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【手わざの日本旅】第2回 界 玉造 神聖な鍛冶場で打つ、一生モノの鍛造トレイづくり(1)<島根・玉造温泉>

場所
> 松江市
【手わざの日本旅】第2回 界 玉造 神聖な鍛冶場で打つ、一生モノの鍛造トレイづくり(1)<島根・玉造温泉>

普段は入れない鍛冶場で自ら鉄を叩き、鍛造トレイを作成。左から筆者、界 玉造の栂崎さん、「鍛冶工房 弘光」11代目の小藤さん

出雲鍛造にチャレンジ

出雲空港から宍道(しんじ)湖畔を走ること約40分。メノウの産地として知られる花仙山(かせんざん)の麓、玉湯川沿いに広がるのが玉造温泉だ。

温泉街の中ほどにある「界 玉造」は、「いにしえの湯と出雲文化を遊ぶ宿」がコンセプト。全客室に露天風呂を備え、やわらかな肌触りのアルカリ性単純温泉を楽しめる。館内では石見神楽(いわみかぐら)や日本酒、茶の湯など、出雲に受け継がれてきた文化に触れられる。

そんな界 玉造で、二つ目の「手業のひととき」として始まったのが、たたら製鉄と出雲(いずも)鍛造をテーマにした体験である。藤村悠司総支配人は、企画の背景をこう話す。

「界 玉造では石見神楽や日本酒など、出雲文化を中心としたおもてなしを行ってきました。今回の体験では、たたら製鉄から生まれた文化を通して、神話の時代から継承されてきた出雲の文化を、より身近に感じていただけたらと思っています」

担当スタッフの栂崎花音(とがさきかのん)さんによれば、たたら製鉄を知ることは、鉄の歴史を学ぶことにとどまらないという。宍道湖や斐伊(ひい)川、山林、日本酒、神話など、今の島根を形作る文化や風土へと興味が広がっていく。

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作成した鍛造トレイ

神聖な鍛冶場へ

今回の旅は、工房から始まった。出雲空港から車で約1時間。たたら製鉄の文化が息づく島根県東部の安来(やすぎ)市に「鍛冶工房 弘光(ひろみつ)」はある。

工房の前を通る道は、かつて鉄を運ぶ「たたら街道」だった。江戸後期から明治期にかけて、国内で使われる鉄の多くが出雲で生産されていた。街道沿いには商家や歌舞伎小屋などが並び、人や物が行き交うにぎやかな場所だったという。

体験では、まず工房や地域の歴史について職人から話を聞く。

日本古来の鉄作りである「たたら製鉄」は、砂鉄と木炭を原料とし、人力で炉(ろ)に風を送りながら鉄を作る製法である。「たたら」は本来、炉に風を送る「ふいご」を指す。

日本では鉄鉱石が少なかった一方、砂鉄と豊かな森林資源に恵まれていた。土地にあるものを生かし、木炭を使って鉄を生み出す技術が育まれたのだ。その過程で作られた良質な玉鋼(たまはがね)は日本刀の材料としても使われてきた。たたら製鉄は島根の自然と人の知恵が育んだ文化だといえる。

専用のつなぎに着替えたら、鍛冶場へ向かう。作業前には、鉄を扱う職人たちの守護神である金屋子神(かなやこかみ)に、製作の無事を祈る。体験を教えるのは、「鍛冶工房 弘光」の11代目、小藤宗相(ことうしゅうすけ)さんだ。機械による量産に頼らず、昔ながらの技法を生かしながら、燭台(しょくだい)や照明、花器、器など、現代の暮らしに合う鉄の道具を家族で製作している。

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たたら製鉄の歴史を受け継ぐ安来市の工房で手仕事の真髄にふれる

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神聖な鍛冶場

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炉は1000度以上。熱気に包まれる中、火花を散らし鉄を叩く

炉の中で熱した鉄板が赤くなったら、金床に置き、金槌(かなづち)を振り下ろす。強い力が必要なように思えるが、大切なのは力任せに叩くことではなかった。鉄が熱いうちに、狙った場所へ正確に金槌を当てること。温度や形を見ながら打ち分けていく。 鉄板を何度も熱して打ち、炉へ戻す。その繰り返しで鉄板は少しずつ器へと姿を変えていく。

小藤さんは、完成品には作り手の個性が表れるという。きっちりと形を整える人もいれば、鉄のゆがみをあえて残す人もいる。どこまで打ち、どの段階で完成とするのか。その判断も作り手に委ねられる。使い込むうちに色や質感が変化していくのも、鉄ならではの楽しみだ。

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教えてくださったのは…

鍛冶工房 弘光 小藤宗相さん

島根県安来市生まれ。信州大学卒業後、企業や美術館勤務を経て家業の鍛冶工房へ。江戸時代から続く刀鍛冶の技法を礎に、「用の美」を追求した鉄作品を製作。その数は数百種類に及ぶ。使うほどに価値が深まる手仕事を現代に伝えている。

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期間:2026年9月2日〜11月26日(期間中の水・木曜開催)
開催時間・場所:チェックイン日の13時〜14時45分、鍛冶工房 弘光にて現地集合・解散
料金:1人1万8000円(税込み、宿泊費別)
定員:各日2組1〜4人
含まれるもの:工房見学、鍛造トレイ製作

7日前までに「界 玉造」ホームページで予約

鍛冶工房 弘光ギャラリー

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燭台や行灯、風鈴、フライパンなどを展示販売

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刀鍛冶の技を生かした鉄作品が並び、和洋の空間に美しく映える

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文/のかたあきこ 撮影/木下清隆

 【手わざの日本旅】第2回 界 玉造 神聖な鍛冶場で打つ、一生モノの鍛造トレイづくり(2)<島根・玉造温泉>へ続く


界 玉造
住所:島根県松江市玉湯町玉造1237
TEL:050-3134-8092(界予約センター)
交通:JR山陰本線玉造温泉駅から車約5分/山陰道松江玉造ICから約10分/出雲空港から車で約40分
公式サイトは👉こちら

※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2026年10月号)
(Web掲載:2026年9月1日)


Writer

のかたあきこ さん

旅ジャーナリスト・編集者。町、人、温泉、宿をテーマに30年以上、全国を取材。テレビ東京「ソロモン流」で「旅の賢人」と紹介される。宿本・旅美人SPECIAL編集長、温泉ソムリエアンバサダー、銭湯検定1級、日本茶インストラクター、健康マスター普及認定講師、サウナ・スパプロフェッショナル、日本エコツーリズム協会会員。福岡県出身(福岡検定・上級)。著書に『手わざの日本旅 星野リゾート温泉旅館「界」の楽しみ方』、『温泉街リノベーション 公民連携&星野リゾートで挑む「オソト天国」長門湯本温泉の10年』(ともに旅行読売出版社)。

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