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【手わざの日本旅】第3回 界 奥飛騨 匠の心と技に触れる一つだけの家具作り(1)<岐阜・平湯温泉>

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 岐阜県
> 高山市
【手わざの日本旅】第3回 界 奥飛騨 匠の心と技に触れる一つだけの家具作り(1)<岐阜・平湯温泉>

界 奥飛騨の全室がご当地部屋。曲木をモチーフにしたヘッドボードには、飛騨の広葉樹(ブナ、ナラ、タモ、桜など)があしらわれている

飛騨の木の文化を体感する

界 奥飛騨は、奥飛騨温泉郷の一つ、平湯温泉にある。標高3000メートル級の北アルプスに囲まれるが、アクセスは意外に便利。新宿から高速バスで約4時間、平湯バスターミナルから歩いて5分ほどで着く。

宿のテーマは「山岳温泉にめざめ、飛騨デザインに寛(くつろ)ぐ宿」。山の傾斜を生かした敷地に、客室棟や湯小屋棟などが点在し、中庭には湯の川が流れる。全49室はご当地部屋「飛騨MOKU(もく)の間」。曲木(まげき)をモチーフにしたヘッドボードや、家具メーカー・飛驒産業の曲木チェア、飛騨春慶のアートなど、飛騨の木の文化に触れられる。

毎日行われるご当地楽(がく)は「飛騨の匠体験」だ。飛騨には古くから木工技術が伝わり、平安京の造営にも飛騨の木工職人が携わったとされる。彼らは「飛騨の匠」と呼ばれた。

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客室ではロッキングチェアをはじめ飛驒産業の椅子と出合える

その歴史を教わった後、いよいよ曲木に挑戦する。水分を含ませて蒸した厚さ3ミリほどの木の板を、型に沿わせ少しずつ力を加えていく。これが、思ったより難しい。一気に曲げると木が割れてしまう。ゆっくり、均等に力をかけていく。完成した曲木は、界オリジナルの風呂敷と組み合わせてバッグの持ち手になる。この「木を曲げるって難しい」という感覚は、翌日まで手に残っていた。

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ご当地楽で曲木のハンドル作り

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「手業のひととき」では、ヤスリや蜜ろうワックスなど手入れ道具も客室に用意

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大浴場で「あつ湯」「ぬる湯」を堪能

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朝食は干し野菜と豚肉の味噌(みそ)鍋や、川魚の甘露煮「ぼっか煮」といった飛騨の味わいが満載(写真はイメージ)

森の木を、どう生かすか

翌朝はいよいよ「手業のひととき」の体験だ。宿を出発し、まずは車で50分の飛驒産業の本社工場へ。1脚の椅子(いす)ができるまでを見学する。

飛騨の木工文化の源をたどれば森に行き着く。山深く雪の多い飛騨にはブナやナラなどの木々が育ち、人々は古くから木を建築や生活道具に使ってきた。その木をどう生かすか。飛驒産業の歴史もここから始まった。創業は1920年。地域に豊富にありながら活用されていなかったブナに着目し、地域の有志が曲木の技術を取り入れて椅子作りを始めたという。

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飛驒産業本社工場のスタッフ

楽しみにしていた曲木の工程を見学する。蒸して軟らかくした太い木材を型に入れ、機械を使いながら大きく曲げていく。前日、わずか3ミリの木の板に苦戦したばかりだ。それだけに、厚く硬そうな木がみるみる美しい曲線を帯びる様子に、思わず見入った。1本1本違う木の、どこにどれほどの力を加えるか。木を見極める人の経験が欠かせないという。

工場でもう一つ驚いたのが、人の多さだ。「工場では約450人の社員が働いていて、その半分ほどが家具作りに従事しています」と広報の平田優香さんが説明する。

木を乾燥させる人、切る人、曲げる人、削る人、磨く人、組み立てる人、塗装する人、検査する人、発送する人。機械化が進む一方で、たくさんの人が自分の目で確かめ、1脚の椅子を作り上げている。「手わざ」と聞くと、名人一人の華麗な技を思い浮かべがちだ。でも、1脚の椅子には、こんなにも多くの人の手が関わっている。

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家具作りは切り出した木材をじっくり乾かす屋外の天然乾燥場から始まる

さらに心に残ったのが、「これまで生かされてこなかった木を生かす」という飛驒産業のものづくりだ。

創業の約80年後には、高級家具には不向きとされ、捨てられていた節のある木に、現会長の岡田贊三(さんぞう)さんが着目したそうだ。木に節があるのは、本来とても自然なこと。「100人の内、一人でも気に入ってくれる人がいるかもしれない」と節をあえて生かした商品を開発。それらは人気家具へ育ったという。

近年は、軟らかく家具には向かないとされてきた国産杉も、圧縮する技術によって生かしている。「使えない」で終わらせず、「どうすれば使えるか」を考える。

古代の「飛騨の匠」から、近代に取り入れられた曲木、そして現代の家具作りへ。昔の技をそのまま守るだけではなく、新しい技術や発想を加え、飛騨の木の文化は続いている。

「界」で温泉文化を学ぶ

温泉文化いろは「山岳温泉にめざめる第一歩」

足湯につかりながら、温泉の歴史や泉質、入浴法を学ぶ「温泉文化いろは」を毎日開催。界の湯守がクイズを交え、豊富な湯量を誇る平湯温泉の特徴を楽しく紹介する。温泉への感謝と無病息災を願う平湯神社の「湯花(ゆばな)祭り」に倣った“お湯シャワー”も体験。終了後は希望者と温泉街へ出かけ、源泉で温泉卵をつくる「つるや商店」へ。白身はとろとろ、黄身は固めという名物「はんたい玉子」を味わえる。

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開催期間:通年。チェックイン当日16時10分〜、翌日9時10分〜 
料金:無料 
予約:不要

文/のかたあきこ 撮影/木下清隆

【手わざの日本旅】第3回 界 奥飛騨 匠の心と技に触れる一つだけの家具作り(2)<岐阜・平湯温泉>へ続く


界 奥飛騨
住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯138
TEL:050-3134-8092(界予約センター)
交通:JR篠ノ井線松本駅からバス約1時間30分、JR高山本線高山駅からバス約1時間/中部縦貫道平湯ICから約5分、東海北陸道高山ICから約50分
公式サイトは👉こちら

※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2026年11月号)
(Web掲載:2026年9月30日)


Writer

のかたあきこ さん

旅ジャーナリスト・編集者。町、人、温泉、宿をテーマに30年以上、全国を取材。テレビ東京「ソロモン流」で「旅の賢人」と紹介される。宿本・旅美人SPECIAL編集長、温泉ソムリエアンバサダー、銭湯検定1級、日本茶インストラクター、健康マスター普及認定講師、サウナ・スパプロフェッショナル、日本エコツーリズム協会会員。福岡県出身(福岡検定・上級)。著書に『手わざの日本旅 星野リゾート温泉旅館「界」の楽しみ方』、『温泉街リノベーション 公民連携&星野リゾートで挑む「オソト天国」長門湯本温泉の10年』(ともに旅行読売出版社)。

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