文化財の宿マップを作ってみた
ヨーロッパのホテルのような重厚感のある絵画的なたたずまいのホテルニューグランドは1927(昭和2)年開業。「日本クラシックホテルの会」に加盟している(すべての写真/長沼茂希)
Twitterで話題になったGoogleマップ
2020年秋、Googleマップで作成した「登録有形文化財の宿マップ」が一部のインターネットメディアやSNSで話題になった。作成者である長沼茂希さんに事の顛末を聞いた。
文化財の宿に興味を持ったのは、横浜のホテルニューグランドがきっかけでした。コロナ禍で遠出が憚られる時期、GoTo事業で安く泊まれるプランがあり、家から近い横浜ならと出かけました。それまでの旅行は海外が多く、近場に泊まるという発想自体なかったので、その点で、コロナ禍で言われ始めたマイクロツーリズムの実践でした。
泊まるまでホテルニューグランドが登録有形文化財だと知りませんでした。文化財イコール見学施設くらいの認識しかなく、文化財に泊まれるということ自体初めて知ったのです。クラシカルで落ち着いた雰囲気は居心地のいいものでした。雨が降っていたので、近くの中華街で食事をとった後はホテルで過ごしました。カフェでこのホテル発祥とメニューにあったプリン・ア・ラ・モードを食べ、館内で写真を撮ったり、部屋で休んだり。資料コーナーで、マッカーサーやチャップリンが泊まった歴史のあるホテルだと知りました。
文化財の宿に泊まれる、という気付き
宿が旅の目的になる、という発想が生まれました。ほかにも文化財の宿があるという「気付き」と「驚き」でした。キュレーション的にGoogle マップに落としてTwitter で公開したら、「いいね!」が2万7000付き、地図のページビューも累計120万と予想外にバズったのです。若年層にレトロブームがあり、SNSを使う人たちも関心を持ってくれたようです。
公開時111軒だった宿の数も159軒まで増えました。見た人から「ここもそう」という書き込みがあったり、宿の方から「うちも文化財です」と連絡をいただいたりして増えました。中には閉館してしまったところもあります。
今は文化財から派生して、同じレトロな空間で、同様に減っている純喫茶の地図も作っています。コロナ禍で地方の宿や店は厳しい状況が続きます。地図を見た方が近くの店や宿を訪ねてくれるとうれしいです。
聞き手/福﨑圭介
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(出典:「旅行読売」2022年6月号)
(WEB掲載:2022年6月8日)