紅葉に覆われる参道を抜けて明智光秀ゆかりの西教寺へ(1)
比叡山延暦寺の門前町を歩く
比叡(ひえい)山の東麓、琵琶湖の南西岸に面した大津市坂本は、古くから水運の要衝として、また比叡山延暦寺の門前町として栄えてきた。戦国時代には歴史の舞台となったこの町で、現在、「びわ湖大津・光秀大博覧会」が開催されている。メイン会場の一つである西教寺(さいきょうじ)は、明智光秀の菩提寺(ぼだいじ)であり、湖西随一の紅葉名所。この秋に訪ねたい古刹(こさつ)である。
西教寺は坂本地区北部の琵琶湖を望む高台に立つ。全国に400余りの末寺を有する、天台真盛宗の総本山だ。総門をくぐると、大木が参道の両側から枝を伸ばし、紅葉のトンネルを作っている。山内にはイロハモミジなど約200本の広葉樹が茂るが、最も見応えがあるのは150㍍ほど続く参道の紅葉だろう。左右に塔頭(たっちゅう)寺院が並ぶ緩やかな坂道を上ると、突き当たりに勅使門(ちょくしもん)、左手の階段の先に宗祖大師殿がある。
「大師殿の唐門から眺める琵琶湖の風景は、額に収められた絵のようですよ」と教えてくれたのは、西教寺社会部主事の中島敬瑞さん。色付く木々の向こうに、水面輝く琵琶湖と対岸の三上山が美しい。「唐門に施された彫刻の中には龍や獅子のほか、麒麟(きりん)の姿もあります」とのこと。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」のファンは探してみるといい。
護猿に守られた琵琶湖畔の明智家の菩提寺
国の重要文化財に指定されている本堂や客殿などの伽藍(がらん)は、回廊で結ばれている。本堂周辺や客殿庭園の紅葉も見ておきたい。西教寺は聖徳太子の開基と伝わるが、室町時代に再興したのは宗祖の真盛(しんせい)上人。1486年に入寺して不断念仏の道場とし、多くの信者を集めた。今も本堂からは念仏と鉦(かね)の音が聞こえてくる。
本堂には本尊の阿弥陀如来坐像が安置され、左手の外陣(がいじん)には鉦を叩こうとする猿の像がある。「身代わりの手白猿(ましら)」と呼ばれ、真盛上人の代わりに鉦を叩いたという伝説によるもの。坂本の寺社でサルは神仏の使いとされ、西教寺でも屋根の上などに「護猿(ござる)」が見られる。
10月1日~11月30日には、本堂内陣の聖徳太子坐像などの御厨子(みずし)を特別公開。10月1日~12月6日にはライトアップを行う。
文/内山沙希子 写真提供/びわ湖大津観光協会