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文化財とは何か――歴史的建造物を守るために

場所
> 千代田区ほか
文化財とは何か――歴史的建造物を守るために

国の重要文化財に指定されている東京駅丸の内駅舎

 

文化財の宿に泊まって歴史を感じよう

明治初期、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)によって多くの文化遺産が失われた。これを契機に、国の宝を守る仕組みは古社寺保存法、国宝保存法、そして年に施行された文化財保護法へと制度が更新されてきた。

本稿では有形文化財のうち、建造物(建築物)についてのみ見ていく。

建造物は「指定文化財」と「登録有形文化財」に分けられる。指定文化財は「重要文化財」とその中でも最も重要な「国宝」があり、国により保護される。国の重要文化財の中で宿泊できる建築物は文化財である東京駅丸の内駅舎内の東京ステーションホテルや、箱根の福住旅館(萬翠楼 福住)など数少ない。

一方、国の指定制度だけでは急激に減少する歴史的建造物の保護は不十分であり、より緩やかな規制の下で幅広く保護することを目的に、1996年の文化財保護法改正で制度化されたのが登録有形文化財だ。税制面での負担軽減や公開活用する際に事業費の一部補助などの優遇措置はあるが、国が保護してくれるわけではない。2022年4月1日現在、登録有形文化財(建造物)は1万3335件ある。クラシックホテルと呼ばれる古いホテルにも登録有形文化財は多い。戦後は1987年まで禁止されていた木造3階建ての建築物も貴重で、宮城・鎌先温泉の湯主一條や新潟・松之山温泉の凌雲閣などが登録有形文化財に登録されている。

文化財を含む城下町や宿場町、門前町など、まとまりを持つ地域の保存活用を図る伝統的建造物群保存地区の制度もある。1975年の文化財保護法の改正により発足し、現在では43道府県126地区が選定されている。

近年ではまちづくりや景観保護の観点から法整備が進み、景観重要建造物や歴史的風致(ふうち)形成建造物として建造物を保全する仕組みもできている。

保護から活用へ—―2019年に施行された改正文化財保護法は、市町村レベルでの民間団体との連携による文化財の保存・活用の推進を目的としている。観光立国化の取り組みの一環でもあったが、コロナ禍で戦略の練り直しが図られるかもしれない。とはいえ、活用しながら保存していくという流れは続いていくだろう。

東京ステーションホテル
東京駅丸の内駅舎内にある東京ステーションホテル
東京ステーションホテル
東京ステーションホテルの客室案内板
東京駅
東京駅丸の内駅舎のドーム。ステーションホテルの客室からも見える

文化財関連の用語解説

●登録有形文化財(建造物)

国の登録制度で、原則として建設後50年を経過した建造物のうち、次の要件のいずれかに該当するもの。

(1)国土の歴史的景観に寄与しているもの
(2)造形の規範となっているもの
(3)再現することが容易でないもの

所在地の地方公共団体を通じて国(文化庁)に登録申請し、文化審議会の文化財分科会での審議を経て、文部科学大臣に文化財に登録するよう答申が行われる。申告制なので、登録されていない歴史的建築物も多い。

答申は年3回行われ、直近の今年3月の新規登録は90件(建築物72、土木構造物0、その他の工作物18)。この後、官報で告示され、正式に登録となる。

国の重要文化財や自治体の文化財に指定された場合(例外あり)と、焼失や解体などで現状変更された場合は、登録抹消となる。

●クラシックホテル

創業年数に規定はないが、おおむね戦前に建てられ、現在も営業を続けているホテル形式の宿泊施設を指す場合が多い。

戦前の建築で、その建物を維持(改修、復原を含む)、文化財や産業遺産などの認定を受けているなどの条件を満たした、日光金谷(かなや)ホテル、富士屋ホテル(箱根)、万平(まんぺい)ホテル(軽井沢)、奈良ホテル、東京ステーションホテル、ホテルニューグランド(横浜)、蒲郡(がまごおり)クラシックホテル(愛知)、雲仙(うんぜん)観光ホテル(長崎)、川奈ホテル(伊豆)の9軒が「日本クラシックホテルの会」を結成している。

●景観重要建造物

2004年公布の景観法は、景観を整備・保全するための基本理念を明確にし、景観形成のための支援のほか、一定の強制力を地方公共団体に与えた。景観重要建造物は、景観行政団体(都道府県や政令市、中核市など)が計画する景観地区の中で、地域の自然、歴史、文化から見て景観上重要と判断し、指定した建築物。規制対象となり、増改築や模様替えは許可が必要。

●歴史的風致形成建造物

2008年施行の「歴史まちづくり法」をもとに、歴史的風致の維持向上を図ろうとする市町村が、歴史的風致維持向上計画を策定する。これに記載された方針に則して、一定の要件を備えた建造物を、市町村の首長が指定する。増改築や移転などは届け出が必要で、市町村長は設計変更等を勧告できる。


文/田辺英彦

妻籠宿
1976年に最初の重要伝統的建造物群保存地区の一つに選定された長野県南木曽(なぎそ)町の妻籠(つまご)宿。旧中山道の宿場町の町並みが残る

(出典:「旅行読売」2022年6月号)

(WEB掲載:2022年6月27日)


Writer

田辺英彦 さん

東京都大田区出身、埼玉県在住。旅行ガイドブック編集・執筆、出版業界誌執筆などを経てフリーランスに。東北・八幡平の温泉群と、低山ハイク、壊れかけたもの・廃れたものが好き。

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