19世紀日本の紅葉、富士山、宮島……。オスマン帝国の写真コレクション(上)
「秋の紅葉景色、王子、東京」(ユルドゥズ宮殿写真コレクションから)
「トルコからやって来た19世紀の写真で日本の美しさを『発見』してください」。
トルコのミマル・シナン芸術大学のキャーミル・フラット教授は、東京都渋谷区のユヌス・エムレトルコ文化センターで11月7日まで開催中の「ユルドゥズ宮殿写真コレクション展」会場で、そう言ってほほえんだ。
オスマン帝国時代のトルコで1876年から33年間にわたってスルタンとして在位したアブデュルハミト2世は世界各国に写真家を送り、膨大な写真資料を集成したが、その中から選ばれた日本の写真90点が展示されている。
写真はモノクロで撮影されたが、素朴な感じで彩色されている。「秋の紅葉景色、王子、東京」と題された写真について、展示解説書の解説文は「“生きた芸術”…日本庭園」とのタイトルの一文を載せている。
解説文は「写真の大半は、力強く根がはった木々に覆われています」と描写している。「写真では、全てがまるで本来あるべき姿であるように、また全てが本来あるべき場所に収められています」とも述べている。トルコから来た写真家が、「自然の法則」に従って造園された日本庭園の美しさに感銘を受け、撮影している様子が目に浮かぶようだ。
宮島や鎌倉の大仏の写真も展示
日本三景の「宮島」(広島県)、「松島」(宮城県)、さらに、鎌倉の大仏の写真もある。
海に浮かぶ大鳥居や巨大な仏像は、地球の反対側からやってきた写真家の目にどう映っただろうか。
外国にもその名が知れ渡っていた「富士山」の写真も複数展示されている。
展示解説書には「富士山/アララト山」と題した項目がある。
そこでは「空に向かって伸びる山」について、「多くの文化で到達できない山頂、天空への旅また精神的な浄化の場所」となったと指摘している。トルコ東端にあるアララト山は古来神聖な山とされ、(旧約聖書に出てくる)「ノアの箱船」が流れ着いた場所だとされる。
解説書は「アララト山と富士山は、両国の芸術においてインスピレーションの源」でもあるとしている。
展示についての問い合わせはユヌス・エムレトルコ文化センターTEL:03-6452-9258
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