たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

日本遺産と雪ものがたり 新潟県十日町市【1】 ~国宝ときもの~

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 新潟県
> 十日町市
日本遺産と雪ものがたり 新潟県十日町市【1】 ~国宝ときもの~

きものの街・十日町市。着付けをしていただき、雪原でパチリ。協力:株式会社青柳

ダンスに絵画、お茶やお花に語学講座まで。さまざまな趣味やおけいこを「講座」という形で提供しているよみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)。企画担当者として、日々、世の中の流行をキャッチする反面、伝統文化などにも触れる機会の多いスタッフが、雪降る新潟県十日町市へ旅をして、雪国文化を知り、雪を友として暮らす当地の人たちの心に触れた。

谷島未来(やじま・みき)/よみうりカルチャー講座企画担当。スイーツ好きが高じて企画した「和菓子バイヤー」や、「刀剣」などのヒット講座を手掛ける。趣味は、仕事の合間をぬっての観劇。

(写真:高橋敦史  編集:よみうりカルチャー)

日本遺産のまち・十日町市へ

2023年2月のある日、文化庁が認定する「日本遺産」のまち・新潟県十日町市を訪ねました。越後湯沢駅で新幹線を降り、ほくほく線に乗り換えて、雪化粧をした十日町駅へ。

「すごい雪ですね」。男性駅員さんに声をかけると「これでも例年の半分ぐらい」との答えが。念のため防水加工のシューズを履いてきたものの、駅のロータリーを出るとすぐに足元はずぶ濡れに。この場所が日本でも指折りの豪雪地帯であることを改めて体感。やっぱり長靴にすればよかったなぁ。

十日町 信濃川
河岸段丘から雪景色の十日町市街方面を眺める。市内を流れる信濃川。十日町市は日本一長い川の中流部にある

さて「日本遺産」のお話し。皆さんよくご存じの「世界遺産」は、後世に残すべき建築物や自然などを認定するものですが、「日本遺産」は日本各地で長年紡がれてきた伝統や風習を、「地域のストーリー」としてまとめ、日本を語る上で欠かせない「物語」として文化庁が認定するものです。

全国で104の「ストーリー」が認定されているのですが、2020年に認定された、ここ十日町市のストーリーは「究極の雪国とおかまち ―真説!豪雪地ものがたり―」です。

スノウリッチ
「スノウリッチ*スポット」のペナント

十日町市では、日本遺産認定を受けて「雪国のストーリー」を全国の人たちに知ってもらう取り組みとして「スノウリッチ*ツーリズム」の活動に力を入れているそうです。

スノウリッチは、「スノウ=雪」と「リッチ=豊かさ」を表現した言葉だそう。雪は十日町市に恵みをもたらしてくれ、人々はその恵みに創意工夫をプラスして、豊かな雪国文化を育ててきたといいます。その文化を知ってほしいという思いに加え、この地を訪れる旅人が、雪国文化を体験し、この地の人たちと交流する中で、自然と心を豊かにしてもらえたら・・・。スノウリッチという言葉にはそんな願いが込められているそうです。

この思いに共感し、観光客へ提供する商品やサービスを通じて「究極の雪国」の世界観を伝えてくれるのが「スノウリッチ*スマートガイド」の皆さんです。ガイドの方がいる商店や施設にはロゴマークが入ったペナントが置かれています。今回の旅では、市内の「スノウリッチ*スポット」をめぐり、雪国文化のすばらしさを体感したいと思います。

国宝を360度間近に見られる「十日町市博物館」

十日町市の歴史と文化を学ぶため、最初に「十日町市博物館」を訪れました。副館長の菅沼亘(すがぬま・わたる)さんに案内いただきました。展示の目玉は、縄文時代中期・今から約5千年前に作られたと推定される国宝の「火焔型土器」。縄文時代のものが国宝に指定されているのはわずかに6件のみで、土器としての指定はこの火焔型土器だけ(※)だそうで、新潟県内では唯一の国宝とのこと。とても貴重な品です。

(※)国宝に指定を受けているのは、市内の笹山遺跡から出土した57点の土器類の一群。

火焔土器
本物の国宝・火焔型土器がこんなに間近に!

保存のために照明が落とされた展示室で、炎のような意匠がひときわ存在感を放っていました。名前のとおり、燃えさかる炎のようにも見えるけど、「オオカミの逆立った毛並みに見えるなぁ」。そうつぶやくと、菅沼さんは「そうそう、4本脚の動物をイメージしたとの説も有力な説の一つですよ」と教えてくれました。

(左)圧巻の土器群。「縄文人たちは器用だったんだなぁ」 (右)「火焔型土器」の精巧なレプリカもあり、持ち上げる体験も。その大きさ・重さを実感できる。重量は7.4キロ!おっ重い・・・

縄文時代に、きものの原点

となりの展示室では、縄文人たちの暮らしぶりを紹介しています。菅沼さんによると、縄文土器の底には粗い編み目模様がついているものもあるそうです。「これは『アンギン』という古来の編み布の痕で、縄文人はこの布を生活用具や着るものに活用していました」。

続けて菅沼さんは、縄文時代の冬の気候は今とあまり変わりないことも教えてくれました。雪深い冬、男たちは狩猟に出かけ、女性たちが家の中でアンギンを編んで・・・そんな生活が昔の十日町市にあったのかもしれません。

「アンギン」はその後、「越後布(えちごふ)」へ代わり、戦国時代には上杉家の戦費を賄う重要な財源になったそう。それから江戸時代になると改良が進み「越後縮(えちごちぢみ)」に。徳川将軍家や大奥でも愛用されるまでになり、十日町市は「きもの」の街として発展をしていきました。

◎十日町市博物館  くわしくは、こちら

十日町市博物館
縄文人の等身大人形のほか、十日町市のきもの産業の発展を伝える史料も展示
十日町市博物館
「かわいいなぁ」。ミュージアムショップで見つけた手ぬぐい

ほっとひと息、「雪国」オリジナルブレンドはいかが

十日町駅から車で10分ほど、自家焙煎のコーヒー豆をそろえる専門店「ミールクラフト」を訪ねました。選りすぐりの10種類以上のコーヒー豆が並びます。雪に閉ざされた冬の時間、昔から十日町市周辺には近所の人が集まってお茶をする文化があるそう。一番人気はお店オリジナルブレンドの「じょんのび」と「だんだん」。お取り寄せもできます。

◎ミールクラフト  くわしくは、こちら

ミールクラフト
店長の盛岡綾美さんが好みに合う豆を選んでくれる
ミールクラフト
店内には、コーヒーのふくよかで、さわやかな香りがただよう

■日本遺産と雪ものがたり 新潟県十日町市【2】 ~雪国が紡いだ「きもの」~ こちら

■日本遺産と雪ものがたり 新潟県十日町市【3】 ~雪国が育んだ食文化~ こちら

 

◎日本遺産「究極の雪国とおかまち ー真説!豪雪地ものがたりー」

スノウリッチ*ツーリズム  くわしくは、こちら 

 

(WEB掲載:2023年3月9日)

☛新潟県など甲信越エリアへのツアーはこちら

 

Writer

たびよみ編集部 さん

Related stories

関連記事

Related tours

この記事を見た人はこんなツアーを見ています