たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

【フェリーひとり(一人)旅】コラム 復活した青蘭航路と新造船「ブルーグレイス」(航海作家・カナマル トモヨシ)

場所
> 室蘭市、青森市
【フェリーひとり(一人)旅】コラム 復活した青蘭航路と新造船「ブルーグレイス」(航海作家・カナマル トモヨシ)

東日本最大の吊り橋・白鳥大橋。室蘭入港直前に橋の下をくぐるシーンは、ブルーグレイスに乗ったら見逃せない

プロフィール画像 左右400.jpg

カナマルトモヨシ
1966年、富山県生まれ。フェリーやクルーズ客船で国内外を旅する航海作家。雑誌「クルーズ」(海事プレス社)での連載執筆の他、フェリーデータページの「フェリーズコラム」を担当。その他にも数多くの媒体で執筆する。

物流の「2024年問題」や国の施策などにより、フェリー業界に追い風が吹いている。新航路の開設やフェリー各社による新造船が増える近年、一度、廃止になった航路の復活と、新造船導入を果たした津軽海峡フェリー「青蘭航路」の魅力をひも解く。

ブルーグレイス。それは2025年8月8日に青森~室蘭(青蘭航路)でデビューした新造船である。徒歩乗船者である私は、最もリーズナブルなスタンダードを利用。マットレス、鍵付きロッカー(100円返却式)、コンセント付きと、新造船になって快適度がとてもアップしている。

10時40分、青森を出港。新造船には展望浴室が新設されている。窓の外に広がる津軽半島を眺めながらつかる湯船は、最高の一言である。

5 展望浴室.jpg
ブルーグレイスに新設された展望浴室

この航路、実は3年前に復活したばかり。青蘭航路は1967年に開設され、その翌年から東日本フェリーが運航していた。しかし2008年12月、営業不振に陥っていた東日本フェリーの撤退で廃止となり、室蘭からフェリー航路が消えた。

青蘭航路が復活する契機となったのは、トラックドライバーの時間外労働の上限規制により起こる「2024年問題」だった。片道7時間の青蘭航路ならドライバーの休息時間もある程度確保できる。フェリー航路再開を熱望していた室蘭市の誘致もあって、津軽海峡フェリーは青蘭航路の復活に踏み切った。室蘭発20時50分/青森着午前3時50分というダイヤも、物流面を重視した背景があるからだ。

しかしここ10年ほど、船の老朽化や環境問題・省エネ対策などから国内のフェリー各社は新造船への切り替えのタイミングで、一般旅客の受け入れにも注力する動きが目立つ。2010年代に、外国客船の日本進出によるクルーズブームが起こると、新造フェリーも船内施設やキャビン(客室)のグレードを上げ、クルーズ客船をほうふつとさせるサービスを提供するようになっている。

青蘭航路は物流面を最優先したダイヤで再開したが、そのおかげで青森発は日中の船旅を満喫できることになり、観光客の人気も高まっている。徒歩乗船の利用者も、平日にもかかわらずそこそこ乗っている。それも老若男女バラエティーに富む。

2 航空写真.jpg
25年8月、青蘭航路に就航した新造船ブルーグレイス

風呂上がりにデッキに出る。津軽と下北の両半島に挟まれた平舘(たいらだて)海峡の潮風が心地良い。右側に仏ヶ浦の奇岩群を遠望する辺りで、お腹の虫が鳴き出したのでランチにする。船内にレストランはないが、冷凍食品の自動販売機が並ぶオートショップがある。「日本三大やきとり」の街の一つ、室蘭へ行く船らしく「やきとり弁当」も扱う。これに決めた。

食後、再びデッキへ。右手にマグロで有名な大間(おおま)、左手には函館山と函館の街並みが見えてくる。いま、津軽海峡の真っただ中にいるのだ。亀田半島がくっきり見えるようになれば、そこはもう北海道。左手に恵山(えさん)や恵山岬灯台、さらに北海道駒ヶ岳の山容も楽しめる。

そして、間もなくこの船旅のハイライトが右手に現れる。絵鞆(えとも)半島の地球岬である。半島の外海岸に展開するのは奇勝・ピリカノカ。「美しい・形」を意味するアイヌ語だ。ピリカノカを洋上からパノラマのように眺められるのはこの航路ならでは。

さらにイルカの群れによるドルフィンジャンプが始まる。まるでブルーグレイスの入港を歓迎するかのようだ。それに見とれているうちに、この船旅のクライマックスが訪れる。白鳥大橋である。橋をくぐりながら室蘭の夕景をじっくり堪能した。

17時25分、室蘭入港。ブルーグレイスの7時間は、豪華な遊覧船のデイクルーズのようだった。

3 BGエントランス.jpg
2層吹き抜けのエントランスは開放感のあるくつろぎ空間

4 BGビューシート.jpg
船首にあるビューシート。リクライニングシートはすべて針路の先に向いており、船長になった気分で船旅を満喫できる

ブルーグレイス

◉運航ダイヤ
青森 10:40発🚢17:25着 室蘭 20:50発🚢翌日3:50着 青森

◉料金(大人1人)
A期間/室蘭~青森
スイート/1万3230円
ファースト(わんこ同伴室あり)/1万690円
コンフォートシングル/8140円
ビューシート/6870円
スタンダード/5590円
自動車(軽)/2万990円
自動車(6メートル未満)/2万6450円
※A期間:5/7~31
※海割ウォーク:徒歩乗船(バイク、自転車同伴可)限定で、スタンダード片道4000円(4月28日~5月6日、7月24日~8月17日は適用外)

◉アクセス
青森港
=奥羽線青森駅からバス12分、津軽海峡フェリーターミナル下車すぐ/東北道青森ICから7キロ
室蘭港=室蘭線室蘭駅から徒歩15分/道央道室蘭ICから10キロ

◉問い合わせ 
津軽海峡フェリー青森支店/TEL:017-766-4733

文/カナマル トモヨシ


※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2026年6月号)
(Web掲載:2026年6月13日)


Related stories

関連記事