器のふるさとへ 益子焼
土の質感と伝統釉の美しさ 物作りの気風に若手も集う
ざらりとした粒を感じる土の質感、適度な重さ、安定感のある形。ぽってりとかかる釉薬(ゆうやく)がガラス質の艶を帯び、その色は深い黒や柿、青磁、温かみのある糠白(ぬかじろ)などが代表的。いかにも焼き物らしいどっしりとした姿が益子焼の良さだ。
笠間で陶芸の技を身につけた大塚啓三郎が江戸時代末期に窯を開いたのが始まりとされ、壺や鉢、土瓶などの日用雑器を中心に作られた。1924(大正13)年、陶芸家の巨匠でのちの人間国宝・濱田(はまだ)庄司が移り住んだのをきっかけに産地として一躍注目され、現在も若手の陶芸家が全国から集まる活気ある焼き物の里となっている。
陶芸に限らず染色や織物、木工などさまざまな分野の作家が暮らしており、濱田庄司記念益子参考館のある道祖土(さやど)地区から里山通り、城内坂通りを歩けばショップやギャラリー、カフェなどが立ち並ぶ。通常、春と秋に開催される益子陶器市は大変な賑わいだ。
近年は益子焼のイメージにとらわれない自由な作風で多彩な土や釉薬を使う作家も多く、またそれを柔軟に受け入れる包容力があるのも益子の魅力といえる。
【データ】
交通:水戸線下館駅から真岡鐵道約45分、益子駅下車
問い合わせ:0285・70・1120(益子町観光協会)
(出典 「旅行読売」2022年1月号)
(WEB掲載 2022年3月5日)