山と海を感じる旅へ 秋色に染まる北陸
~富山編~
勝興寺の大イチョウ(高岡市)
秋は、紅葉に彩られた歴史ある寺院を訪れて、静かな時を過ごしたくなる。話題の新スポットを巡り、その土地が育む豊かな食と出会うのも、また旅の楽しさ。山も海も近い北陸ならではの秋景色を楽しみながら、心ときめく旅に出かけよう。
巨岩の不動明王に祈り、蘇った江戸期の大伽藍へ
立山連峰・剱岳の麓、上市町にある大岩山日石寺は、真言密宗の大本山。725年、この地を訪れた行基によって、一夜にして岩盤に不動明王が彫られたのが開基と伝わる。江戸時代初めには、加賀藩前田家の祈願所となった。
本尊の不動明王摩崖仏は、高さ3メートルを超える力強い姿と大きく目を見開いた表情から、迫力とともに、人間を見守る包容力が感じられる。古来、修行の場になってきた日石寺。今も年間を通して滝修行に訪れる人が多い。
境内や、脇を流れる大岩川の千巌渓では、10月下旬から11月半ばにモミジなどが色づく。
日石寺から西に車で約1時間、海に近い高岡市伏木にある勝興寺は、浄土真宗本願寺派の寺院だ。順徳天皇の勅願所としての歴史があり、加賀前田家とも縁が深い。
2021年3月、23年に及ぶ保存修理を終えて、江戸時代中・後期に建立された伽藍が復元された。約3万平方㍍の敷地に、唐門、本堂、大広間など12棟が建ち、いずれも国の重要文化財。隆盛を誇った名刹にふさわしい、壮麗な伽藍だ。書院には文化財展示室が設けられ、約3か月ごとに展示内容が入れ替わる。
境内の大イチョウは、10月下旬から11月下旬が見ごろだ。