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【手わざの日本旅】第2回 界 玉造 神聖な鍛冶場で打つ、一生モノの鍛造トレイづくり(2)<島根・玉造温泉>

場所
> 松江市
【手わざの日本旅】第2回 界 玉造 神聖な鍛冶場で打つ、一生モノの鍛造トレイづくり(2)<島根・玉造温泉>

大浴場。玉造温泉は『出雲国風土記』にも登場する歴史ある名湯

鉄から広がる物語

【手わざの日本旅】第2回 界 玉造 神聖な鍛冶場で打つ、一生モノの鍛造トレイづくり(1)<島根・玉造温泉>から続く

長い年月、職人が仕事を続けてきた鍛冶場には、展示を見るだけでは分からない空気が漂う。金屋子神が見守る築120年以上の工房。ここは、火と鉄に向き合い、安全とよい仕事を願い続けてきた場所でもある。使い込まれた道具、炉の熱、鉄を打つ音。工房に入っただけで鳥肌が立つほど心を動かされる人も多いという。

栂崎さんは、鉄を叩くひとときについて「座禅のように、無心になれる」と話す。参加者からは「時間との向き合い方が変わった」という感想も寄せられたそうだ。

界 玉造と小藤さんとの関係は、この体験から始まったものではない。小藤さんは、島根の若手工芸職人たちによる「シマネRプロジェクト」のメンバーとして、15年ほど前から界 玉造の客室作りにも関わってきた。かつて設けられていた客室「出雲匠の間」には、組子細工や石州(せきしゅう)和紙、吹きガラス、木工、鉄工芸など、島根の工芸が集められ、小藤さんの燭台や行灯(あんどん)も空間を彩っていた。

現在の手業のひとときプランで利用できる客室には、小藤さんの燭台や花器が置かれている。また、24ある全ての客室の棚の取っ手、そしてキーホルダーには出雲鍛造が使われている。工房で体験をした後、宿で実際に職人の作品に触れることで、鉄の重みや手触り、暮らしでの使われ方がより身近に感じられる。

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ご当地部屋「玉湯の間」。手業プランでは、燭台や花器といった鍛造作品を用意

宿でたどる出雲文化

工房での体験を終え、界 玉造へ。吹き抜けのロビーの先には、1938年から残る日本庭園が広がり、館内にはライブラリーや湯上がり処、茶室なども備わる。

たたら製鉄は、島根の地形や食文化とも深く関わってきた。山を切り崩し、水路を使って土砂から砂鉄を選別する方法を鉄穴(かんな)流しという。その跡地は、後に棚田や農地として利用され、米作りにもつながった。

界 玉造の会席料理では、こうした背景を「宝楽盛り」の器で表している。器の意匠は、鉄穴流しの跡地に作られた棚田がモチーフという。

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会席料理の「宝楽盛り」には、砂鉄採取の「鉄穴流し」で生まれた棚田をモチーフにした器を使用

食事と一緒に楽しみたいのが地酒だ。島根は日本酒発祥の地の一つ。酒米と良質な水に恵まれ、出雲杜氏(とうじ)の技を受け継ぐ酒蔵も多い。日本酒BARを担当するスタッフ全員が「地酒マイスター」の資格を取得し、この土地の魅力を自分たちの言葉で伝えている。

界 玉造で最初に始まった「手業のひととき」も、日本酒をテーマにした体験だった。現在は、宿の中で学ぶだけでなく、現地の酒蔵を訪ねる内容へと進化している。

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リニューアルした日本酒BAR。県内30蔵の酒を、県内窯元の民藝の酒器で味わえる

夕食後には、ご当地楽(がく)「石見神楽」も楽しめる。たたら製鉄を入り口に、鍛冶、地形、農業、日本酒、神話の世界へ。別々に見える出雲の文化が、滞在の中でつながっていく。

界 玉造の「手業のひととき」体験は、鉄のトレイをつくるだけではない。工房で職人に出会い、宿で鉄の道具や料理、日本酒、神楽を楽しむ。スタッフと職人の案内による「たたら製鉄」を通して、出雲という土地が育んできた文化をたどる旅だ。

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毎夜、ご当地楽「石見神楽」の演目「大蛇」を披露

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客室露天風呂には出雲鍛造の行灯

「界」で温泉文化を学ぶ

温泉文化いろは「風土記が綴る、至福の美肌体験」

奈良時代に編纂(へんさん)された『出雲国風土記』に「神の湯」と記され、「一たび濯(すす)げば形容端正しく(姿かたちが美しく整う)」とうたわれた玉造温泉。スタッフの解説とともにメノウと温泉の関わりや美肌の湯の歴史を学び、メノウのカッサでマッサージを行い、入浴効果を高める。

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開催期間:通年。チェックイン当日16時〜、18時〜、所要20分、界 玉造・湯上がり処
料金:無料
定員:各回最大8人
予約:不要 
※参加者には1グループに1冊「お湯印帳」を進呈

Pickup!

地酒大好きスタッフ!鈴木奈美さん

界 玉造で12年勤務する鈴木奈美さん。日本酒が苦手だったが、島根の地酒に魅了され、その面白さを伝えたい一心で、日本酒をテーマにした「手業のひととき」や日本酒BARを企画。さらに玉造温泉で始めた「地酒祭り」は3年で春の恒例イベントへと育ち、今では蔵元や旅館、商店が力を合わせる温泉街の名物となり、多くの来場者でにぎわう。

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文/のかたあきこ 撮影/木下清隆


界 玉造
住所:島根県松江市玉湯町玉造1237
TEL:050-3134-8092(界予約センター)
交通:JR山陰本線玉造温泉駅から車約5分/山陰道松江玉造ICから約10分/出雲空港から車で約40分
公式サイトは👉こちら

※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2026年10月号)
(Web掲載:2026年9月1日)


Writer

のかたあきこ さん

旅ジャーナリスト・編集者。町、人、温泉、宿をテーマに30年以上、全国を取材。テレビ東京「ソロモン流」で「旅の賢人」と紹介される。宿本・旅美人SPECIAL編集長、温泉ソムリエアンバサダー、銭湯検定1級、日本茶インストラクター、健康マスター普及認定講師、サウナ・スパプロフェッショナル、日本エコツーリズム協会会員。福岡県出身(福岡検定・上級)。著書に『手わざの日本旅 星野リゾート温泉旅館「界」の楽しみ方』、『温泉街リノベーション 公民連携&星野リゾートで挑む「オソト天国」長門湯本温泉の10年』(ともに旅行読売出版社)。

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