【旅する喫茶店】book cafe 火星の庭(仙台)
天井まで届く本棚に古本がぎっしり。本好きな常連客も多い
欧州のブックカフェがモデル
あまりにユニークな店名のため、客から「由来は?」と聞かれることが多い。そんな時、店主の前野久美子さんは「これを読んで」と、一編の童話が印刷された紙を渡す。そこでは、「たくさんの本とお茶が楽しめる宇宙船『ニワ』が火星に着陸」している。
実はこの童話、2000年4 月に開店してしばらくして前野さんが「創作」した。「本当は、何となく思いついた」店名について説明する煩雑さから逃れる道具だ。そもそもこの店は古本屋を兼ねたブックカフェである。店主と客は、文学について語り合うことが多い。だから、「この童話に書いてある」と言って逃げても怪しまれない。
1990年秋、調理師として働いていたドイツでブックカフェに出会い、いりびたった。欧州各地でもブックカフェを回った経験が、自分の店を開く時に役立った。
深煎(い)りの豆を使ったコーヒー「スペースブレンド」は、深いコクがある。2杯目には、中くらいに煎った豆の「ガーデンブレンド」で、マイルドな味わい。フランス製チョコレートを使った濃厚な味わいのガトーショコラを口に運ぶと、次に飲むコーヒーの風味が際立つ。
香り高い「コーヒーの宇宙」の後には、文学、美術、郷土史などの「本の宇宙」に遊ぶこともできる。不思議で楽しみの尽きない「庭」だ。
文・写真/藤原善晴
住所:宮城県仙台市青葉区本町1-14-30-1F
TEL:022-716-5335
営業:11時~19時/火・水曜休
交通:地下鉄南北線勾当台(こうとうだい)公園駅から徒歩8分
(出典:月刊「旅行読売」2017年8月号)