田作りやマリネがあり、氷見野菜を使ったジャガイモとイカ干しのドライトマト風味も。一つ一つの料理が丁寧に作られていて、体に沁みわたっていくようだった。参加者は食後、こんか漬けや干物を土産に買い求めた。
南へ移動し、高岡市へ。仏具や梵鐘など高岡銅器は全国でもトップシェアを誇る銅器の一大産地だ。
1916年創業の能作(のうさく)は21世紀になってから錫製品を開発し、食器や雑貨、風鈴などデザイン性に優れた商品を次々と生み出している。工場見学で印象的だったのはベテランに交じって若い職人が多いこと。「機械も使いますが、最後は人の手で仕上げます」というガイドの言葉が印象的だった。
この日最後に訪れたのは砺波市の若鶴酒造。「若鶴」や「苗加屋(のうかや)」という日本酒だけでなく、ウイスキーも造っている”二毛作”の珍しい酒蔵だ。
スコッチウイスキーと同じピート麦芽を使っているので力強い香りが特徴で、麦芽による香りの違いを体感した。真新しい蒸留器は高岡銅器の特注品とのこと。見学後、日本酒やウイスキーを試飲。工場限定のウイスキーやリキュールも売っており、皆さん手に取っていた。
富山駅近くのホテルに宿泊し、翌朝は早起きして新湊漁港でシロエビ漁の水揚げを見学する予定だったが、残念ながら悪天候で漁が中止になってしまった。“富山湾の宝石”と呼ばれ、透き通った淡いピンク色のシロエビとの出合いはまたの機会に。
気を取り直して、富山駅から北東の魚津市にある河内屋に向かった。1947年創業の蒲鉾店で、通常は工場見学できないものの、今回はツアー限定で特別に見学させてもらった。
富山県では贈答に蒲鉾が欠かせず、鯛や鶴亀などに成形し、着色した細工蒲鉾が一般的。アートのような蒲鉾を作る職人の手さばきに見とれてしまう。蒲鉾の上に魚介類が載った鮨蒲(すしかま)は河内屋のオリジナル。北陸新幹線の開業に合わせて開発した「棒S(ぼうず)」など、多彩な蒲鉾が店頭に並んでいる。
最後に立山町のヘルジアンウッドでランチ。見上げれば立山連峰が連なる田園地帯に散居村をイメージして2020年にオープンした施設で、レストランやハーブ畑、アロマ工房、サウナホテルなどがある。
運営する前田大介社長が駆け付け、「農地の恵みをテーブルに、アロマとハーブを軸に運営しています」と説明してくれた。野菜たっぷりのランチの締めはハーブティー。周りは一面田んぼという特異な景観の中でゆったりとした時間が流れる。「地域の素材を地域の人とメンテナンスし続けたい」という前田社長の思いはさらに広がっていきそう。
荷物が倍近くになるほど土産を買った2日間。参加者の皆さんは富山県の多彩な魅力を体感して帰途についた。
(WEB掲載:2022年11月2日)
富山県の食の魅力を東京で感じられる「富山のおいしいレシピ体験会」を11月15日、16日の18時~19時、富山県のアンテナショップ「日本橋とやま館」で開催。
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