たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

【東京さんぽ】世田谷代田~東北沢 ‟下北線路街”を歩いてみた

場所
【東京さんぽ】世田谷代田~東北沢  ‟下北線路街”を歩いてみた

下北沢駅から世田谷代田駅に向かうと見えてくるBONUS TRACKの建物


鉄道跡地におしゃれな街が出現!

2020年にオープンした‟下北線路街”は、再開発で誕生した新しい‟街”。小田急小田原線の東北沢駅から世田谷代田駅間の地下化に伴い、全長約1.7キロの線路跡地を整備、商業施設や保育園、宿泊施設など、13の施設がある。かつて10年ほど、世田谷代田駅近くのアパートに住んでいた。どんなふうに変わったのだろう。興味津々で小田急線に乗った。

乗降客もまばらだった世田谷代田駅は、品のいい平屋の建物になっていた。その先に、草木の配されたきれいな道が続いている。線路があった頃を知っているせいだろうか。突然現れた静かな空間が、まるでおとぎ話のさんぽ道のようで、不思議な気分だ。

下北沢方面に歩き出すと、右手に突如広大な和風の建物が現われた。「由縁(ゆえん)別邸 代田」は、なんと温泉旅館。箱根芦ノ湖温泉の源泉を運んでいるという。割烹(かっぽう)や茶寮も併設しており、お茶と甘味付き(2850円~)、ランチ付き(5050 円~)など、日帰りで温泉利用もできる。

本の読める店 fuzkueの店内。最高の読書環境を目指す

しばらく歩くと、店舗・住宅一体型のSOHO(ソーホー)4棟と4店舗の商業棟からなる「BONUS TRACK(ボーナストラック)」が見えてくる。2階建ての小さな建物には、飲食店、物販店など、個性的な店が14軒入っている。

「本の読める店fuzkue(フヅクエ)」は、本を読んで過ごすことに特化した店。席料が設定されているので、気兼ねなく長居ができる。隣の「大浪漫商店」は、台湾のソウルフード魯肉飯(ルーローハン)専門スタンドだが、台湾のビールやファッション、音楽など、文化も紹介する。「発酵デパートメント」では、日本各地の発酵食品がそろうといった具合だ。1軒1軒のぞいているだけで、なんだか楽しくなってきた。

BONUS TRACK マネージャーの桜木彩佳さんは「住みながら働く長屋みたいな商店街です。施設内の広場で飲食もできるし、土日は何かしらイベントもやっているので、目的はなくても、面白いものに出合えると思います」と話す。

お粥とお酒 ANDON(BONUS TRACK)

メニューはおむすび、お粥、米スイーツなど。お粥は比内地鶏のうま味たっぷりのだし汁で炊く。夜はおでんなどつまみメニューもある。

11時~20時(日曜は8時〜18時)/不定休/TEL:03-5787-8559

比内地鶏団子のお粥

ADDA(アッダ/BONUS TRACK)

大阪のインドカレーとスリランカカレーの名店で修業した店長が、二つの店で学んだ技術と味をコラボさせて考案した絶品のカレー。

11時30分~16時、18時~21時(食事はつまみのみ)/無休(夜は月曜休)/TEL:なし

ADDAプレート

大浪漫商店(BONUS TRACK)

キャベツの漬け物をご飯に載せた台湾のソウルフード「魯肉飯」や台湾のビールなどを販売。台湾を入り口にアジアのポップカルチャーも紹介。

11時~22時30分/不定休/TEL:なし

魯肉飯

店主の顔が見える‟個店街”

下北沢駅の構内も大変身。駅の上には「シモキタエキウエ」というおしゃれな施設がオープン。カフェや居酒屋、雑貨店が並ぶ。下北沢一番街商店街、あずま通り商店街などが合流する一画に、ガラス張りの白い建物が見えた。
「店主の顔が見える〝個店街〟」と銘打った「reload(リロード)」だ。飲食店、眼鏡店、理髪店など24の店舗がある。

reloadのエントランス。ここでイベントなども行う

一見すると洗練されたビルに見えるが、歩いてみると大小さまざまな棟がつながるように設計されていて、広い屋外通路にはテラス席やベンチが置かれている。

1階のしもきた茶苑(さえん)大山は、下北沢で50年あまり営業してきた老舗の日本茶専門店。立ちのきのため、昨年reload に移転した。せっかくなら新しい店作りをしようと、日本茶スタンドを開設して抹茶ラテなどを販売。特製の新しいほうじ茶の焙煎(ばいせん)機も導入、自家焙煎のほうじ茶を販売している。

店主の大山泰成さんは「お得意様に加えて、新しいお客様も増えました。小さなお子さん連れで、東北沢のほうから歩いてくる方も多いですよ」と、うれしそうだ。

しもきた茶苑大山の喫茶スタンド
人気の抹茶ラテ

reload の企画開発を行う宮田應大(まさひろ)さんは「店主の顔が見えないチェーン店と違って、それぞれの店が温度感のある接客をしています。雑踏を巡るように歩いてみるのも楽しいと思います」と話す。

帰りがけに、「立てば天国」という2階の看板を見つけ、階段を上がると、なるほど立ち飲みの店だった。入り口を開け放した風通しのいいカウンターで一杯やる。
「お客さんは年齢も性別も住んでいる所もバラバラですが、常連さんも多いです」と店長の星野聖也さん。

さんぽしながら、その日の気分であちこち寄り道をする。下北線路街は、また訪れたくなるような、これまでにない新鮮な場所だった。

文/高崎真規子 写真/齋藤雄輝

立てば天国のカウンター。ひとり飲みの客も多く、つまみが小皿で出てくるのもうれしい

明天好好(ミンテンハオハオ/reload)

中目黒から移転した台湾スイーツと料理の店。豆花(とうふぁ)は豆腐のような食感のスイーツで、この店から人気に火がついた。

11時~18時/不定休/TEL:03-6452-3102

冬瓜豆花とパイナップルケーキ

由縁別邸 代田
TEL:03-5431-3101

本の読める店 fuzkue
12時~23時30分/無休/TE:なし

しもきた茶苑大山
9時~19時(喫茶テイクアウトは14時~18時)/水曜休/TEL:03-3466-5588

立てば天国
16時~22時30分(土・日曜、祝日は14時〜。料理は〜22時)/無休/TEL:070-4731-1110

モデルコース 世田谷代田駅→徒歩3分→由縁別邸 代田→徒歩4分→BONUS TRACK→徒歩7分→シモキタエキウエ→徒歩12分→reload→徒歩9分→東北沢駅

(出典:「旅行読売」2022年5月号)

(WEB掲載:2022年5月9日)


Writer

高崎真規子 さん

昭和の東京生まれ。80年代後半からフリーライターに。2015年「旅行読売」の編集部に参加。ひとり旅が好きで、旅先では必ずその街の繁華街をそぞろ歩き、風通しのいい店を物色。地の肴で地の酒を飲むのが至福のとき。本誌連載では、大宅賞作家橋本克彦が歌の舞台を訪ねる「あの歌この街」、100万部を超える人気シリーズ『本所おけら長屋』の著者が東京の街を歩く「畠山健二の東京回顧録」を担当。著書に『少女たちはなぜHを急ぐのか』『少女たちの性はなぜ空虚になったか』など。

Related stories

関連記事

Related tours

この記事を見た人はこんなツアーを見ています