たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

【今宵は文化財の宿】松之山温泉 凌雲閣(新潟県十日町市)

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 新潟県
> 十日町市
【今宵は文化財の宿】松之山温泉 凌雲閣(新潟県十日町市)

玄関と屋根の破風(はふ)が目を引く、堂々としたたたずまい

 

宮大工たちが腕を競った内装も見事

十日町市の南西、天水山(あまみずやま)の山麓に湧く松之山温泉は、日本三大薬湯の一つに数えられる。中世、越後守護の上杉家の隠し湯だったとうかがえる記録が残る。江戸時代の温泉番付では、小結に位置付けられた

1938年築の凌雲閣の本館は木造3階建てで、国の登録有形文化財。昭和初期のレトロな雰囲気に包まれている。本館建築の際、初代館主が宮大工たちを呼び集め、1人1室を担当させて客室ごとに技と意匠を競い合わせたという。

上棟式の写真。宮大工たちは群馬県の渋川から呼び集められた
客室の床の間、天井、欄間には、それぞれ異なる木材が使用されている
碁盤や将棋盤をはめ込んだ天井、傘の骨のような天井など、宮大工のアイデアや遊び心が感じられる

そのため、傘を広げたかのような天井や、かわいらしい飾り窓など、部屋ごとに趣向が異なり、宮大工それぞれの創意工夫が楽しめる。宿のスタッフは、当時の面影を極力残すよう、日頃から保存に気を使っているそうだ。

館内の匠の技を眺めながら浴室へ。男女別の浴室は時間で入れ替え制。自由に入浴できる貸し切りの内湯が1か所ある。源泉かけ流しの湯は薄緑色。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉で塩分濃度が高く、体がよく温まる。殺菌効果があるというメタホウ酸や保湿に優れるとされるメタケイ酸などの成分も多い。切り傷、皮膚病、婦人病などに適応するという。

珍しい薄緑色の湯は温泉成分が濃く、「薬湯」として親しまれている
器にもこだわりを見せる夕食。料理長が手間暇かけて作り上げた山の幸を使った料理が登場

山菜採りの‟名人”として、何度もテレビ出演している料理長の、多彩な山菜料理も楽しみだ。山の恵みの「自信作」がずらりと並ぶ。ひとり泊については繁忙期を除く平日に受け付けている。

「6月の松之山は芽吹きの新緑からどんどんと緑が濃くなっていき、里山の自然を五感で感じるには一番おすすめの季節です」と社長の島田怜さん。この時期、アカショウビンやブッポウソウなどの渡り鳥のきれいな鳴き声を聞けることもある。

11月13日まで、十日町市と津南町の里山を舞台にする国際的な現代アートの祭典「大地の芸術祭」が開催される。凌雲閣の名建築とあわせ、こちらもぜひ鑑賞したい。

文/荒井浩幸


松之山温泉 凌雲閣

住所:新潟県十日町市松之山天水越81
交通:北越急行ほくほく線まつだい駅から送迎20分(1日1便、要予約)/関越道塩沢石打ICから35㌔
TEL:025-596-2100

料金(税・サ込み/2人1室利用):1泊2食付き1万4450円~
※掲載時の料金。公式ホームページで要確認

(出典:「旅行読売」2022年6月号)

(WEB掲載:2022年6月3日)


Writer

荒井浩幸 さん

1970年、埼玉県生まれ。旅に関することならジャンルを問わず、オールマイティにこなす、旅行ライター。食欲旺盛で、その「実力?」は特に味の店の連続取材の時にいかんなく発揮される! そして、昼はコーヒーを味わい、夜はお酒をたしなむ。旅とともに国内の民俗に関心をもち、研究もしている。

Related stories

関連記事

Related tours

この記事を見た人はこんなツアーを見ています