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茶房ひし伊

場所
> 函館市
茶房ひし伊

調度品はアンティーク調。カウンター席の上が吹き抜けになっている

築100年の土蔵は静寂に包まれて

土蔵を改装して喫茶を営む茶房ひし伊は、函館山を望み港にも近い住宅街にある。蔵は1921年築というから、100年近くが過ぎている。もともとは質店で、質草を保管するために建てた蔵。もっと古い1905年築の土蔵が隣接し、こちらでは現在、きものの古着などを販売している。

喫茶を始めたのは1982年。2層になっていた内部に吹き抜けを設けたが、改装は必要最低限にとどめたようだ。柱や梁がむき出しになった空間に、小さな窓から差し込む光が柔らかな陰影を投げかけている。

席はカウンターに七つとテーブルが三つ。「靴を脱ぎ足をのばしておくつろぎください」(店長の入村里奈枝さん)と、2階には畳敷きの席もある。

ひし伊 2階
2階は喫茶店としては珍しい畳敷き
ひし伊 メニュー
あずき白玉のミニパフェとコーヒーのセット

土壁は余計な音を吸い込むのだろうか。コーヒーカップとソーサーが擦れる音、新しい客の靴音……今必要な音だけを残して。会話も小声で十分だ。

土壁は、長い歴史を見てきた。質店時代には石川啄木の妻・節子も訪れ、喫茶となってからはロケの合間に高倉健も姿を見せたという。健さんご指定のカウンターの隅っこ席を目当てに訪れるファンもいる。

土蔵の温もりに包まれて、もう少しここにいよう。

文/渡辺貴由 写真/川村勲


茶房ひし伊

住所:北海道函館市宝来町9-4

交通:函館市電宝来町停留所から徒歩2分

喫煙:不可

℡0138・27・3300

(出典 「旅行読売」2014年7月号)

(ウェブ掲載 2019年12月24日)

Writer

渡辺貴由 さん

栃木県栃木市生まれ。旅行情報誌制作に30年近く携わり、全国各地を取材。現在、月刊「旅行読売」編集部副編集長。プライベートではスケジュールに従った「旅行」より、行き当たりばったりの「旅」が好き。温泉が好きだが、硫黄泉が苦手なのが玉に瑕(きず)。自宅では愛犬チワワに癒やされる日々。