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源泉2種をかけ流す湯宿で紅葉と硫黄の香りに包まれて(2)

場所
> 福島市
見頃
10月
源泉2種をかけ流す湯宿で紅葉と硫黄の香りに包まれて(2)

推定樹齢800年以上のヒノキの輪切りをくりぬいた展望露天風呂(写真/株式会社リバティー)



湯巡りしながら紅葉観賞

5湯6軒からなる土湯峠温泉郷。見渡す限り山、山、山。ただただ湯に憩い、自然を愛でる時間を過ごすには最高の地にある。

中でも秘湯中の秘湯として人気の高い宿が、水戸屋旅館。名物の混浴の渓流露天風呂のほか、山々を見渡す混浴の展望露天風呂もある。展望露天風呂は16時~20時が女性専用タイムで、女性用の湯浴み着も売っている。他に男女別大浴場にも露天風呂を併設し、23時で男女入れ替えとなるため宿にいながら湯巡りを楽しめる。

大浴場には湯船が二つあり、木造りの方には無色透明の単純温泉をかけ流している。湯に身を沈めると、ふわっと硫黄の香り。肌に付いていた硫黄成分が染み出たようだ。

外へ出ると岩造りの露天風呂もある。先ほどの渓流露天風呂より高所にあるため、どこまでも深い山峡を見渡せる。峡谷を渡る涼やかな風が、木々の香りを運んでくる。彩色豊かな秋も深まれば、何も考えずに1時間くらいは眺めていられそうだ。


秋になると大浴場に併設の露天風呂からこんな景色を眺められる(写真/株式会社リバティー)
秋になると大浴場に併設の露天風呂からこんな景色を眺められる(写真/株式会社リバティー)

滋味感じる料理に酒も進む

部屋で食べる夕食は、1830分からお願いをしておいた。山川の幸を盛り込んだ田舎料理で、塩焼きのニジマスは渓流とつながった敷地内の池で先ほどまで泳いでいた。身はふっくらと甘く、ほんのりまぶされた塩加減がいい。ウド、ワラビ、ヒメタケなど近くで採った山菜は、天ぷらやあえ物、お浸しなどで出される。左党にはこれだけでも十分な品ぞろえだが、福島県産の牛しゃぶやニジマスの刺し身まである。一品一品の異なる滋味に、重ねる杯の味まで違って感じられる。


山の宿らしい品々が並ぶ夕食の一例
山の宿らしい品々が並ぶ夕食の一例

メタケイ酸豊富な源泉パワーか!?

翌朝、顔を洗った時に驚いた。花粉皮膚炎で目の下の頬が荒れ、かゆみのあったところがスッキリ! 3か月近くも悩まされてきたのが、一夜にして解消された。完治とまではいかないが、かゆみがないだけでもありがたい。メタケイ酸の豊富な源泉のおかげか。理由は分からないが、源泉成分が自分に合っていたのだろう。


のんびり優雅な気分で朝湯を満喫
のんびり優雅な気分で朝湯を満喫

苦労を見せない心温かい女将さん

身も心もスッキリほぐれたことを伝えると、「20室の小さな宿で、家族を中心に5人で切り盛りしていますから、行き届かないことがまだまだ多くて」と女将さんはひかえめに話す。

紅葉が終わると、積雪3㍍を超える豪雪地ゆえ春まで冬季休業になる。大自然に合わせて営む宿だから、苦労は多いようだ。そんな様子を見せず、低姿勢で笑顔を絶やさない女将さん。その一生懸命さが渓谷の木々にも伝わるかのように、毎年、秋になると精いっぱいの彩りで湯客を迎えてくれる。

 文/松田秀雄


客室は6畳から12.5畳までさまざまある
客室は6畳から12.5畳までさまざまある

<施設データ>
水戸屋旅館
℡0242643316

https://mitoya-makukawa.com/



(出典 「旅行読売」2019年10月号)

(ウェブ掲載 2019年10月1日)

Writer

松田秀雄 さん

全国を取材で巡ること約30年。得意なテーマは「温泉」で、北海道・稚内温泉から沖縄・西表島温泉まで500湯・2000軒以上は訪れている。特に泉質は硫黄泉が好きで、湯上りに体を拭かず自然乾燥させるのがモットー。帰宅後、体に付着した硫黄成分が湯船に染み出して白濁する様子を見るのが好き。最近は飲泉への興味が強く、「焼酎割に適した温泉は?」を掲げて最高の一杯を探し中。旅行読売出版社・編集部に所属。

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