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サンライズ瀬戸で絶景旅へ

場所
> 高松市
サンライズ瀬戸で絶景旅へ

瀬戸大橋を渡るサンライズ瀬戸。列車名を表すような朝日が昇ってきた

夜も朝も楽しむ夜汽車の車窓

東京駅21時23分。9番線ホームに、サンライズ瀬戸・出雲がゆっくりと入線してきた。

これから乗車するサンライズ瀬戸は、サンライズ出雲と手を繋ぎ、夜の東海道・山陽線を走って岡山で分割。前方7両の「瀬戸」は、瀬戸大橋を渡って高松へ。後方7両の「出雲(いずも)」は中国山地を越えて出雲市へ向かう。

サンライズ瀬戸・出雲に用いられる285系電車は、2階建ての構造。上下2段に並んだ窓からは、暖色系の車内灯がこぼれ、車両を眺めるだけで旅心がくすぐられる。

思えば「夜汽車で旅立つ」ことが、今や貴重になった。かつて、夜の東京駅9・10番線ホームは、西日本や九州各地へ旅立つ夜汽車が見られた。「ブルートレイン」と呼ばれた青い寝台特急は姿を消し、現在はサンライズ瀬戸・出雲が、日本で唯一の定期運行される夜汽車となっている。

伝統的なブルートレインの青に対し、1998年に誕生したサンライズは、ベージュと赤に塗り分けられている。朝霧と朝焼けをイメージしたという。夜を徹して走り、やがて朝を迎える。そんな長旅のドラマを表しているようだ。

入線
サンライズ出雲と併結した14 両編成で東京駅9番線ホームに入線
東京駅ホーム
東京駅で出発を待つサンライズ瀬戸
車体
9時間以上かけて高松駅を目指す

「シングル」の2階に寝転んで星を見上げる

21時50分、列車は東京駅を出発した。停車駅や列車設備に関する車内放送を耳にすれば、旅気分が盛り上がってくる。

サンライズ瀬戸は7両編成。指定席特急券で乗車できるノビノビ座席以外、全てが個室寝台だ。1人用B寝台個室「シングル」を中心に、少し安価なB寝台個室「ソロ」。2人用B寝台個室は「サンライズツイン」と2段ベッドの「シングルツイン」。そして最も贅沢なA寝台個室「シングルデラックス」で構成される。

個室寝台では、夜の車窓風景を眺められる。部屋の明かりを消せば、外の様子が驚くほどよく見えるのだ。ビルが立ち並ぶ都心の風景から、やがて丘の斜面に家々の明かりが見える郊外の住宅地へ。漆黒の河川敷や、墨絵のように見える山々も車窓後方へ流れてゆく。夜には夜の車窓風景があり、思いがけず楽しい。

車窓を眺めていると、小田原駅の手前で「深夜帯となりますので、これからの放送によるご案内は一時中断させていただきます」という、いかにも夜汽車らしいアナウンスが流れた。

熱海駅を出て丹那(たんな)トンネルを抜け、富士駅周辺の工場夜景をかすめると、新蒲原(しんかんばら)駅の手前で日付が変わった。室内灯を消したままベッドに寝転べば、窓から星空が見えた。B寝台個室「シングル」の2階は、窓が天井の縁にまで開いていて空がよく見える。明るい星が並ぶ星座はオリオン座だろう。冬を代表する星座に、季節の移ろいを感じた。

車窓
東京駅を出発、 高松駅まで約800㌔の旅が始まる
部屋3
B個室「シングル」
部屋2
2人用B個室「サンライズツイン」の室内
部屋1
豪華なA個室「シングルデラックス」
薄明の車窓
薄明から日の出まで、刻々と変化する朝の車窓は魅力的

瀬戸内海の朝日と出会う

目が覚めてブラインドを上げると、列車は薄明(はくめい)の中を軽快に走っていた。夜明け前から日の出までの車窓風景は特にドラマチックだ。山の稜線を縁取るように、空がオレンジ色に染まり、やがてグラデーションを描いて赤く色付き始める。そんなシーンを車窓に眺める。この日の山陽路は漂う朝霧が幻想的な風景を演出していた。

岡山駅でサンライズ出雲と別れ、児島駅を出るといよいよ瀬戸大橋に入る。瀬戸大橋とは、岡山県の児島と香川県の坂出を結ぶ複数の橋の総称だ。海峡部分は約10㌔。上段に道路、下段に鉄道が通る併用橋として世界一の長さを誇る。……と、そんなうんちくはさておき、橋上に飛び出した瞬間から朝日に輝く瀬戸内海が車窓いっぱいに広がった。海上に散らばる島々と、行き交う船舶のシルエットが浮かび上がる。サンライズ瀬戸は、この素晴らしい風景と出会うため、眠らずに暗い夜道を懸命に走ってきたのかもしれない。

四国に上陸し、坂出駅から18分で高松駅に到着。この後は「ことでん」に乗って、こんぴらさんに詣(もう)でようと思う。起点の高松築港(ちっこう)駅は、日本三大水城の一つ、高松城のお堀端にある。JR高松駅からは徒歩5分ほどだ。


文・写真/米屋こうじ


サンライズ瀬戸の関連ツアーはこちらから

朝の車窓
瀬戸大橋線の車窓から眺める朝日は最高のシーン。3号車にある「ミニサロン」は誰でも利用できる
高松駅
早朝、高松駅に到着したサンライズ瀬戸
ことでんと高松城
城壁を眺めて高松築港駅を出る、ことでんの電車
琴平駅
JR琴平駅。帰路はここから予讃線を利用した

●モデルコース(※時刻は掲載時のものです)

〈1日目〉

東京駅 21:50 発  サンライズ瀬戸 高松行き

熱海駅 23:23 発

〈2日目〉

静岡駅 0:20 発

姫路駅 5:25 発

岡山駅 6:27 着/6:31 発

高松駅 7:27 着

(徒歩5分)

高松築港駅 8:30 発 琴電琴平線 琴電琴平行き

仏生山駅 8:47 着/9:17 発 琴電琴平線 琴電琴平行き

琴電琴平駅 10:02 着


サンライズ瀬戸

サンライズ瀬戸は毎日1往復運転。(下り)東京21:50発~高松7 : 27 着(上り)高松21 : 26発~東京7:08着

※琴平まで延長運転あり(高松8:02発→琴平8:39着)

東京~高松間片道の料金は、B寝台個室「シングル」2万2540円、「ソロ」2万1440円、A寝台個室「シングルデラックス」2万8820円、ノビノビ座席1万5370円など。

※上記は掲載時の時刻、料金です。最新の時刻表などでご確認ください。

(出典 「旅行読売」2022年1月号)

(ウェブ掲載 2022年2月16日)


Writer

米屋こうじ さん

1968年、山形県生まれ。鉄道カメラマン。鉄道と人々の結び付きをテーマに日本と世界の鉄道を取材撮影。著書に『ひとたび てつたび』『I LOVE TRAIN-アジア・レイルライフ』(ころから)など

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