野鳥が舞う東京の離島、三宅島を一周
明治期の灯台が立つ伊豆岬は夕日スポットとしても人気(写真/三宅島観光協会)
火山島特有の雄大な景観を見て回る
早朝5時。東京竹芝桟橋を前夜に発った東海汽船が三宅島に到着した。東京から南へ約180㌔。6時間30分の船旅だ。島の玄関口は錆ヶ浜(さびがはま)港、三池港、伊ヶ谷(いがや)港の3か所があり、どの港に入るかは当日の風や波の状態で決まる。それに合わせて、ホテルや民宿のスタッフが港まで迎えに来てくれて、そのまま宿で朝食を食べたり、広間で休憩できる所も多い。
しばし仮眠を取り、元気になったところで島内一周に出発。三宅島観光協会には電動アシスト付きレンタサイクル(要予約)があり、走るだけなら3時間ほどで島を一周できる。
三宅島は約20年周期で噴火を繰り返してきた火山島だけに、すり鉢状の噴火口が望めるひょうたん山、溶岩や火山灰が積もった火砕丘の新鼻新山(にっぱなしんざん )など、火山活動でできた絶景が各所で見られる。なかでも、火山体験遊歩道は圧巻だ。
1983年に吹き出た溶岩流が集落を飲み込み学校の校舎でせき止められた約19ヘクタールの溶岩原を、木道から一望できる。荒涼とした溶岩原には草木が芽吹いていて、何度も破壊と再生を繰り返してきた島の歴史が感じられる。
希少な野鳥が暮らす火山湖の湖畔の森
島の南側にある火山湖の大路池の散策もおすすめだ。スダジイ、タブノキなどの照葉樹林が湖畔に広がり、アカコッコやタネコマドリ、イイジマムシクイなど希少な野鳥が数多く生息している。湖畔を一周する遊歩道を歩くと、溶岩原とは違った穏やかな景色に安堵する。野鳥のさえずりが聞こえ、小さな島ながらさまざまな景色に出合える。それも三宅島の魅力だ。
2日目は東京行きの船が13時35分に発つ。出発港も当日決まるので注意しよう。この日は錆ヶ浜港。船客待合所2階のサバサンドカフェで昼食にサバサンドを味わった。甘辛い蒲焼き風のゴマサバと島野菜をコッペパンで挟んだご当地グルメで、酸味の利いたオニオンドレッシングがよく合い、クセになる味だ。
1泊でも十分に楽しめるが、2泊、3 泊して隠れた魅力を探したくなった。
文・写真/内田 晃
三宅島
アクセス:東京竹芝桟橋から東海汽船6時間30分(1日1往復)。 調布飛行場から新中央航空50分(1日3往復)
問い合わせ:TEL04994・5・1144(三宅島観光協会)
(出典 「旅行読売」2019年8月号)
(ウェブ掲載 2020年8月6日)