泊食分離が“草津通”
泊食分離のニーズが急増
観光客でにぎわう温泉街に来ると、こちらの気分も高まる。草津の魅力は数多いが、温泉にだけ頼ることなく、日々前進しているのも良いところ。だから何度来ても新鮮な出会いがある。近年は夜のライトアップが話題で、湯畑では立ち込める湯煙が幕となり、紫色の照明に揺らめく幻想的な様子を見せている。
これまでの草津では2食付きの宿泊が定番だったが、夕食なしのプランを用意する宿が増えたのも最近の傾向だ。泊食分離に慣れた海外からの旅行者増も影響しているが、旅慣れた日本人や手軽に泊まりたい若者のニーズに応えてのこと。荷を解いた旅館「湯畑の宿 佳乃や」もそうで、素泊まり専門宿である。
客にとって使い勝手の良い宿
「お客様の旅の自由度や選択肢を広げたくて、カジュアル旅籠をテーマに開業しました。お客様にとって、使い勝手の良い宿でありたい」と語る社長の田村佳之さん。早くも年間稼働率80%を超える。
全14室で、ソファやロッキングチェアを配したラウンジではコーヒーもアイスキャンディーも無料。飲食物の持ち込みは自由で、弁当を買って客室で食べてもいい。軽い朝食を無料で提供してくれるのもありがたい。バスタオル、作務衣、歯ブラシなどはそろい、ふらっと泊まりに来ても快適に過ごせてしまう。
「宿のスタッフはコンシェルジュでもあり、夕食におすすめの店も案内します」と田村さん。チェックイン時に渡された宿の利用案内書にも、居酒屋、中華などジャンル別に店が記されていた。
気ままに共同湯へ、夕食へ
浴衣に着替え、散策用の湯かごにタオルを入れて温泉街へ。普通は夕食の時刻を気にしながら客は宿へ戻るため、夕方からが温泉街の一番落ち着く時間。西の河原露天風呂など日帰り温泉や、町中に点在する共同浴場も空いていて、湯巡りを楽しむのにもいい。
そのまま温泉街をぶらぶらしながら、気になった店の暖簾を気ままにくぐれるのも、泊食分離のいいところ。もちろん「佳乃や」では弁当を買って持ち込むのもいいので、外食をせずにコンビニエンスストアなどで夕食を買い込むのも一案である。
文/松田秀雄 写真/藤井勝彦
湯畑の宿 佳乃やの宿泊プランはこちらから
(出典 「旅行読売」2018年5月号)
(ウェブ掲載 2019年10月21日)