【手わざの日本旅】第1回 界 別府 臼杵焼の陶芸家から学ぶ、オリジナルキーホルダー製作(1)<大分・別府温泉>
左から臼杵焼作家の宇佐美さん、筆者、界 別府の金澤さん
「手業のひととき」で知る当地の魅力
大分空港から車で約50分。界 別府は、旧別府港に面した北浜地区に建つ。明治時代の開港後、全国から湯治客が訪れる別府温泉の玄関口として栄え、温泉街の発展を支えてきた場所である。
館内に入ると、温泉の手湯や足湯を備えた「湯の広場」と、別府湾を一望する景色が広がる。全客室が、ご当地部屋「柿渋の間」。血の池地獄を思わせる柿渋色を基調に、大分の伝統工芸「豊後(ぶんご)絞り」を取り入れた空間だ。敷地内には自家源泉を2本持ち、大浴場や露天風呂付き客室で、美肌湯と好評のナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉を楽しめる。
宿のコンセプトは「ドラマティック温泉街」。朝・昼・夕暮れ・夜と、時の移ろいによって変化する情景を「ドラマティック」と表現する。
そんな界 別府でぜひ体験したいのが「手業(てわざ)のひととき」である。これは、地域の職人や作家、生産者を訪ね、その土地に受け継がれてきた文化や手仕事に触れる「界」のご当地文化体験。作品づくりだけでなく、作り手の思いや歴史、ものづくりの背景まで知ることで、旅人と地域をつなぐことを目指している。
幻の器をめぐる旅へ
今回の舞台は、別府市から車で約1時間の臼杵(うすき)市にある「うすき皿山」だ。最初に宿へ向かうのではなく、まず手仕事が息づく地域へ出かけ、作り手に会う。そんな旅の始まりも、このプログラムならではである。
臼杵は、国宝・臼杵磨崖仏(まがいぶつ)で知られる歴史ある町だ。切り立った岩肌に彫られた石仏は、平安時代末期から室町時代初期のものと考えられているが、誰が何のために造ったのかは謎に包まれている。

ミステリアスな臼杵磨崖仏(国宝)

臼杵磨崖仏に見守られるように広がる「うすき皿山」の里山
その臼杵磨崖仏の山を見上げる場所に、「うすき皿山」がある。皿は焼き物の里を意味し、この地でまれ育った陶芸家の宇佐美裕之さんが取り組むのが、幻の焼き物「臼杵焼」の再興である。
そのルーツは、江戸時代後期に臼杵藩の御用窯として築かれた「末広焼」。しかし窯は十数年で途絶え、約200年間、歴史の中に埋もれてしまった。宇佐美さんは残された器や資料を2015年から調べ始め、失われた焼き物を、現代の暮らしに寄り添う器としてよみがえらせた。「器は料理の額縁」。その考えのもと、白磁の美しさや花びらを思わせる輪花の形を生かしながら、料理が映える器づくりを続けている。

「うすき皿山」の工房にて。多彩な職人たちから異なる表情の器が生まれる
この物語に心を動かされたのが、界 別府のスタッフ・金澤まり子さんだ。「一度、途絶えた焼き物を、現代の暮らしに合わせてよみがえらせた。その挑戦がとてもドラマティックで、界 別府と通じあう物語を感じました」と話す。
昔のものをそのまま復元するのではなく、新しい時代に合わせて受け継いでいく。その姿勢に共感した金澤さんは、「この物語を旅人に届けたい」と企画を提案したという。
宇佐美さんもまた、「どこで、誰が、どんな思いで作っているのか」という背景まで伝えようとする界の「手業のひととき」に共感したそうだ。
職人に学ぶ手仕事
工房での体験は、最初に宇佐美さんから臼杵焼復興の物語を聞き、職人の仕事を見学する。石膏(せっこう)型に粘土を押し当て、削りや模様付けを重ねて器を仕上げる「型打ち」は、臼杵焼の特徴的な製法の一つ。一枚ごとに生まれるわずかなゆがみや厚みの違いが、手仕事のぬくもりとなり、料理を引き立てる器へと育つ。
体験では、より多くの人が楽しめるよう、型打ちではなく手びねりで製作する。モチーフは、界 別府オリジナルのミヤマキリシマの花。木べらや箸を使い、「押す」「転がす」「線を入れる」という工程を繰り返しながら、一枚一枚花びらを形づくる。親指、人差し指、中指の使い方や力加減まで職人が丁寧に教えてくれるので、初めてでも安心だ。完成した作品は工房で乾燥・焼成され、焼き上げは作家が担当。世界に一つの作品が、後日、自宅に届く。

キーホルダーのモチーフは別府・鶴見岳に自生するミヤマキリシマ

教えてくださったのは…
「うすき皿山」代表取締役、陶芸家 宇佐美裕之さん
大分県臼杵市出身。臼杵磨崖仏門前の食事処に育ち、大阪で陶芸を学んで帰郷。江戸時代後期に途絶えた「末広焼」の記録をもとに、「臼杵焼」を再興。料理を手掛ける妻・友香さんとともに、器と食が織りなす臼杵の魅力を伝えている。


期間:通年(一部除外日あり)
開催時間・場所:チェックイン当日14時〜15時30分、「うすき皿山」工房にて現地集合・解散
料金:1人1万1000円(税込み、宿泊費別)
定員:各日1組1人〜4人
含まれるもの:工房見学、キーホルダー、臼杵焼での夕食
7日前までに「界 別府」ホームページで予約
ギャラリー皿山&皿山喫茶室

ギャラリーにはカフェも併設。臼杵焼の器でケーキを味わい、流麗な持ち手のカップで中国茶などが楽しめる

おしゃれなギャラリーには、暮らしを彩る臼杵焼が並ぶ
文/のかたあきこ 撮影/木下清隆
【手わざの日本旅】第1回 界 別府 臼杵焼の陶芸家から学ぶ、オリジナルキーホルダー製作(2)<大分・別府温泉>へ続く
界 別府
住所:大分県別府市北浜2-14-29
TEL:050-3134-8092(界予約センター)
交通:JR日豊本線別府駅から徒歩約10分/東九州道別府ICから約10分/大分空港から車で約45分
公式サイトは👉こちら
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2026年9月号)
(Web掲載:2026年8月7日)


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