茶どころ宇治の歴史と神秘に触れる
宇治神社境内奥の伊勢神宮遥拝所は、パワースポットとしても知られる
全国でも指折りの茶どころ、宇治市。八十八夜を迎える5月以降、茶摘みが最盛期となり、若葉色に染まる茶畑が初夏の訪れを告げる。
その宇治市でもっとも有名なのが世界遺産の平等院だ。平安時代後期の関白、藤原頼通(よりみち)が開創。国宝の鳳凰堂は宮殿のような優美なたたずまいで、池の水面に映る姿が神秘的で美しい。中堂には、仏師・定朝(じょうちょう)作の寄木造りによる阿弥陀如来坐像(国宝)が安置されている。境内の「茶房 藤花」では、平等院帰属の日本茶インストラクターがブレンドした宇治茶を提供する。それぞれの葉に適した抽出方法で、宇治茶本来の旨みが堪能できる。
宇治川をはさんで平等院の対岸に鎮座するのが宇治神社だ。第15代応神天皇の皇子、菟道稚郎子命(うじのわきいらつこのみこと)が祭神。同社ではウサギが神の使いとされ、本殿を3周するうちに三つのウサギの置物を見つけられると、願いごとが叶うという「うさぎさん巡り」が密かなブームになっている。
宇治神社の隣りにあるのが宇治上神社。宇治神社と対になる神社で、拝殿(国宝)の屋根は縋破風(すがるはふ)と呼ばれ、平安時代の寝殿造りを思わせる優美な曲線が特徴的だ。拝殿の後ろには、神社建築では日本最古といわれる本殿が建つ。菟道稚郎子命と父の応神天皇、兄の仁徳天皇を祭神とする。本殿横には大きな岩の天降石や、宇治七名水で唯一現存する「桐原水」が湧く。
毎年10月の第1日曜開催の宇治茶まつりの伝統行事「茶壺口切の儀」の舞台となるのが興聖(こうしょう)寺だ。参道の琴坂は新緑の名所として知られる。