【1万円台の名湯】素泊まりで自由気ままに滞在 SOIL Nagatoyumoto<長門湯本温泉>
深さ約1メートルの恩湯の湯船に体を沈めると、化粧水のような柔らかな湯が全身を包む。温度の低い日のみ加温される
600年湧き続ける湯に導かれる宿
「神授(しんじゅ)の湯」と呼ばれてきた恩湯(おんとう)を中心に、長門湯本温泉は形作られてきた。約600年前の室町時代、住吉大明神のお告げによって恩湯は見つかったとされる。しめ縄が張られた岩盤の奥に、湧き出る湯を見守るように神像が鎮座する。共同浴場でありながら、神域めいた静けさが漂う。恩湯の前には音信川(おとずれがわ)が流れ、その両岸に宿や店舗が点在する。温泉街全体で進めているリノベーション事業により、古さと新しさが同居する風景になった。若い旅人の姿も目に入る。
「SOIL(ソイル)Nagatoyumoto」は老舗旅館「六角堂」を受け継ぎ、25年3月に開業した。滞在中は恩湯を何度でも利用でき、宿に籠(こも)らず湯へ通いながら温泉街を歩く。そんな長門湯本らしい過ごし方を、旅の中に自然に組み込んでくれる。客室は、音信川を望む景色が主役。窓を開けるとせせらぎが優しく耳に届く。春は川沿いが桜色に染まる。室内テーブルやイスは山口の家具職人によるもの。深川萩の焼き物や徳地(とくぢ)和紙の照明など、山口の工芸品がさりげなく配され、空間に温かみを添えている。

音信川沿いに立つホテルは老舗旅館を引き継ぎ、リノベーションされた

写真のリバービューツインのほか、スイートルームなど多彩な客室を用意
最上階にはサウナもある。大きな窓の向こうに音信川を眺めながら、外気がさらりと肌をなでていくのが心地良い。セルフロウリュで地元産の柑橘(かんきつ)「長門ゆずきち」を使用したアロマを落とせば、香りからもこの土地の輪郭が立ち上がる。景色と風に身を委ねるうちに、旅の疲れがすっと抜けていった。

広々としたサウナには石材も配され、自然を感じられる
では、恩湯につかるとしよう。宿から恩湯までは、ほんの数十歩だ。恩湯は39度の足元湧出泉。毎分約130リットルの湯がかけ流され、静かにオーバーフローしていく。岩盤からこんこんと湧く湯の気配に包まれ、そっと目を閉じた。心が満ちていくのを感じる。ぬるめの湯にゆったりと身を預けた後は、川沿いのテラスへ。すぐ先では、飛び石をぴょんぴょん渡る子どもたちの声が弾んでいる。眺めているだけで、心が和む。

恩湯は、風呂敷バッグが無料利用の目印になる
滞在の質をさらに高めてくれるのが、塩づくり見学や深川窯訪問ツアーなどのアクティビティー。「地元の人が季節とともに続けてきた営みに触れていただきたい。恩湯も自宅に風呂がない時代から大切にされてきた場所。この土地が受け継いできた時間の流れを感じてほしい」と支配人の黒木涼さん。温泉へ通い、川沿いを歩き、土地の営みに触れる。長門湯本を旅すれば、まちの時間とゆっくりと交わることができる。

江戸時代からの伝統を受け継ぎ、五つの窯元と8人の作家が活動する深川窯。訪問ツアーは60分で2500円
瓦そば柳屋 長門湯本店🍜
宿から音信川沿いを歩いて3分。築70年を超える古民家で、山口名物の瓦そば1419円( 写真はしらす飯セット2068円)を味わえる。熱々の石州瓦の上に茶そば、錦糸卵、牛肉、薬味をのせて提供される。まずは薬味なしで茶そばの風味を味わい、途中でレモンを落として爽やかに、紅葉おろしでピリッと。瓦の熱で麺が少しずつ焦げ、パリパリのおこげへと変わっていく。最後まで味の変化が楽しい。
■11時〜18時30分/火・第3水曜休/長門市深川湯本1325-1/TEL:080-9185-3070


文/前岡侑希
SOIL Nagatoyumoto
TEL:0837-25-3333
住所:長門市深川湯本2257
料金(税込み)
素泊まり 平日1万1150円~/休前日1万5100円~
1泊朝食 平日1万3350円~/休前日1万7300円~
1泊2食 平日2万2150円~/休前日2万6100円~
※1人1室利用の場合は素泊まり2万2300円〜
客室:全24室
泉質(恩湯):アルカリ性単純温泉
日帰り入浴: 10時~22時/不定休/990円(一般利用の場合)
交通:山陽新幹線新山口駅から乗り合いタクシーで1時間/中国道美祢ICから40キロ
もっとお得に!
博多からは西鉄バス「萩・長門おとずれ号」の利用が便利。長門湯本温泉まで乗り換えなし、約3時間で到着。1日2往復(4便)。月〜木曜。片道4000円(金〜日曜・祝日は片道4500円)
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※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2026年5月号)
(Web掲載:2026年4月25日)


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