【鉄道ひとり(一人)旅】コラム 長距離直通列車の旅「郊外と都心を結ぶ列車で見知らぬ終点へ」
太平洋を見ながら東海道線の早川―根府川駅間を走る上野東京ライン。栃木県から首都圏を通って静岡県の熱海方面まで直通している
気軽な日帰り鉄道旅として面白い長距離直通列車
列車の運行本数を増やし、乗り換え回数を減らすことを目的に、都心部での折り返し運転をなくした、JRの直通や私鉄・地下鉄の相互乗り入れ路線が増えてきた。これによりなじみのある地名ではなく、遠方の降りたことのない行き先表示を見かけるようになった。聞きなれない路線や終着駅がどんなところなのか想像すると旅心が湧く。そんな長距離直通列車は大都市圏で本数が多く、気軽な日帰り鉄道旅として面白い。
わかりやすい例では私が利用する東北線の小金井駅からは、2001年に湘南新宿ラインが、15年に上野東京ラインが開通し、栃木県から神奈川県方面へ乗り換えなしで出かけられるようになり、鎌倉、小田原、熱海への旅を楽しんでいる。
相鉄線から東武線まで乗り通す
首都圏では多くの路線で相互乗り入れが行われているが、中でも最近話題となったのは、23年の相鉄線~東急新横浜線の開業だ。
もともと横浜駅のみが起点の相鉄線は、都心へ行くにも途中で何回もの乗り換えが必要だった。それが19年にJR埼京線との直通運転が実現。23年には新横浜線の開通でさらに3方面へ乗り換えなしで行けるようになった。そのうちの一つ、東武東上線方面行きの長距離直通列車の旅に出かけてみた。
相鉄の二俣川駅のホームには、いろいろな行き先を表示した列車が次から次へとやって来る。時刻表の凡例では、上り方面で26か所にも及ぶ。このうち湘南台駅から来た東武線直通各停川越市駅行きに乗車した。

相鉄の二俣川駅に入ってくる列車は、さまざまな行き先を表示している

二俣川駅上り方面時刻表の行き先凡例。26の行き先が確認できる
西谷駅で相鉄本線に別れを告げ地下へ入った列車は、羽沢横浜国大駅で分かれるJR埼京線方面ではなく、新たに開通した新横浜線方面へ進んで行く。新横浜駅で各停から急行に変わり、日吉駅で地上に出る。
東武線直通列車は日吉駅から東急東横線を走って行く。一方、都営三田線と埼玉高速鉄道線の直通列車は東急目黒線に入り、田園調布駅まで東急東横線と並走。多摩川を渡ってほどなく目黒方面へ向かって行く。
東急東横線はかつて地上の渋谷駅が終点だったが、今はここから再び地下へ潜り、東京メトロ副都心線の渋谷駅につながる。窓の外に見える駅名表示版の基色は赤色から茶色となり、各駅停車に変わった。
和光市駅で再び地上に出ると今度は普通となった。各社で列車種別の呼び方が違うのを知れるのも、直通列車の旅ならではだ。柳瀬川(やなせがわ)駅を過ぎて橋梁(きょうりょう)から望む田園地帯など、東上線の車窓風景は遠くまで平らで開けており、線路の近くまで丘陵地や斜面地に住宅が立ち並ぶ横浜周辺の風景との違いも新鮮に思えた。
ほどなくして、列車は目的地の川越市駅に到着した。乗車していない区間も含めると、湘南台―川越市駅間の48駅(通過駅を除く)の走行距離は約80キロ、約2時間20分に及ぶ。
こうしてたどり着いた川越では、江戸情緒を今に残す蔵造りの建物が軒を連ねる「小江戸」の町歩きが楽しめる。興味をひかれた路線、目的地に向かう長距離直通列車に乗ってみると、普段見たり感じたりすることがない鉄道旅の風情が楽しめる。

蔵の街並みが残り、小江戸と呼ばれる川越。「時の鐘」や「菓子屋横丁」など、見どころを巡りたい(写真/ピクスタ)
中京圏、関西圏の長距離直通列車
首都圏以外の中京圏では、名古屋市営地下鉄鶴舞線経由で、愛知県中央部の産業都市の名鉄豊田線豊田市駅と北部の観光都市の名鉄犬山線犬山駅が結ばれている。
関西圏では、09年の阪神なんば線の開業により、阪神本線神戸三宮駅と近鉄奈良線近鉄奈良駅が乗り換えなしで結ばれ、話題となった。
またJR西日本では、北陸線敦賀(つるが)駅から赤穂(あこう)線播州赤穂駅までの275.5キロを約4時間かけて結ぶ新快速が運行している。全区間を直通で走る列車の本数は限られるが、途中の近江塩津(おうみしおつ)駅や米原(まいばら)駅、姫路駅や網干(あぼし)駅を発着する新快速は数多くあるので、気ままにあちらこちらへ旅してみてはいかがだろう。

日本海に近い敦賀駅(福井)から瀬戸内海に近い播州赤穂駅(兵庫)まで、新快速が運行している
能登川-安土駅間の東海道線(琵琶湖線)を走る新快速。遠くに琵琶湖が見える

文・写真/越 信行
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2026年3月号)
(Web掲載:2026年3月21日)


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