たんどーる 蜂屋柿のくりーむさんど【新定番 みやげ菓子】
蜂屋柿のくりーむさんどは、地域を代表する土産物として住民からも愛されている
約100年の歴史を誇る極上の干し柿を洋菓子に
岐阜県南部、木曽川と飛騨川の合流地点に位置する美濃加茂(みのかも)市は果樹栽培が盛んだ。1934年に名古屋の菓子問屋として創業した若尾製菓は、戦後に「甘いものでみんなを元気にしたい」とこの地で菓子作りを始めた。60年代から観光土産用の菓子の製造で発展。近年は地元産の果物を使ったお土産菓子を開発して業績を上げている。
「たんど~る」は2016年、菓子工場の敷地内に直営店舗としてオープン。21年には、1000年以上の歴史を誇る地元特産の干し柿「堂上(どうじょう)蜂屋柿」の規格に達しない品を使った「蜂屋柿のくりーむさんど」が生まれた。堂上蜂屋柿は蜂蜜のような甘さが特徴で、かつて朝廷や江戸幕府に献上された極上品。「堂上」の称号は、朝廷への昇殿が許された栄誉ある地位を表し、柿の品種や作り方に加え、大きさや糖度など厳しい基準をクリアしたものしか名乗れない。
「とてもおいしいのに、堂上蜂屋柿としては規格外の柿を生かして特産菓子を作れないかと試行錯誤して誕生しました」と、同店の則竹俊希(のりたけとしき)さんは開発のエピソードを明かす。
以前から蜂屋柿の皮を粉末にしたものを練り込んだクッキーを製造していたが、焼くと柿の風味が損なわれるのが難点だった。そこで、「干し柿をそのまま使った商品を作ろう」との意見が開発チームから上がったという。干し柿は手作業でヘタを取り除いて粗めに刻み、ホワイトチョコレートでコクを増したバタークリームとともに、サクッとした歯応えの風味豊かなクッキーに挟み込む。干し柿の上品で濃い甘みが際立つ逸品に仕上がっている。
同時期に開発した「蜂屋柿のふぃなんしぇ」と並んで地元のお土産菓子として人気を集め、帰省シーズンの年末年始には特に売れ行きが上がるという。どちらの商品もバラ売りはしていないが、併設のカフェでは、それぞれ1個ずつ皿にのった「蜂屋柿スイーツセット」(1ドリンク付き660円)として味わえる。味見の意味も込めたお得価格がうれしい。
6月には地元特産のナシを使った新商品が発売される予定。ほかにもブドウやブルーベリーなど地元産の果物を使った菓子を次々に送り出し、地域を盛り上げたいと意気込んでいる。
文/児島奈美 写真/宮川 透