【旅する喫茶店】喫茶マロン(青森)
たくさんの古時計が掛けられた店内
北国のノスタルジック喫茶
東北新幹線の待ち時間、小雨降る青森市街を歩いて、県庁通りにある喫茶マロンの階段を上がった。2階店内には、古時計がいくつも掛かり、色あせたペコちゃん人形が並んでいる。古いコーヒーミル、ランタン、荷車の車輪なども置かれ、喫茶店というより“コーヒー香る古道具屋”といった不思議な趣がある。
「朝早く開くのはビジネスマンに利用してほしいから。県庁の常連さんも多いです」と店長の松井孝導さん。1970年に店を始めた父に頼まれ、東京からUターンしたという松井さんが跡を継ぎ、今はほぼ毎日、妻とともに店に立つ。
「喫茶店のマッチが好きで、昔は集めて回ったものですが、作る店が減りましたね。市内の喫茶店自体、最盛期の5分の1くらい」と松井さん。骨董品集めの理由は「好きなものに囲まれていると落ち着くから」と照れたように言う。ちなみにマロンでももうマッチは作っていない。
ひき肉入りの名物ジャマイカンカレーは、タマネギの甘みが優しい味わい。ゆで卵と福神漬が添えられ意外に和風だ。食後、自家焙煎コーヒーを飲むと体が温まり、長居の誘惑にかられたが、電車の時刻を思い出し、後ろ髪をひかれながら店を出た。地元の人に愛されるこんな店にこそ、旅する者として、長く残ってほしいと思う。
文・写真/福崎圭介
喫茶マロン
住所:青森県青森市安方2-6-7
交通:奥羽線・津軽線・青い森鉄道青森駅から徒歩12分
喫煙:不可
TEL017-722-4575
(出典 「旅行読売」2014年11月号)
(ウェブ掲載 2020年3月6日)