北アルプス山麓の秘湯は紅葉一色
人気紅葉スポットに湧く葛温泉
長野県北西部、北アルプスの麓にある大町市の中心部から、高瀬川の上流へと向かう。大町、七倉、高瀬の三つのダムが連なる高瀬渓谷は、県内でも有数の紅葉名所。例年の見頃は10月中旬~11月上旬で、ドライブやハイキングで紅葉狩りを楽しむ観光客は多い。
大町ダムと七倉ダムの中ほどに湧くのが、開湯400年の葛(くず)温泉。3軒の宿が点在し、最奥にあるのが髙瀨舘だ。
すべての湯船に源泉かけ流し
標高1000㍍、渓谷の木々に囲まれてひっそりとたたずむ全13室の宿。槍ヶ岳へと続く「北アルプス裏銀座縦走コース」の起点に近く、登山客にも親しまれている。 最大の魅力は、山間の四季を肌で感じられる露天風呂だろう。川のほとりから湧く源泉が2本あり、露天風呂、内風呂、貸切家族風呂のすべてにかけ流している。
「源泉は90度と高いので、適温になるよう大白沢の沢水を加えています」と主人の上條慶一郎さんと語る。
大自然と一つになる夢心地
秋の露天風呂では、カエデやサクラ、ブナといった渓谷の紅葉が美しい。湯口から勢いよく流れ落ちる湯滝の音を聞きながら、新鮮な湯に身を浸せば、自然と一体化するような感覚を味わえる。日帰り入浴が人気で、市外から通う常連客がいる、というのも納得だ。
キノコ採り名人の創作料理
イワナの塩焼きをはじめ、信州牛のしゃぶしゃぶ、山菜や野菜の天ぷら……。夕食は、山川の幸を盛り込んだ郷土料理だ。東京の割烹で修業した上條さんは、山菜やキノコ採りの名人でもある。秋はキノコや、沢水で炊いた新米のご飯がおいしい。
色彩豊かな渓谷散策を
秋の周辺観光は、ダム湖での紅葉狩りへ。大町ダム(龍神湖)の右岸には遊歩道があり、往復約1時間の散策を楽しめる。広場の紅葉が見事な七倉ダムの先はマイカー規制があるので、高瀬ダムまで訪れるなら通行期間・時間が決められた特定タクシーを利用する。高瀬ダムの展望台・槍見台からの眺望は、コバルトブルーの水面と錦に染まる木々のコントラストが印象的で、わざわざ訪れる価値はある。
文/内山沙希子
(出典 「旅行読売」2019年10月号)
(ウェブ掲載 2019年10月1日)