夜通し歩く千日詣りで 火伏・防火を願う
登山道から急な石段を上ると現れる愛宕神社の社殿。途中に自販機などがないので水は要持参
京都市の西にそびえる標高924㍍の愛宕山。その山頂に鎮座するのが愛宕神社だ。全国に約900の分社を持つ総本宮で、防火・鎮火の神様として信仰を集める。例年7月31日夜から8月1日早朝にかけて行われる千日詣りこと「千日通夜祭」に参拝すると、千日分の火伏・防火の御利益があるといわれ、この日は数万人が境内参道を埋め尽くす。
山頂を目指す登山ルートは、麓の清滝から登山する表参道、山の北側にある月輪寺(つきのわでら)を経由する裏参道、その間を走る難路の大杉谷道があるが、まずは、初心者は王道の表参道ルートがおすすめだ。なお清滝の二の鳥居から愛宕神社まで約4㌔あり、途中は勾配や階段の段差も多いので、トレッキングシューズなど歩きやすい靴が必須だ。
表参道沿いには、丁石と呼ばれる案内が1丁(約109㍍)ごとに建てられ、愛宕神社の境内入口は40丁目にある。ここから2〜3丁目、急な石段を登りきると本殿が見えてくる。本殿には雅産日命(わくむすびひのみこと)、埴山姫命(はにやまひめのみこと)、伊弉冉尊(いざなみのみこと)、天熊人命(あめくまひとのみこと)、豊受姫命(とようけひめのみこと)の五柱が祀られている。登り切った達成感で正面だけを参拝しがちだが、肝心の火除けの神である迦遇槌命(かぐつちのみこと)と雷神、土の神である破無神(はむのかみ)は、若宮に祀られているので左手側にまわり、若宮と奥宮も忘れずに参拝しよう。ちなみに奥宮には大国主命(おおくにぬしのみこと)ほか各地の大社の分霊を祀っている。
裏参道にある月輪寺は古くから愛宕山内にあり、平安時代の僧・空也上人が修行し、念仏を悟り開いた地といわれる。アクセスが困難な場所だが、宝物館では上人自作の「空也上人立像」をはじめ、阿弥陀如来坐像、千手観音立像などが出迎えてくれる。またここはシャクナゲの名所であるほか、季節ごとに美しい花が咲き誇る。さらに寺から下山したところに、上人が修行したと伝わる空也滝がある。落差12㍍の大きな滝で、今も信仰を集めるパワースポットとして知られている。