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【日本茶の時間】静岡の「天空の茶産地」で手摘み製茶見学(2)

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 静岡県
> 川根本町
【日本茶の時間】静岡の「天空の茶産地」で手摘み製茶見学(2)

製造途中、揉捻機で揉(も)んで捻(ねじ)った、みずみずしい茶葉

 

荒茶製造見学と茶農家直伝のおいしいお茶

【日本茶の時間】静岡の「天空の茶産地」で手摘み製茶見学(1)から続く

午前に摘んだ生葉は、午後すぐに工場に運ばれ荒茶加工が行われた。茶の製造工程は「荒茶」までとブレンドして製品化する「仕上げ」までの二つに分けられ、大半の茶農家は栽培から荒茶までを担当。SATOMI 製茶では、極上茶葉は仕上げまで行う。

 工場には生葉が放つ爽やかな香りが漂っている。鮮度を生かすため、時間との闘いが始まる。機械工程は蒸熱(じょうねつ)機から。緑茶を特徴づける蒸熱は、生葉を蒸して酸化酵素を失活させ、茶葉の色を緑色に保たせて青臭さを取り除く工程だ。茶種により蒸し時間が異なり、山間の浅蒸し煎茶は30秒。平地で育つ深蒸し煎茶はこの3倍。時間が短いほど成分が壊れにくい。全8工程(下記参照)で約6時間かかり、茶農家の経験値が品質を左右する繊細な作業だ。

【荒茶製造工程】
1 蒸熱(じょうねつ) 生葉を蒸し酸化酵素を失活させ、葉を緑色に保ち、青臭さを取る。
2 葉打ち 乾燥した熱風で表面の露を除き、葉の色つや、香味を向上させる。
3 粗揉(そじゅう) 乾燥した熱風で撹拌(かくはん)しながら揉み、水分を均一に飛ばす。
4 揉捻(じゅうねん) 唯一熱を加えず揉む工程で、茎と葉の水分均一化を図る。
5 中揉み(なかもみ) 揉み乾かして茶葉をほぐし、撚(よ)れた形を与え、形を整える。
6 中揉(ちゅうじゅう) 内外両方の回転軸で葉を揉み乾かし、葉を撚り、細くする。
7 精揉(せいじゅう) 乾燥させつつ一方向に揉むことで葉が細長く撚れ、針状に。
8 乾燥 水分が生葉の5%ほどで荒茶に。取引後の仕上げで製品になる。

初摘みの荒茶は翌日、JA大井川川根茶業センターで初取り引きが行われ、川根新茶のシーズンが始まった。取り引きされた荒茶は合組(ごうぐみ)というブレンドが行われ、仕上げ茶となり市場に流通する。

摘採後、5㌔ずつ量り荒茶製造の準備に
香りや質感を何度も確かめながら製茶工程を進める

茶農家に聞く!おいしいお茶の淹れ方

高木さんの自家栽培茶を、2020年に誕生した絶景茶房・兆(きざし)で味わった。やぶきた品種の浅蒸し煎茶は、透明感のある黄金色。香りが高く、すっきりした喉越し。それでいて旨みたっぷりの余韻が口に残る。茶畑を渡る川風に吹かれ最高の時。茶のテアニンにはリラックス作用もあるという。五感がフル回転で喜んでいる!

 高木さんは「土地と生産者のこだわりで生まれる茶、シングルオリジンを味わってほしいと茶房を仲間と立ち上げた」と語り、3年前には県内の浅蒸し茶生産者と『山のお茶連合会』を結成した。「地域を盛り上げたい」と移住支援や後継者育成にも情熱を燃やす。

文/のかたあきこ(日本茶インストラクター) 写真/依田佳子

左が浅蒸し煎茶で澄んだ黄金色。右が深蒸し煎茶で濃い緑。深蒸しは茶葉が粉砕され、色も成分も出やすく高温の湯でさっと淹れる

【茶農家に聞く おいしいお茶の淹れ方】
茶をよりおいしく味わうために茶種に合ったベストな淹れ方を学びたい。
茶葉の量、湯温、湯量、浸出時間など、浅蒸し煎茶のコツを教わった。

1 まずは茶葉の量。1人ティースプーン1杯程度の3グラム。上の写真(左)は高木さんの浅蒸し煎茶。葉の形状が細長く整っていて上質の証し。

2 湯量は一人約80ml。湯冷ましや温度計を使用し湯温約60度に。急須に注ぎ蓋をして1分半(1煎目)、高級煎茶ほど旨みが増す。

3 茶の濃さと量を均一にするため、まわし注ぎを。茶碗1→2と注ぎ、2→1と戻るのを繰り返す。最後の一滴に成分が凝縮。注ぎきる。

オープンテラスの茶房・兆

SATOMI製茶

住所:静岡県川根本町下長尾58 -1

交通:大井川鐵道下泉駅から徒歩20分/新東名高速島田金谷ICから国道473号経由28㌔

TEL:0547-56-0672(工場見学は1週間前に要予約)

(出典「旅行読売」2022年7月号)

(ウェブ掲載2022年7月5日)


Writer

のかたあきこ さん

旅ジャーナリスト。 町、人、温泉、宿をテーマに28年間、全国を取材。テレビ東京『ソロモン流』で旅賢人と紹介される。宿本・旅美人SPECIAL編集長、温泉ソムリエアンバサダー、サウナ・スパプロフェッショナル、睡眠健康指導士、傾聴スペシャリスト、日本茶検定1級。福岡県出身。

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